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奪われた黒姫

「別人・・・まさか・・・」

桜夜の言葉にサリーは困惑した表情を見せる。


「サリリン、ここ数日の間でケインの様子で可笑しなところは無かったですか?」

(今思えば私がケインと急に親しく話し始めたのが数日前、そのあたりで本物のケインと入れ替わったんだと思う。私に話しかけてきたのは、きっと急遽入った護衛でサリリンと親しくしている私の情報が欲しかったから。・・・きっと恋人であるサリリンは変化を敏感に感じ取ってたはず!)


「そういえば・・・」


「うん!」

桜夜は期待を込めてサリリンを見やる。




「最近、彼のが太くて激しい気がすると思ってましたの・・・」


「はっ?」

(つまりあれか夜の営みで違和感があったと・・・そういえばこの前、彼が激しく求めてきたとか言ってたような・・・)


「そういうことでしたのね!納得ですわ!」

「ハ~~~・・・」

(サリリン・・・私のあなたへの純粋なイメージを返して・・・)


「・・・ククッ・・・ハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」

そんなくだらない(桜夜は真剣だったのであるが・・・)会話を聞いていた盗賊の男はずっと肩を小刻みに震わせていたが、ついに堪えきれず笑い出した。


「・・・やっぱ面白れぇ奴らだな。腹痛てぇ・・・サクヤなぜ俺が偽物と分かった?我ながら完璧な変装だと思っていたんだけどな」


盗賊ケインは先程までの貴族のような品のある口調ではなく、砕けた口調に急に変化した。こちらが本来の彼なのだろう。


「僕には特殊な能力があってね、人を見極めるのが得意なんだ。でもこの能力を使ったのが依頼を受けた初日と今だけだったからケインがすり替わっていることに気づけなかった・・・」


「おお、そんな能力があるのかい?便利だな人の秘密プライバシー除き放題じゃねえか」


「なっ!僕はそんなことしないよ!それに勝手に知るのは失礼だから極力使わないようにしてるんだ!」


そんな盗賊の言葉を桜夜は即座に否定する。


「まぁそういう能力だってんなら好き好んで人のプライバシーを除く最低な奴より、お前の様に自重して使う奴の方が俺的に好みだぜ?」


男は微笑ましい物を見るように、片方の口角を上げながら不敵に笑う。


「敵対している盗賊に好みとか言われてもちっとも嬉しくないんだけど・・・」


「まぁ違えねぇな!!!」


盗賊の男はそう言うと懐から何かを取り出し床に叩きつける。その瞬間辺り一面に煙が充満し視界を遮った。


(煙幕か!逃げられないうちに早く対処を!)


桜夜が風魔法で散らそうと準備をしようとした瞬間、それよりも早く一陣の強烈な風が煙を吹き飛ばす。


「これでも大層な2つ名を貰っている身です。舐めないでもらいたいですわね。」


どうやらサリーが吹き飛ばしたようだ。顔は似てはいないが、醸し出す独特の雰囲気は万能の賢者であるマーリンと共通する部分がある・・・さすがは兄妹というところだろう。


向き直ると盗賊の男はまだその場に居た。

・・・しかしその手には、黒い棒状の古代アーティ遺物ファクトが握られている・・・


「煙幕で稼ぐことができた時間は精々3秒だったはず、その一瞬に“魔牢”の中に収めてあったはずの“黒姫”を取り出すとは・・・一体どのようなトリックですの?」


牢の周りを見回しても抉じ開けられた様子も無ければ、侵入者撃退魔法が発動した形跡も無い、


「こちらも商売なんでねぇ~教えることは出来ねえよ」

盗賊はヘラッとした笑顔で臆することなくサリーに答える。


「それもそうですわね・・・でも残念その商売が上手くいくことはございません。それは私の物今取り返して差し上げます」


サリーはカーテシーのような美しい姿勢を取り迎撃態勢を取る、この姿勢を取ったら避難するようにと事前にサリーから聞かされていたので防御魔法を展開させ距離を取る。

「それに乙女の心と身体を弄び、あまつさえ私の愛しい恋人を・・・許さなくってよ?」


次の瞬間彼女の身体から強力な魔力波が発せられ、周囲の金銀財宝を部屋の壁際まで押しやる。


その時の少女の笑顔はまるで般若にようで、怖い物知らずの盗賊や普段の彼女を知っている桜夜でさえも震え上がる程であった。


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