2章11話「何してたんだ!」
その日、家についたのは夜の22時過ぎ。
ケンちゃんと会うのをやめてから、帰るのは毎回21時以降になってた。帰り道は普通なら星が見えるはずだけど、最近は天気が悪くてまったく見えない。最後に星を見たのはいつだったっけ。
玄関の向こうには、星の代わりにチカチカ光るパパ。
「今日も遅くなってごめんなさい」
「宇美、いくらなんでも遅すぎる! 何してたんだ!」
ケンちゃんともう会ってないって知られたら、パパもママも大騒ぎするだろうなぁ。ケンちゃんのママにまで余計なこと言われたら、どうしよう。家族ぐるみで話し合いとかさせられるかも。
なっちゃんと進展できるように、ケンちゃんとは会わないって決めました。なんて誰にも言えないよ。
「……いつも通り、ケンちゃんと会ってただけ」
「この前まではもっと早く帰ってきてたのに?」
「バスケ部が忙しいの!」
「宇美、茶道部に入ったって言ってなかった?」
「入部したのはそうだけど」
「なんでバスケ部の話になるんだ」
「体験入部でバスケ部いったら、気に入られて」
部活の話は本当だった。茶道部は忙しくないんだけど、バスケ部の助っ人が意外と忙しい。なんだかんだ、週に1、2回くらいは参加してた。
嘘をつく時は真実を混ぜるといいんだって。涼介くんのお兄さんの教えが役に立つ。
「防波堤に着くのが遅いから、帰りも遅くなったの」
「……そうか」
パパはまだ怒った顔のまま、ちょっとは安心したような様子で背中を向けた。
「憲一くんの勉強の邪魔にならないようにな」
ママが私をリビングに誘導しながら言う。
「パパ、拗ねてるしょ。宇美がお手伝いしてくれないから」
ちょっと帰りが遅い時はいつもママが怒ってたのに、なんで最近パパが怒ってるんだろうって思ってた。けど、そういう理由だったんだね。
「ごめんね、パパ」
私はパパの背中に謝る。
しばらくは、お手伝いする気になれないや。




