2章1話「海があるからだよ」
ここから第2章です。
物語は『宇美』の視点で進んでいきます。
推してくださっている方が一番多い『河口』との絡みも多いので、お楽しみください!
星が綺麗に見える町。私の住んでいるところ。
東京育ちの男の子、ケンちゃんが近所に越してくるまで、そんな風に思ったことなかった。星が見えるのは当たり前のことだし、特に意識してなかったから。
でも、東京は夜でも明るくて星が見えないんだって。信じられないけど、ケンちゃんが言うならそうなんだろうな。
「この砂浜で星が見れたら、もっと綺麗だよ」
「もっと、綺麗?」
学校帰りに毎日ここでおしゃべりしているけど、ケンちゃんは私にとっての当たり前をワクワクに変えてくれる天才だった。
「おうちから見るのと違うの?」
「他の場所よりもたくさん、星が見れるはずだから」
「なして?」
私が理由を尋ねると、ケンちゃんはメガネの奥で嬉しそうに笑う。
「水面に星が映るから、空と合わせて2倍でしょう」
私は夜の海も見たことがあるけど、星は空にしかなかった。映らないよって教えてあげたいけど、ケンちゃんの楽しみを奪っちゃったら可哀想かなぁ。
「大きくなったら、一緒に確かめてみる?」
私のお誘いに、ケンちゃんが嬉しそうに頷く。
「大人になったら、帰りが遅くても怒られないもんね」
私たちは顔を合わせてふふっと笑い合った。
ケンちゃんは、この町の当たり前がすべて楽しそうだった。きっと特別な目を持ってるんだ。私もケンちゃんの目で景色を見れたら、すごく綺麗なんだろうな。
「ケンちゃんは、この町が好き?」
「うん。……最初は、つまんないと思ったけど」
ケンちゃんの答えは意外だった。引っ越してきたこの町をとても気に入っているんだと思っていたから。
「じゃあ、なして好きになったの?」
「うーんと……その……」
視線をあちこちに動かすケンちゃん。やっと止まったかと思えば、真っ赤な耳を私に向けて答えた。
「う、海があるからだよ」
へー、ケンちゃんって海が好きなんだね! なんてこの時の私はのんきに言った気がする。ううん、この時だけじゃなくて、高校1年生の夏までずっと。




