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海の音が聞こえる  作者: 渡白 斐陽
海の音が聞こえる
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12/28

1章12話『頑張れ。それから』




 お祭りまでは1週間。ぶっちゃけ時間が全然ない。


 夏休みといえど、うみちゃんはお店の手伝いで忙しいため土日は空いていなかった。平日も部活とか家のことがあって、いつも通り夕方からしか会えない。


 それでも、やるしかないんだ。


 僕はひとまず、河口にメッセージを送ることにした。うみちゃんとお祭りに行ってもらうためだ。河口が先に誰かと約束してしまっては、この作戦の意味がない。


 でも、なんて送ればいいんだろう。僕は一世一代の告白を実演と言ってしまった男だぞ。謝るのが先か?


 今までの河口とのやり取りを考えてみる。河口は僕が勘違いをした時も、無理に否定することはなかった。あえてそのままにしていたのだ。なら、きっと今まで通りに接してほしいはず。


『うみちゃんとお祭りに行ってくれ』


 僕はシンプルなメッセージを送った。これで良い。下手に気を遣わない方が良いだろう。


 河口からは、1分も経たずに返信が来た。そのまま僕たちは、間隔を空けずにやり取りを続ける。


『宇美から聞いてるべさ。喧嘩してるって』


『うん、仲直りの条件も聞いたよ』


『じゃあ、無理なのわかるっしょ』


『お前が諦めてどうするんだよ。応援してくれたろ』


『どうするつもり?』


『好きになってもらう』


 僕の自信満々なメッセージに対する、河口の返答は「爆笑」のスタンプだった。僕と同じで素直じゃない奴だ。本当は応援してくれてる癖に。


『吉野がそこまで言うなら、わかった。行くよ』


『ありがとう。うみちゃんにも伝えておく』


『どやって好きになってもらうの?』


『それはまだ考えてない』


 今度は「ため息」のスタンプが送られてきた。このゆるい絵柄に腹が立つ。


『宇美に聞けばいいべさ』


『なんて?』


『どうしたら好きになってくれますか? って』


 河口の回答を見た瞬間、ふざけているのかと思った。


 でも、よく考えれば最も重要なことかもしれない。うみちゃんがどんな男を好きになるのかわからないし、何をしたらときめいてもらえるのか知る必要がある。


『その通りだな。聞いてみる』


『頑張れ。それから』


 一度メッセージが途切れる。そのまま15分ほど、何も送られて来なかった。


 僕もお風呂に入ろうかな、と立ち上がった時、河口からやっと続きが届く。


『もう、うちに相談すんなよ』


 端的な一言。河口の表情は見えないけど、彼女なりに振り絞った言葉なのだとわかった。


 ここからは、僕が自分の力で頑張るところだ。勇気が出ないとか恥ずかしいとか、振られたらどうしようとか。そんなことを言っている暇はない。


 何も言えない自分から、変わる時が来たのだ。


『河口』


 僕は連続でメッセージを送る。


『こんな僕を好きになってくれてありがとう』


 河口からの返信は、来なかった。




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