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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-49.サイクロプス

 書物が熱を持つ。直後に、足元に何かが現れた。それはどんどん大きくなっていく。ドラントの体を持ち上げて、壁と天井の交わる角に押し付けた。


「ぐえっ」


 書物から現れたそれは巨人と言うべきもので、身長は床から天井までの高さでは足りなかった。

 ドラントがいるのは、巨人の背中。前かがみの姿勢になっているそれは、なおも巨大化を続けて、ドラントの体を天井に押し付け圧迫している。


「殺せ! 復活しきる前に殺せ!」


 父が兵士に指示を飛ばしている。矢が何本か射掛けられて、勇敢な兵士が槍を突きつけた。巨人の向こうにドラントがいることなどお構いなしだった。

 巨人は自身に向けられる攻撃をしっかりと見ていた。腕で頭を庇って矢をしのぎ、その腕を奮って槍ごと兵士たちをなぎ倒した。


 そして彼らを睨む。ドラントからは見えなかったが、巨人の顔には目がひとつしかなかった。その異形に足がすくむ。


 その間も巨人は膨張を続けた。天井との間で挟まれたドラントは、呼吸もままならなかった。助けを求める声も出ない。

 手足がミシミシと音を立てる。それが限界を迎えて、体中の骨が折れ、内臓が潰された。圧迫された体の中身が出口を求めて、体中の穴から血と内臓が吹き出した。


 ぺちゃんこになるドラントは、最後まで自分がこんな死を迎える理由をわかっていなかった。



 巨人はそのまま天井を突き破り、怪力で邪魔な壁を振り払った。城の外壁が崩れて、広い外が見えた。


 こんな窮屈な場所にはいられないとばかりに、城を破壊しながら外に飛び出した。



―――



 城の一部が崩落して、中から巨人が出てくる。そんな異常事態に市民たちもすぐに気づいて逃げ出した。祭りの最中に殺人事件が起こった先程と比べても、規模の大きな混乱だ。

 大きな咆哮が巨人から聞こえてきた。元気だなあ。


「なんだよあれは」

「サイクロプスねー。最近では目撃例はほとんどないけれど、伝承にはよく出てくるわ」

「伝承! つまりあれを倒せば、わたしたちも伝説になれるってことね!」

「いやいや待て待て。倒そうとするな。あんなのは街の兵士に任せておけ」

「ですが、放ってはおけませんよ」

「うーん。そうだね。僕たちも倒す手伝いくらいはしてもいいかも?」

「でもどうやってだよ!?」

「ヨナ様。王都でドラゴンに放った技は使えますか?」

「出来ない。なんであの時出来たのか、自分でもわからない。それに、市街地で不用意に放てば周囲に被害が出るかも」


 ここは王都の広場ほど開けた空間でもない。


 でも逃げ惑う市民たちを見て、放ってはおけないな。


「ラマルさんたちは娘さんと合流して、逃げてください。余裕があれば護衛たちに避難誘導とかさせてください」

「はい! でも避難ってどこに」

「それは……サイクロプスの来なさそうな所に」

「はい!」


 曖昧極まりない指示に、ザサール夫妻は頷いて走っていった。最優先事項は娘との合流だからね。


 実際、サイクロプスがどこに向かうかなんか誰にもわからないわけで。


「あの。ヨナ様。サイクロプスがこちらを見ているようなのですけれど」


 城から完全に脱出して、お金のかかった庭園を踏みしめながら着地したサイクロプス。


 庭園に植わっていた木を握りしめると、引っ張り上げて容易に地面から引き抜いた。なるほどすごい怪力だ。

 しばらくはそれを振り回して城に当てて、レンガを砕いて遊んでいるようだった。


 三階建ての建物の屋根よりも上に顔があるほどの巨体。肌の色はゴブリンにも似た濁った緑色。頭は禿げ上がっていて、顔の真ん中に大きな目がひとつだけある巨人。

 それが不意に、こっちに真っ直ぐに目を向けた。何かをじっと見ていた。


「いや待て。こっちじゃない。もっと視線は上だ」

「上?」

「いや、サイクロプスからすると真っ直ぐなのか。とにかく、アタシたちを見下ろしてはない。見てるのは」


 振り返った。巨大なセイホラン像が、視線の先にあった。


 ちょうどサイクロプスと同じくらいの背の高さだった。


「あれね。仲間か、それとも敵だと思って見つめている。この街の中では目立つし、大通りをまっすぐ進めばたどり着ける」

「あの! なんかセイホラン様の足元に人が集まってるように見えるんですけれど!」

「準備会の人たちかな。ずっと放置は出来ないと考えてどこかに移動させようとしていたとか?」


 サイクロプスがセイホラン像を認識しているならば、そっちに向かう可能性がある。


「誘導できる。キア、準備会の人たちに伝えて! 像を森の方に動かしてサイクロプスを連れて行くように! このままだと像が壊されるとか、そんな説明をして!」

「任せろ!」


 大通りは人の数が多い。道路脇に立っていた屋台が混乱の中で倒されて歩きにくい。そんな道を駆ける気になれないキアは、近くの建物の上にスルスルと登って屋根の上を走っていく。登る手間を考えても、こっちの方が早いんだろうな。


「ああくそっ! この格好走りにくい!」


 普段とは違うドレス姿に文句を叫んでいる。頑張って。


「アンリはもふもふを連れてきて。足元でサイクロプスの撹乱をしてほしい」

「ええ! わかったわ!」

「僕たちもセイホラン像まで合流しよう。ゾーラ、魔物を寄せるガラス玉はある?」

「あるわ。これを使えば像なんかなくても誘導できそうだけれど」

「そうでもないよ。他のものに注意を引かれれば、そっちに行くことも多い」

「確かにね。というか、あたしたちがこれを使ってもすぐに追いつかれるだけ」


 サイクロプスが動き出した。歩幅が人間より大きいために、こちらが走るよりも早く進むことができるらしい。


 ガラス玉を出したゾーラに、目線は行ってない。相変わらず、セイホラン像の派手な色彩の顔を見ているらしい。このままでは準備会が危ない。僕たちも走り出した。

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