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奪還?

ギュッ、ギュ~


「って・・・言っているそばから何してんの?」


桜夜に組み敷かれたケイン改め盗賊の男は、何とか動かせる腕を器用に使い桜夜を抱きしめてくる。


「いや~おまえの身体女みたいに柔らかいな~と思って・・・そんな恰好してるし」


「いや男だし・・・はっ!もしかしてそっちの趣「バッ、バカ!違えよ!」味」

桜夜の言葉を男は慌てた様子で否定する。


「てかさっきのどうやったんだ?俺の姿は見えてなかったはずだし、おまえみたいな華奢な奴が俺を投げ飛ばすなんて」


「実は数日前から君に探知魔法をかけていたから、姿を消していても魔力で位置が分かったんだ。投げ飛ばすとき使ったのは僕の故郷の伝統的な武術でね“柔術”っていうんだ。そして柔術の真髄は力ずくではなく、相手の力を上手く利用して戦うことなんだ。」


「へぇ~そんな武術があるのか初めて知ったわ。サクヤの故郷にも行ってみてぇな!」


「それは無理だと思うよ・・・ここよりず~と手の届かない離れた場所にあるから」

そう言うと桜夜はどこか寂しげな表情を浮かべる。


「もしかしておまえ・・・」





ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


途轍もない破壊音が屋敷内に鳴り響き、廊下の砕かれた壁が桜夜達に飛んできた。突然の出来事で困惑する桜夜であったが、身体が反射的に反応し、傷一つ事無くかわしきる。落ち着いた頃には要塞であるはずの壁に大穴が開いていた。


「兄貴!大丈夫か?助けに来てやったぜ!」

壁の外から声が聞こえ、見てみるとそこには顔は鳥、身体は動物で翼を持っている何とも奇妙な生き物・・・地球でいうグリフォンだろうか。そしてそれに跨る黒いマントを被った人物。顔は見えないが声から少年だと思われる。


「アホか!そんな大きな音出したら城中の奴らが起きちまうだろうが!」


「うぅぅぅだって、だってぇ~」


いつの間にか男は少年とグリフォンがいる大穴の近くにいた。どうやらさっき桜夜が壁を避けるため手を離した隙に、どさくさに紛れ移動していたようだ。


「それでどうだった?」

「待ってろ今調べる」


男はそう言うとまた懐から何かを出した。随分古臭い形をしてはいるが、あれは眼鏡だろうか?その眼鏡をかけると黒姫を熱心に観察し始めた。恐らくあれも高性能な古代アーティ遺物ファクトなのだろう。


桜夜はこの隙を見て再び奪還しようと試みるが、

「おいそこの女、兄貴の調べ物が終わるまで近づくんじゃねぇ!」

黒マントの少年に阻まれてしまう。


「くっ駄目か・・・あとね君は勘違いしているようだけど、僕は男だから!」

「えっそうなのか?こんなに可愛いのに」

「そんな可愛いなんて/////」

ちなみにこのメイド服はマーリンのお手製で「いつか必要になるかもしれないから」と渡されたものだ。ここ数か月でこの他にもたくさんの服をマーリンから貰っているのであるが、何せ男装している身なので、空間魔法の肥やしとなっている。

久しぶりに女の子の服を着て褒められたので、桜夜は少年の言葉にまんざらでもないような心境になったのであるが・・・


「じゃあ何で男がメイド服着てるんだ?メイドは女が着るもんだぞ?・・・おまえ頭大丈夫か?」

「そっ・・・それは・・・」

そう年下の少年に真顔で答えられ、最終的に桜夜は心に大ダメージを受ける結果となった。


「ちっこれも違うか・・・」

桜夜と少年がそんなやり取りをしているうちに、男の調べ物とやらが終わったようだ。


しかし、今までどこかふざけていた彼の様子と違い、顔や声に落胆と悔しさがにじみ出ている。


そんな風に思っていると唐突に男が調べていた物を投げ渡された。


「もうそいつに用は無え返すよ」

「えっ?」

あまりにもあっさり黒姫を返され桜夜は思わず唖然とする。


「プッ、なんだそのアホ面は、まぁおまえとは何でか知らんが長い付き合いになりそうだ・・・俺の野生の感がそう言ってる・・・また会おうぜ」


「えっ!ちょ!待って」


男は桜夜の制止の声も聞かず少年のグリフォンに飛び乗ると一瞬で闇の彼方へと消えていった。


(いやまた会おうぜって言ってもあなたの本当の顔知らないからあっても分からないんじゃ・・・)と密かに心で突っ込みを入れていたことは余談である。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何であいつに渡したの?」

古代アーティ遺物ファクトは能力面、金銭面共に価値が高い。いつもは売るなり、自分たちで使うなりしているのに今回男が桜夜に返したことに対して少年は不思議に思っていた。


「ん~何か勘が働いた。あいつならあの古代アーティ遺物ファクトを上手く使いこなすだろうっていう勘がな」


「生まれながら古代アーティ遺物ファクトに愛されている兄貴よりも?」


「そうだ」

この男は生まれながら”古代アーティ歯車ギア”というスキルを持っており、使用者が限られる古代アーティ遺物ファクトのすべてを扱うことが出来る。そんなスキルを持っている男よりも桜夜の方が黒姫を使いこなせると聞いて少年が驚く。


「今回もハズレだったね・・・僕たちが探している物って本当にあるのかな?」

グリフォンに乗った少年は、マントを風になびかせ男に問いかける。


「ハハッ!無かったら俺たちの国は終わりだな」

男は笑っているが、その瞳は真剣そのものだ。


「・・・・・」


「・・・だから絶対見つけなきゃなんねえ。神殺しの古代アーティ遺物ファクトをな」



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