1章14話『約束、守れてないのに?』
お祭りの前日の夜。僕は河口にメッセージを送る。
『ごめん』
その一言で、河口はすべてを察したようだった。
『ポンコツめ』
相変わらず返信が早い。そして辛辣だ。でも結果を出せなかったのは僕なので、謝ることしかできない。
『本当にごめん。でもお祭りは行ってくれ』
『約束、守れてないのに?』
『うみちゃんはお前と行くの楽しみにしてる』
『うちだって楽しみだったよ。あんたのせい』
『色々と努力はした。でも、恋愛対象になれない』
少し間隔を空けて、河口から返事が来た。
『うちと同じだね』
『難しいんだなぁ、恋愛って』
『そうだよ。告白したって伝わらないしさ』
河口の返信に、僕は一人で頷く。
告白しても実演だと勘違いされたり、別の物が好きだと勘違いされたり、本当に大変だよな。
『ところで、告白の再チャレンジはどうだった?』
『再チャレンジって?』
『1回目に失敗したなら、普通やり直すべさ』
僕はこの1週間の言動を思い返す。うみちゃんに好きになってもらおうと、たくさんアピールしたつもりだ。だけど、よく考えてみれば……。
『告白やり直すの、忘れてた』
メッセージを送ると、すかさず河口から電話が掛かってきた。多少の覚悟と共に、電話のマークを押す。
「こんの、バカタレがぁ!!」
スマホがビリビリと振動するほどの怒鳴り声。僕はただひたすら反省の意を示すことしかできなかった。
「すみませんでした」
「宇美はあんたの気持ちを信じてないんだよ?」
「はい」
「したら、まず好きだってわかってもらわないと」
「その通り、です」
「マジでポンコツすぎて信じられないわ」
スマホの向こうで大きなため息が聞こえる。ここは挽回すべきところだ。一刻も早く。
「河口。お祭りのあと、うみちゃんに告白する」
「……ハァ。わかった、頑張んなよ」
「じゃあ、お祭りはうみちゃんと行ってくれる?」
「行く。うちも宇美と話したいし」
「本当にありがとう! そしてごめん!」
「もういいよ。したっけね」
喜ぶ僕に、無慈悲な機械音が浴びせられた。でも、用事が済んだらすぐに電話を切るのだって河口の優しさだ。
こんなに僕のことを想ってくれる女の子に応えられないなんて、申し訳なさで胸が潰れそうになる。
いや、それでも。それでも僕はうみちゃんのことが好きなんだ。うみちゃんと向き合うことが河口への誠意にもなると信じて、自分を奮い立たせた。
明日こそ、絶対にバシッと決めてやる!
ベッドの中で告白の言葉を考えながら、僕はぎゅっと目を閉じた。




