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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-53.サイクロプスを囲む

 あの時被っていた仮面は返してもらって、今は僕の腰ベルトに引っ掛けている。馬の運動に合わせて揺れていた。

 今はそれどころじゃないけど。アンリの肩に腕を回して抱きしめる。別に変な意味じゃないし、冷静に状況を見極めてるからね。


 踵に剣が刺さったままのサイクロプスは、明らかに歩行速度が落ちていた。傷を受けた痛みで、投げようとしていた木片も手放してしまった。こちらにそれが落ちてくるのを、もふもふはなんとか回避してくれた。

 そんな状況でも目標をこちらには変えず、ガラス玉をじっと見つめている。さすがだ。


 セイホラン像とサイクロプスの進む速度がほとんど拮抗してきた。サイクロプスが痛む足に力を入れて、接近を試み像に殴りかかる。拳がキアたちに迫る。


「おい! 危ないぞ避けろ!」

「やめてやめて! 怖いんだけど!?」


 上のふたりの声を聞きながら若者たちが一瞬だけ速度を上げて、ギリギリで拳を回避。サイクロプスは勢いのあまり転倒するのを踏ん張って阻止したが、そのせいで足をさらに痛めたらしい。

 その代わり、像の上の方が大きく揺れた。


「ぎゃー! もう嫌! なんでこうなるのよ!?」

「ははっ! 迫力あって面白かっただろ!」

「冗談じゃないわ!」

「もうすぐ森だ! 足元悪くなるから気をつけろ!」


 ジェゾの掛け声。できるだけ太い道を選びながらも、像は大通りから外れていく。その背後に森が見えた。足元も大通りほど整備が行き届いておらず、ガタつき始めている。

 森に入れば、足場はさらに悪くなる。動きも慎重にならざるをえない。


「木の間に身を隠して!」

「わかった! みんな慎重に動かしてくれ! 森の奥まで行くぞ!」


 ジェゾの指示で像が森に入っていく。森は奥に行くほど人の手が入らなくなっていて、像やサイクロプスよりも高い木も多い。視界も遮られて、サイクロプスから隠れるには十分だ。


 後は兵士たちが到着して、サイクロプスを包囲するのを待つだけだ。騎兵が動いているなら、既にある程度のロープを用意して森に潜んでいる可能性も高い。


「僕たちも森の中に」

「ええ!」


 もふもふが森に入っていく。木々に囲まれて視界が悪い。サイクロプスも続いて入った。

 太い木の陰に隠れて、向こうの様子を見る。目標としていた像が視界から消えたにも関わらず、サイクロプスは迷いなく歩いていた。


「ガラス玉のせいだ。あれは視界に入らなくても、気配が魔物に伝わるんだろうね」

「どうするの? 隠れた意味ないじゃない」

「森の奥まで誘導させるには、その方が都合がいい。でも、いつでも隠れられるようにゾーラに言わないと」

「合流するわね。もふもふ」


 小声で話しながら、セイホラン像がいるはずの方向へ向かう。サイクロプスの目の向く先だからわかりやすい。


 像は今も森の奥に向かっているところだった。その先には、街と外界を隔てる城壁がある。

 城壁の近くにたどり着いて、ようやく像は動きを止めた。そこから先は行けない。


 石造りの頑丈な壁は、普段は人が立ち入ることがない場所のために、ところどころ蔦が絡まっていたり、雨風による風化の跡が見受けられた。


 像の周りに、騎乗した兵士が何人かいた。警備隊長の馬に乗せてもらっているティナの姿も。


「ヨナ様! ロープの準備、できました!」

「わかった。サイクロプスがこっちに向かっている、姿を見せたら出来るだけロープを張り巡らせてサイクロプスを取り囲んで……ください」


 後半からは兵士たちへの指示だ。彼らには僕の指示に従う義理なんかない。けど、このやり方が合理的だと感じたらしい。隊長が頷き、部下たちに指示を出した。


 太い木を選んでそこにロープを結びつける。僕も一本貰って、もふもふの上で近くの木に結びつけた。太くて、容易には折れなそうな木だ。太すぎて、さすがにこの幹が木の棒で聖剣になったりはしなかった。拾い上げてもないしね。


「来ました!」


 騎兵がひとり、緊張した声の調子で報告した。直後に足音が聞こえる。木々が揺れているのがわかる。ついに来たか。

 木々の隙間から、サイクロプスがにゅっと顔を出した。


「やれ!」


 隊長の指示で、騎兵が森を駆け抜ける。まずはサイクロプスと像の間を隔てるように、ロープを何重にも重ねて張る。木を支点としてロープを曲げながら、サイクロプスの周りを馬が駆け回る。その中にはもちろん、もふもふもいた。


 もふもふはむしろ、一番頑張っていたと言っていい。他の馬が既に張ったロープを軽々と跳躍して交差させて、包囲をより強固にする。


 サイクロプスも目の前で異常事態が発生していることに気づいているようだった。このままでは閉じ込められてしまうと。だから包囲網を回避しようとしたけれど、馬上の人間がくくりつけた縄の位置は巨人にとっても少し高かったようだ。

 怪我がなければ、それでも乗り越えられたかも。けれど足を負傷して引きずっているような状況では不可能だ。


「足元を槍で刺せ! 動きを封じてから四方を囲んで殺せ! ここで仕留めるぞ!」


 隊長が兵士たちに命令すれば、勇敢な騎兵たちが槍を構えて突進。サイクロプスの足に数本の槍を刺して離脱する。


 幾重にも取り囲んでいるロープに激突しないように、馬はぶつかる直前で向きを変えなきゃいけない。だから全力の接近はできない。それでもサイクロプスの足に何本もの槍が刺さっていく。


 上を見れば、サイクロプスの顔に闇の球体がぶつかった。ゾーラは木々の隙間から狙いをつけているらしい。サイクロプスの方はそれどころではないから、反撃される心配もない。

 咆哮が上がる。明らかに苦しんでいる。立つのが苦しくなったのか、サイクロプスが膝をついた。


 このまま攻撃を続ければ、殺せる。 そう思ってたのだけど。


「離れろ! まずい!」


 誰かが声を出した。サイクロプスが目の前にあった木の幹を掴んだ。バキバキと音がして木が砕ける。幹の途中で真っ二つに折れたそれを掴んだサイクロプスが、全力で振った。

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