第2話 高いときに売れるのか----売り時の難しさ
株を買ったら、いつかは売る。
利益が出たら売る。もっと上がりそうなら持ち続ける。
言葉にすれば簡単だが、実際には難しい。
株価が上がれば、もっと上がるかもしれないと思う。売ったあとに株価がさらに上がれば、もう少し持っていればよかったと後悔する。
反対に、持ち続けた結果、株価が下がることもある。
あのとき売っておけばよかった。
結局、あとからなら何とでも言える。
では、株価が一番高いところで売ることはできるのだろうか。
プロならできるのか。
もちろん、売買のタイミングを見極めて利益を上げる人はいる。それでも、毎回うまくいくとは限らない。
まして、僕にはそんな芸当はできない。
株価の天井を見極め、絶妙なタイミングで売る。
そんなことを目指していたら、いつまでたっても売り時に悩むことになる。
そもそも、株価は上がれば下がることもあるし、下がれば上がることもある。
もちろん、必ず元の株価に戻るわけではない。企業の業績や経済環境によって、そのまま下がり続けることだってある。
それでも、日々の値動きを見ていると、上がった、下がったと気持ちが揺れる。
だったら、あまり触らないほうがいいのかもしれない。
そう考えた。
高値で売ることを目指すのではなく、長く放置できる銘柄を選ぶ。
僕は、そういう方向に考えを切り替えた。
もちろん、何でもいいわけではない。
配当があること。長く保有できること。企業の事業や将来性にも目を向けること。
買ったあとに株価が下がっても、すぐに慌てて売らなくて済む。そんな銘柄を考え抜いて選ぶ。
そもそも、僕にとって株式投資は、特別な勝負ではなかった。
銀行の普通預金にお金を置いていても、金利はほとんどつかない。
それなら、そのお金を証券口座に移して、配当をもらえばいい。
そんな感覚だった。
目的は、一攫千金ではない。
将来、年金に上乗せする収入をつくることだ。
株価が何倍になったかより、配当が入ってくることのほうが大事だった。
だから、買う銘柄は考え抜く。
そして、買ったあとは、日々の株価に振り回されずに保有する。
もちろん、何も考えずに放置するわけではない。企業の業績が悪化したり、配当が減ったり、投資した理由が崩れたりすれば、見直す必要はある。
そんな投資を続けているうちに、あとから気づいたこともあった。
保有している銘柄の中には、日経平均が下がる局面で上がるものもあった。
最初から、日経平均の下落に備えて銘柄を組み合わせたわけではない。
放置できる銘柄を考え抜いて選んだ結果、値動きを補い合うような形になっていたのだ。
もちろん、いつも逆の動きをするわけではない。それでも、結果としてヘッジのような働きをする場面があった。
最初から狙っていたわけではないだけに、これは意外な発見だった。
株価の天井を当てることは、僕にはできない。
だったら、僕にできる方法を考えればいい。
安く買う。長く持つ。配当を受け取る。
そして、企業の状況が変わっていないかは、たまに確認する。
高値で売ることができなくても、投資はできる。
もちろん、株式投資には元本割れのリスクがある。預金と同じではない。
それでも、僕は僕に合った方法を選んだ。
高値で売る技術がないなら、売り時に悩まなくて済む投資を考えればいい。
株価の上下を当てようとするのではなく、長く持てる銘柄を選ぶ。
それが、僕なりの「投資は放置」だった。




