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海の音が聞こえる  作者: 渡白 斐陽
星も積もれば宙になる
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20/28

2章4話「いるように見える?」



 高校生活にも慣れ始めた、4月の2週目。


 今日は、なっちゃんと一緒にテニス部を見学する約束の日だ。


「あの子、なんま上手いなぁ」


「経験者だべ、たぶん」


 昔から運動神経の良いなっちゃんは、先輩から誘われた練習試合でさっそく実力を発揮する。周りの女の子たちが、なっちゃんに憧れの眼差しを向けてた。


「あいつ見てみろよ。すげえなぁ」


「しかもけっこう可愛くね?」


 奥にいる男子たちからも噂されてるのが聞こえる。なっちゃんは昔からモテるんだ。優しくて面倒見が良いし、可愛いし、スタイルも良いから。


「宇美、勝ったよ!」


 相手の先輩をボロボロに負かしたなっちゃんが、私に駆け寄って来た。


「さすがだね、なっちゃんは」


「体力なら自信あるかんね!」


 なっちゃんのふわふわの髪が、汗に濡れて胸のところにまっすぐ落ちていた。いつの間にか、こんなに伸びたんだ。


「髪、こんなに伸びてる」


 驚いている私を見て、なっちゃんが自分の髪の毛に目をやる。それから納得したように笑って、毛先を持ち上げた。


「普段は巻かさっててわからないしょ。天パだから」


「どっちも似合うよ。ふわふわも、まっすぐも」


「ありがと。したら、そろそろ帰ろっか」


 なっちゃんはタオルで頭を拭きながら歩き出す。運動着の裾から健康的なお腹がチラリと見えて、男子のほっぺが赤くなってるのがわかった。


「俺、話しかけてみようかな……」


「バカ、彼氏いるに決まってるべや」


 本当に、昔からモテるけど、誰とも付き合わない。なっちゃんが幸せになるには、どうしたらいいんだろう。


「宇美、置いてくよー!」


 ぼーっと考えてると、船の汽笛みたいによく響く声がする。私は慌ててなっちゃんを追いかけた。


「なっちゃんは、高校で気になる人とかいないの?」


 帰り道、なっちゃんと自転車に乗りながら尋ねてみる。赤い自転車はスピードを落として私に近づいた。


「いるように見える?」


 ニッと持ち上げられた口角に心臓が大きく脈打つ。


「でも、できたら良いな。高校で」


「そう……だね」


「吉野には、高校でそういう人ができないと良いね」


「ケンちゃんに?」


「おや、あっちの高校の女には負けないと思ってる?」


「そういうわけじゃ、」


「吉野に聞いてみたら良いしょや」


 きっと言うよ、いや全然って。あいつは宇美しか見えてないんだからさ。なんて言って、なっちゃんが笑った。


 ああ、そっか。私たちが付き合うことで、なっちゃんは諦めたいんだ。


 今度ケンちゃんに聞いてみるねって言って、私も一生懸命ペダルを漕いだ。前に進んでみたくて。




章の設定というものを見つけました!

これまでは第二章一話のエピソードタイトルに章タイトルをつけていたのですが、章の設定に伴いエピソードタイトルの番号を振り直してあります。

混乱を招いてしまったら申し訳ございません⋯⋯!


いつもお付き合いくださり心より感謝申し上げます。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます! 河口さんとテニス…楽しそうですねぇ!! 休日に一緒にスポーツして過ごしたい人生でした…
なっちゃんへの勘はええんよな!!!!!!! 自身のことへの勘わい.......... 自分のことは意外とわからんよな... 続きが楽しみですなあ
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