闘争と逃走
本日2話目!
「お~さすが崇高な小さき魔女噂に違わぬ凄まじい魔力だな」
盗賊の男は感嘆の声をあげる。だが言葉と裏腹に声に緊張した様子は見られない。
「・・・馬鹿にしてますの?余裕があるのも今のうちだけですわよ!」
「ふふん余裕が無いのはどっちだか・・・あっ!あの夜もそうだった。 “ケイン!もう駄目おかしくなっちゃう~あ~ん!”って気持ちよさそうに喘いでたよな。本当はあの時の快感が忘れられなから俺に突っかかってくるんじゃ・・・おっと」
男が避けた瞬間、熱戦が通り過ぎ当たった壁は白熱し・・・溶けた。
「うわっ!あぶね~!冗談だってのに」
「・・・次はコロシマスワ」
(うわ~サリリン完全にバーサクモードに入ってる。あの男わざと煽ってるな~このままじゃ思う壺・・・私も戦闘に参加できれば良いんだけど・・・)
桜夜は徐に2人に“身体解析”をかけ、ステータスを比較し、身体を観察する。
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名前:サリー・アソライト・フォレス
種族:エルフ
年齢:100歳
性別:女
身長:155.5
体重:38.2
体力:120
魔力:110000
力:58
防御:90
敏捷:150
特技:魔力操作Lv8
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名前:?????
種族:???
年齢:??歳
性別:???
身長:177.7
体重:64.5
体力:320
魔力:50
力:205
防御:200
敏捷性:250
特技:??????
称号:??????
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(魔力の扱い方を見るとサリリンは遠距離から中距離を最も得意とする典型的な魔法使いタイプ。男の特技は見えないけど筋肉の付き方と身のこなし、魔力の少なさから近距離戦闘が得意なのだろう。魔力操作の錬度によっては私みたいに身体や武器に魔力を纏わせて破壊力を上げてくるかも・・・どちらにしろ今の私ではステータスに開きがあり過ぎて真正面から戦うことは得策ではないか・・・)
「さてどうするか・・・」
そんなことを考えているうちに2人の戦闘が開始される。
男は得意な接近戦に持ち込むためサリーに向かって走り出す。サリーそれをさすまいと火魔法による50もの弾幕を仕掛けるが、男はそれを見切り左右に動くことで避けている。避ける際、移動を最小限に抑えていることから敏捷性が高いだけでなく相当な修練を積んでいることがうかがえる。
そんな超人的な速度で肉薄してくる相手に焦ることなく前方一杯に風の壁を作り出し一定の距離以上近づけない。見た目とは裏腹の冷静な対処は、さすがは歴戦の魔法使いという感じだ。
しかし、男はサリーに近づけないため攻撃できない。サリーは部屋の空間が狭く本来得意としている大規模魔法による殲滅ができないため、小・中規模の魔法を駆使するしかないのであるが、マーリンほど魔力操作に長けていないため仕留めることが出来ないという硬直状態に陥っている。
このまま消耗戦かというところで事態が動く
「ふぅ・・・やはり倒すのは難しいか」
「当然ですわ。私を倒したいのであれば、竜を100体でも連れてくることですわね」
「ふむ、それも一つの手ではあるが・・・こんなのはどうだ?」
男は懐から小さいランタンを取り出す。
「そんな物で一体どうするつも・り・ッ!!!」
驚いたことに男がランプに魔力を通すのを感じた瞬間部屋の中の色が、光が徐々に消えうせサリーは暗い空間に閉じ込められた。
慌てて光魔法を発動させようとするがそれも闇の中に吸い寄せられ消える。
「これは俺がいただいた古代の遺物の一つ“光滅”・・・この闇の中では全ての光がかき消される」
「くっ!ちょこざいな!!!」
声がする方に攻撃魔法を放つが当たった様子は無い。
現状を打開しようとサリーは何度も光魔法を試みるが失敗し、ようやく“光滅”の効果が切れた部屋には散在する宝と黒い鉄格子の箱が存在するだけだった。
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“光滅”でサリーを足止めした男は、今宝物庫を出た後脱出するために廊下を走り抜けていた。
(ふう上手くいった。あの領主が予想以上に強かったから焦ったが、噂通り絡め手には弱いみたいだな)
ちなみに今は男の姿を肉眼でとらえることは出来ない。それは男の来ているフード付きのマントも何を隠そう古代の遺物であり、姿を透明にし暗闇の中でも見えるようにする効果がある。その名も“忍装”といい、古代の遺物を収集する上で無くてはならない相棒だ。
(このまま屋敷の外に出られれば俺の勝ち・・・ん?)
曲がり角に差し掛かると、廊下の前方にメイド服を着た女性が歩いていた。
(ちっ衛兵じゃねえのにこんな夜中に何出歩いてんだよ!盗賊の俺が言ったこっちゃないが襲われっぞ!ハ~~・・・万が一気づかれて誰か呼ばれても面倒だな)
そうこう考えているうちにメイドに肉薄する。
(悪いぃな姉ちゃん、ここは気絶してもらうぜ!)
男は走り際にメイドの首筋に手刀をあびせる、メイドは何が起きたのか分かるはずもなく廊下に崩れ落ちる・・・はずだった。
気づいたときにはメイドでは無く男の方が床に身体が投げ出され、寝技で関節を決められ身動きが取れなくなっていた。
(何だ?一体何が起きた?投げられた?この俺がメイドに!?相手には姿が見えていなかったはず、まして賊が忍び込んだと知っているのは気を失わせた奴以外ではあの部屋で足止めしているサリーともう一人・・・あっ!)
戦闘中介入して来なかったため印象が薄くなりつつあったがもう一人いた。
獲物の護衛ではあったが、ここ数日で意気投合した街の冒険者が・・・
男は寝技で至近距離にあるメイドの顔をまじまじ見つめる。かつらを被ってはいるが、クリッとした茶色い瞳に長いまつげ、雪のように白い肌は、陰で城の者に絶世の美少年と言われる奴と良く似ている。
「おまえサクヤ・・・か?」
「こんな格好してるのによく分かったね!さぁ“黒姫”を頂戴しなさい!」




