2章7話「改めて自己紹介すんね!」
翌日の昼休み、私は坂下くんを呼び出した。
なっちゃんには呆れられたけど、こうすればなっちゃんが前に進めると思ったから。私とケンちゃんが付き合うより、もっともっといい形で。
「お友達からで良ければ、よろしくお願いします」
「マジで!? やったー!!」
私の返事に、坂下くんは飛び上がって喜んだ。見た目の華やかな髪が揺れる。そういえば、坂下くんの顔って初めてちゃんと見たかもしれない。
「じゃあさっそく、下の名前で呼んで? 宇美」
「えっ、と……」
いきなりお願いされても。坂下くんとは他愛のない日常会話を何度かしてたくらいで、正直ほとんど印象に残ってないからなぁ。
「ごめん、名前なんだっけ……?」
「ん? 坂下涼介だよ。りょうすけ」
すごく失礼なことを聞いたけど、坂下涼介くんはまったく怒らずニコッと笑った。そういえば、クラスの女の子たちがカッコいいとかなんとか言っていたような……。
「坂下……涼介くん」
「そう! くん付けって初々しくて良いね!」
なんか、この人は元気だなぁ。
「私、涼介くんと何回かお話したことある?」
「いつもしゃべってるじゃん。席近いしさ」
そうだっけ? 休み時間はすぐなっちゃんの席に行くから全然わからなかった。
「どんな人か、まったく覚えてないや」
「……マジ?」
涼介くんのショックそうな声に、私は慌てて口を塞ぐ。今の、声に出てたんだ。傷つけちゃったかも。
「じゃあ、改めて自己紹介すんね!」
「えっ?」
「坂下涼介、射手座、好きな食べ物はえびカレー!」
「う、うん」
「小学校からバスケやってて、バスケ部に入るつもり」
底抜けに明るい涼介くんの自己紹介が続く。小学校でバスケしてたなら、会ったことあるはずなんだけど。
「家族は4人、大学生の兄ちゃんがいる。以上!」
涼介くんは得意げな顔でお話を終えた。私はとりあえず、拍手をしておく。
「改めて教えてくれて、ありがとう」
「なんもだよ。これから色々と覚えていって!」
悪い人ではないんだろうけど、明るすぎて作り物みたいに感じた。
「話はそれだけだから……教室に戻るね」
「あっ、そうだ。今日から一緒に帰るべ!」
早くここから逃げようとした私の腕を、涼介くんがぐっと掴んで引き留める。
「帰りはなっちゃんと帰ってて……」
「彼氏ができたら、女友達は遠慮するもんだって」
「そ、そうなの?」
「河口に話つけといてよ。したっけ、またあとで!」
ウキウキとした足取りで去っていく涼介くん。私はとてもそんな気分にはなれない。これから大丈夫かな。
ため息をつきながら教室に戻ると、なっちゃんが見たことないような冷たい目で私を見てた。




