2章10話「どっちがいい?」
それから毎日、涼介くんと遅くまで一緒に過ごした。
「宇美、これなら取れるべ!」
「そうかなぁ。さっきと同じくらい難しそうだよ」
「言ったな。見てろよ、ぜっったい取っちゃる」
今日は涼介くんと、隣町にあるゲームセンターに来てる。私は家族としかこういうところに来たことがないから、どうやって楽しめば良いかわからなかった。
「ここで止めて……よし、行けっ!」
一方、涼介くんはご機嫌だ。通っていた中学校がこの近くなのもあって、こういうところで遊び慣れてるらしい。
「ほら、宇美! 取れた!」
「ほんとだ……すごいね、涼介くん」
「昔、兄ちゃんにコツを教えてもらったんだ」
クレーンゲームで勝ち取った景品を取り出しながら、涼介くんが嬉しそうに言う。本当にお兄さんが大好きだなぁ。
「俺、何か飲むもん買ってくるよ。宇美は待ってて」
取ったばかりのぬいぐるみを私に押し付けて、涼介くんは奥の方へ姿を消した。ぬいぐるみはゾンビみたいなミイラみたいな姿をしていて、一般層にはウケなさそうな見た目だった。
「……ふふっ、変な顔」
少しも私の好みと合ってないキャラクターに、思わず笑っちゃう。私、こんなところでこんな子と何してるんだろう。
「ねぇ、ちょっと」
「ねぇ。ねぇってば!」
突然、後ろから肩をトントンと叩かれた。誰かを呼んでいる声には気づいてたけど、まさか私だったなんて。
振り返ると、私と同じくらいの歳の女の子が二人。よく見たら、同じ高校の生徒だった。
「えっと、隣のクラスの……」
「そう、渡辺と森口。あなたは波多野さんだったっけ」
渡辺さんと森口さん、思い出した。この前、クラス合同の体育の授業にいた気がする。
「波多野さん、涼介と付き合ってるってマジ?」
「あ……それは、その」
私は言葉を詰まらせた。はいそうです、とはなんとなく答えにくい。かと言ってここで誤魔化すのも、涼介くんに悪い気がした。
「あいつはやめた方がいいよ」
「え?」
返答に困る私をよそに、彼女たちは話し出す。
「小学校の時は、みったくない奴でさぁ」
「中学デビューして、モテるようになったけど」
「どの彼女とも揉めててさ、わやだったよ」
「じゃ、うちらからはそれだけ。したっけねー」
二人は手をひらひらと振って、出口の方へ消えていく。それより少しだけ遅れて、涼介くんが戻ってきた。
「宇美!」
涼介くんはお茶とオレンジジュースを見せながら私に微笑みかける。さっきの会話は聞かれてなかったみたい。
「どっちがいい?」
「ありがとう、お茶にしようかな……」
ひとまず私は、何も知らないフリをしようと決めた。




