2章5話「いや、全然」
次の日、私はケンちゃんに聞いてみることにした。
「うみちゃん、高校は楽しい?」
「うん! なっちゃんと同じクラスだし、楽しいよ」
「昔から仲良いもんね。良かったね」
ケンちゃんは今までと同じく、優しい相槌をくれる。
「あのね、お昼に瑠璃ちゃんって子とお話したの」
「そうなんだ。どんな話をしたの?」
「部活の話。中学と同じ吹奏楽部に入るんだって」
「へえー、楽器ができるって良いなぁ」
「それから、5時間目は数学の授業だったんだけど」
「お昼のあとに数学はつらいね」
「そう、ちょうど眠くってさ。うとうとしちゃって」
「うんうん」
「そしたら急に当てられてね、答えられなかった」
「それは災難だったね」
ケンちゃんが楽しそうに笑った。また、瞳の中に私の知らない世界が映ってるみたい。良いなぁ、私も見たいな。
「あと、今日はなっちゃんとテニス部を見学したの」
「テニス部か、どうだった?」
「なっちゃんが先輩に勝ったんだよ!」
「あいつと戦った先輩が可哀想だ」
やれやれって感じのケンちゃん。なっちゃんの運動神経の良さは、ケンちゃんもよくわかってる。
話してたら、あっという間に帰る時間になった。ケンちゃんがそろそろ帰ろうかって言って、防波堤を降りる。最後に、聞かなきゃ。なっちゃんのためにも。
「ケンちゃん、クラスに気になる女の子とか、いる?」
私の質問に、ケンちゃんはメガネを押さえて答えた。
「いや、全然。なんで?」
ほんとだ。なっちゃんの言う通りだったね。
「ううん! したっけ、また明日ね!」
頭にはてなを浮かべるケンちゃんに手を降って、私はサッと自転車に跨る。この前からこっそりケンちゃんの背中を見てるけど、今日は星が映ってる気がした。




