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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-57.家の終わり

 お祭りは夜まで続いたけれど、さすがに翌日には終わっていた。街は平穏を取り戻して、市民たちは普段の生活に戻っていく。


 サイクロプスの出現による混乱で多少の負傷者は出たけれど、死者は僅か一名。封印が解かれたばかりのサイクロプスに押しつぶされたドラントだけが命を落とした。

 遺体は無残な姿になっているようだった。ほぼ原形を留めていないとも噂が流れているけれど、本当のことは誰もわからない。


 城主は息子への最後の情けとして、遺体を丁重に葬った。ただし街を挙げての大々的な葬儀は行われない。一族だけの密葬が行われた後に、正式にドラントの死が公表された。

 次期城主としては、寂しすぎる扱いだった。


 彼の婚約については何も語られていない。だからナーサの死の真相は、世間的には謎のまま。ドラントが庶民を孕ませて殺したという噂は流れているけれど、その内みんな忘れるだろう。


 人的被害は軽微でも、物的被害はそれなりにあった。サイクロプスが壊した城壁に大通りの石畳。壊れた家屋も数件。なにより、城に甚大な被害が与えられた。

 それらは迅速な修理がされるらしい。城は街のシンボルだし、その他の被害も城が原因なのは明らか。何しろ城から巨人が出たのだから、細かな事情を知らない人でも城主一家が何かやらかしたと察せられる。


 その疑念を払拭するためにも、街の土建屋を急がせて儲けさせることになるだろう。


 オーゲル家は、城主一家には全く関わりのない他人となった。婚約していたふたりが死んで、そもそもの婚約も誤解から起こったこと。

 オルソンの所に、城から連絡は一切来ていないらしい。当然、爵位を与える話も立ち消えになったはずだ。



 準備会は祭りの後片付けをしなければいけない。けれど普段とは違った大きな仕事をやり終えたという様子で、みんなの表情は晴れやかだった。

 数日のうちに、城壁の修理が完了したという報告が来るはずだ。その時に改めてセイホラン像は解体されて森に埋められる。ようやく祭りが終わるわけだ。



 祭りの翌日、オーゲル邸をラマルたちザサール商会の一家が訪ねてきた。あの後、娘のアルレナは無事に保護できたらしい。


「私たちは、今日で街を出ます。他の商いもありますので。国中を飛び回り、来年またこの街に帰ってきます」

「そうですか。僕たちも数日すれば、街を出ます」

「では、いずれどこかで会えるかもしれませんね」


 そんな別れの言葉と共にザサール商会は去っていった。


「バイバイ!」


 最後にアルレナが、振り返って笑顔で手を振った。この件では怖い思いを何度もしただろうけれど、元気そうで良かった。



 数日後、リーサが家にジェゾを連れてきた。オルソンが準備会に関わる仕事をしている以上、ふたりは顔見知り。けれどジェゾは緊張した様子で、改めての挨拶をしに来た様子だ。

 僕たちは邪魔にならないように、ジェゾとオルソンが対面している食堂にはいない。扉の所で身を潜めて様子を伺っているだけだ。


「オルソンさん。遅くなりましたが、ナーサさんのことお悔やみ申しあげます。家が大変な時だとは思いますが、お願いがあって来ました。……リーサとの結婚を認めてください」


 真剣そのものの表情。オルソンはすぐには返事をしなかったが、間を置いて。


「うちはどうやら、貴族にはなれないらしい。それでもいいのか?」

「はい。家柄は関係ありません。婿入りしたいというわけでもありません。オーゲル家のために、オルソンさんがそうしろと言うなら、従うつもりでいました。けれど俺は、リーサと一緒にいられるなら、どんな形でもいいんです」

「……そうか。リーサは」

「わたしはジェゾが好き。このところ色々あって、より強く思うようになったの。だからお父さん、お願いします」

「わかった。ジェゾ、娘をよろしく頼む」


 オルソンは深々と頭を下げた。




 その数日後、さらに訪問者が来た。知らない男と知らない女だった。しかもそれなりにお金の掛かってそうな馬車で来た。女はドレス姿だ。

 僕たちはまた、邪魔にならないように物陰からこっそり伺う。


「誰?」

「弟です」


 同じく隠れているリーサが教えてくれた。


 城で住み込みで働いているという、オルソンの息子か。


「父さん。紹介したい人がいるんだ。城で働いているうちに関わりを持って、お互いに好きになった人だ」


 その女は男爵令嬢とのことだった。貴族の中では高位とは言えないが、爵位持ち。そしてふたりは本気で愛し合っていた。


 男爵家には娘ばかりで男子がおらず、婿養子を取る必要があった。

 政治的な結婚だから本人の意思と関係なく相手を決めることもあるが、そこまで重い家格というわけでもない。娘が好きな相手で、有能ならば婚姻を認める雰囲気が男爵家にはあった。


 オルソンの息子は、条件にぴったりだった。優秀な役人として成果をあげている。婿入りして将来男爵を継げば、街のためにもなると。


 オルソンがどうしても手に入れられなかった男爵の地位だが、息子は手に入れるようだ。


「わかった。結婚を認めよう。式の時期は、リーサと話し合いなさい。同じ日に式を挙げられて、片方の晴れ姿を見逃すなんてことはしたくない」


 少し寂しそうな表情のオルソンだけど、悲しくはないようだった。



「子供たちの身の振り方が決まり、オーゲル家は私の代で終わることになりました」


 その後夕飯の席で、オルソンは僕たちに静かに語る。


「息子は男爵家の姓に変わり、リーサも向こうの家に入る。オーゲルの姓は途絶えます。けど、これで良かったのでしょう。私は男爵の父として、余生を送ります。……兄が不義を働いて三十年。望んでいた形ではありませんが、幸せになれた。苦労をかけてきた子供たちも身を固めた。これで良かったのでしょう」


 そう語るオルソンの顔は晴やかだった。



 事件の顛末を見届けて、この街は変わらず動いていくのを確信した。来年はまたセイホラン像が街を練り歩くのだろう。その後の数日、こうやって結婚の報告が相次ぐ。

 そうやって、街は続いていく。


「そろそろ行こうか。よく考えれば、この街は通過地点でしかなかったわけだし」

「そうですね。別の目的地がありました。サラシオでしたっけ」

「ジェイザックの生まれ故郷! 伝説の地よね!」

「普通に人が住んでる街だから、土地そのものが伝説ではないけどね」

「ゾーラの知り合いがいるんだよなー」

「ええ。会うのは久しぶりだけどね。行きましょうか、サラシオの町に」


 オルソンさんを始めとして、お世話になった人たちに挨拶して回ってから、僕たちは城壁を出た。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。これで、第4章は完結です。

第5章は明日からすぐに投稿していきます。ぜひ、引き続き楽しんでもらえれば嬉しいです。


皆さんからの反応、とても頼りになります。いつもありがとうございます。感想やレビュー等、投稿していただけると助かります。すごく喜びます。よろしくお願いします。

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