↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
搾取され続ける人生は終わりにします さようなら、殿下  作者: 千堂みくま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/38

20 商売のやり方を変える

「ここは戦場じゃないんだから、軽傷向けの薬でよかったんだわ」


 今まで作ってきたのは重傷でも一気に治すような、強力な効果を持つ回復薬ばかりだった。

 でもここは平和な王都で、怪我といえば包丁で切った傷とか転んだせいでできた擦り傷くらいのものだろう。

 急いで店に戻り、薬草の割合や調合を変える実験を始めた。


「重傷用のは赤の回復薬、そして軽傷用は青の回復薬にしよう」


 二種類の薬を用意して、強力な方には赤いラベルを、そして効き目が緩やかな方には青いラベルを貼っておく。

 翌日にそれらを外に置いておいたら、とうとう夕方にお客さんがやってきた。


「あのー、回復薬がほしいんすけど」


 もう店を閉めようとしていたところで、後片付けの手を止めて慌ててカウンターに立つ。


「はい、どちらにしますか?」


 カウンターの向こうには、若い獣人たちが四人立っていた。

 猫耳の男性だったり、トカゲがそのまま二足歩行しているような男性がいたりして、獣人は様々な見た目の人がいるんだなぁと不思議に思う。

 四人は仕事帰りなのか、あちこち汚れた服を着ていた。


「青のラベルの薬がほしいんす。オレたち今、橋の工事してんだけど、生傷がひどくて」


「青ですね。サイズはどれにしますか?」


 缶は大中小と三種類用意してあったんだけど、それを見た四人は相談を始めた。


「おっきいのでいいんじゃね?」


「そだな、すぐ無くなるし」


「四人で使うから大にしよう。この大をください」


 どうやら四人でお金を出して大きいのを買うつもりらしい。

 私は代金を受け取りながら、今後も青の回復薬の方が売れそうだなと考えていた。


(青の大は、赤の小と同じ価格なのよね)


 それくらい効能と価格に差があるから、軽い怪我を頻繁に負う人は青の方を選ぶだろう。

 四人が帰っていくと、入れ違いのように二人のお客さんが来た。

 片方は見覚えのある女の子で、私は思わず笑顔で声を掛けた。


「いらっしゃい。今日はお母さんと一緒なんだね」


 ウサギの女の子は、お母さんを連れてきてくれたらしい。

 えへへと照れくさそうに笑う女の子の隣で、お母さんが私に「ありがとう」とお礼を口にした。


「あなたがお試しをくれたお陰で、迷わず商品を選べるわ。ハンドクリームをくださいな」


「香り付きのものもあるんです。よかったら匂いをかいでみてください」


 ウサギのお母さんは頷き、いくつか香りをかいでから、カモミールの香りのハンドクリームを買ってくれた。


「お試しってすごくいいわね。失敗せずに買えるところが嬉しいわ」


 親子はにこにこしながら帰っていった。


(薬は高価だから、勇気を出して買ったのに失敗したら悔しいわよね)


 そしてその店では二度と買わなくなるだろう。


「聖女が作る薬は効果バツグンだけど、それだけに高いしね……」


 私が神殿にいた頃は、私が作った回復薬を買うのは貴族ばかりだった。

 彼らの息子は騎士を目指す子もいたから、訓練で怪我を負うたびに高価な薬をためらいなく使っていたのだろう。


(でもここではやり方を変えないと駄目なんだわ。もっとお客さんが気軽に来れる店にしよう)


 次の日から、空いているスペースでカフェをオープンさせた。

 薬局だから薬草茶や薬草が入ったクッキー、生クリーム付きのシフォンケーキも置いて、サンドイッチなどの軽食も用意した。

 もちろん薬草茶の試飲も可能だ。

 薬を買うついでに休憩していくお客さんが増えて、少しずつ忙しくなっていった。


「うまくやっているようですね、エレナさん」


 薬局とカフェをオープンさせてから二週間後、そろそろ店じまいする頃にフードを深く被った背の高い人物が二人やってきた。

 聞き覚えのある声に顔を上げれば、フードを取った二人はクラウスさんとジル様だ。


「いらっしゃいませ。来てくださってありがとうございます」


「何か不都合はないか?」


 店に案内して椅子に座るように勧めると、ジル様は開口一番そう言った。

 私は小鳥のことを思い出してふふっと笑った。


「はい、何も困ったことはありません。陛下が小鳥に見守りを頼んでくださったお陰です」


 するとそれまできょろきょろと店内を見渡していたクラウスさんが、「へぇ!」と驚きの声を上げる。


「小鳥に見守りねぇ……。全然知りませんでしたよ。やけに窓辺にパンくずを置いているなとは思っていたのですがね。へぇ、そうですか」


「うるさいぞ、クラウス」


 二人のやり取りにまた笑ってから、私は祝福の力を使った。


「クラウスさんは、肩に不調があるようですね」


 指摘されたクラウスさんはぎくりとして、「なぜ」と呟いてからジル様に視線を向けた。


「俺は何も言ってないからな」


「じゃあなぜエレナさんが、私の肩こりがひどいことを知ってるんですか」


「説明が遅れてすみません。私は人の怪我や病気が見える祝福を持っているんです」


 そう言うとクラウスさんは尚さら驚いた様子で、「とんでもないですね」と言い出した。


「その祝福は、人の弱みを握っているようなものじゃありませんか」


「悪用しようなんて思ってませんけど」


「それはあなたが善人だからです。かなり危険な祝福ですよ、これは。怪我の部分を狙って攻撃されたら一たまりもないですね」


「落ち着け。薬師のエレナが攻撃なんかする訳がない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。