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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-54.狼の群れ

 周りの木がいくつか折れる。ロープが掛かっていた木も例外ではない。根本から折れたその木からロープが外れて、緩んで地面に垂れた。封じ込めるものが無くなったのだから、サイクロプスは当然出ようとする。

 満足に動かない足だけれど、片手をついて這うように動く。目の前にいた騎兵に、ボロボロになった木を振り下ろした。騎兵はなんとか当たる前に馬ごと退避できたけれど、サイクロプスはなおも周囲を攻撃し続けていた。


「まずいわね。ヨナ。これ、なんとかできる?」

「なんとかって……サイクロプスを殺すってことだよね?」

「ええ。兵士たちが無事なまま」

「もちろんそうしたいけれど」


 死にものぐるいで動くサイクロプス。今も木がぶん回されて、安易に近づくと巻き込まれかねない。兵士たちも手を出しかねている。


 そうこうしている内に、サイクロプスは前進した。その先にあるのは城壁。振り回されている木が城壁に当たった。


 石造りの壁は、もちろん木よりも硬い。けれど長年放置されていたからか、脆くなっている箇所もあるらしい。サイクロプスの攻撃で、一部が崩れた。

 それを見たサイクロプスが、地面につけていた手を離して壁を殴る。ヒビが入った。


 ゾーラがサイクロプスの横面に闇をぶつけたけれど、奴は動きを止めなかった。片手を壁面に掴むように押し当てて、力を込めている。このままだと壁が破られる。


「まずい! 早く動きを止めないと!」


 周りを見るけれど、サイクロプスに手出しを躊躇っているようだ。壁に体重を預けている奴の手には、まだ木が握られている。容易に近づけばそれが振られる。

 別の箇所に注意を引き付けないと。


「ゾーラ! 闇の攻撃を続けて! できるだけキツイやつ!」

「無茶言わないで! 魔力だって無限じゃないのよ!」

「できるだけ頑張れ!」

「ああもう! ヨナくんの頼みじゃないなら聞いてないからね!」


 嬉しい言葉だな。なんか含みがあるような気もするけれど。


 ゾーラが闇で大きめの球体を作って放つ。サイクロプスの目を狙っているが、奴はやはりあまり気にしていないようだ。

 ここからの脱出に気を取られているのか。像にもガラス玉にも、もはや興味を示さない。それよりも、傷を受けたから逃げる方が優先に決まっているよね。


「ゾーラもう一度」

「ええ!」

「待てゾーラ! 何か来る!」

「え?」


 キアがなんの気配を察知したのかは、すぐにわかった。いくつもの足音がした。人間のものではない。もっと身軽な感じで駆けてくる。

 狼だった。縄張りに入り込んだこちらを襲ってくるのかと思って身構えたけど、違った。


 縄張りを侵したのは間違いないけれど、より大きな目標に向かっていった。つまりサイクロプスだ。


「アオオオォォォォォ」


 遠吠えが聞こえる。群れを指揮する者がいるのか。けど、狼の吠え声とは少し違った気もした。

 それに応じるように、狼はサイクロプスに襲いかかった。振られる木を回避して、何匹もが腕に噛み付いた。狼の重さで腕を上げきれず地面に落ちる。


 サイクロプス自身も力尽きかけているのか、姿勢がズルズルと下がっている。ほとんど腹這いの体勢になっていて。


 攻撃するなら今だ。サイクロプスが木を振り回したおかげで、周りには木の枝が散乱している。もふもふから飛び降りて、近くにある中では一番大きくて長い枝を手に取る、

 それはちゃんと聖剣になった。


 馬上のアンリ再度手を伸ばして。


「あいつの横っ腹ギリギリを走って! 僕をぶら下げたままで!」

「ええ! わかったわ!」


 大きな馬の上のアンリが、背の低い僕の手を握ってサイクロプスに向けて突撃。周りを視れば騎兵たちも攻撃を仕掛けているし、ティナも剣を握ってサイクロプスの足に接近していた。準備会面々が、行けとかやってしまえとか声援を送る。


 その中に混ざりながら、もふもふがサイクロプスの脇腹に接近。馬体とサイクロプスの間に挟まれる形になった僕は、片手に持った枝を巨人の腹に突き刺した。

 さっきの剣とは違って、容易に深々と刺さった。もふもふが走るのに合わせてサイクロプスの脇腹が切り裂かれていく。血が流れて地面を赤く染める。


 内臓までしっかりと傷ついたのだろう。サイクロプスの体が大きく跳ねて、それから動かなくなった。あちこちからサイクロプスに槍や剣を刺していた兵士たちも、それに気づいた。


 誰かが死んだぞと呟き、それが周りに伝わって、歓声が上がった。


 しかしそれは、石造りの城壁が崩れる音でかき消された。

 サイクロプスは絶命したが、その腕がなおも城壁に寄りかかっていた。どうやら、あと少しで城壁を砕けたところらしい。


 腕の重さで、石に入ったヒビが広がっていく。


「退避ー! 城壁から離れろ! 崩落に巻き込まれるぞ!」


 隊長の声に、周りが一斉に動き出した。僕は枝を捨ててもふもふに掴まる。騎兵たちに混ざってサイクロプスから離れた。


 準備会は、セイホラン像を移動させていた。今まで以上に速い移動で地面も安定していないから、上でゾーラが悲鳴を上げていた。キアは愉快そうに笑っている。

 そして城壁に穴が空いた。サイクロプスの腕が向こう側に突き抜けた。その腕の太さよりも人周り大きい穴から森が見える。こちらがいる森と変わらない光景。しかし向こうは、壁に囲まれてなどいない広大な森。


 自由な森だ。

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