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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-46.釈放

 僕はこれからどうなるんだろうな。殺人を犯したとなれば死罪は免れない。そんなことになるつもりはないし、殺してもない罪で殺されるのは嫌だ。本当に殺した罪で裁かれるのも嫌だけれど。

 だから脱出しないと。そして罪を着せてきたドラントに復讐しないとな。

 僕を取り押さえた兵士にもやり返す必要あるかな? 彼らは仕事をしただけだから、見逃してもいいかも。ドラントの命令には逆らえないだろうし。でも城主の息子を殺すなら邪魔するだろうし、だとしたら手にかけるしかない。


 しばらく待つと食事が運ばれてきた。薄い野菜のスープだ。木のスプーンがついている。


 僕に木の棒を持たせるのは危険だと、末端の兵士には伝わってなかったのか。それともスプーンは棒に入らないと考えているのか。いずれにせよ好都合。牢を破って、見張りの兵士を殺して脱出しよう。

 外の様子を伺い、兵士がこちらに注目していないのを確かめてからスプーンを手に取ろうとして。


 足音が聞こえた。


「ヨナ様! ご無事でしたか!?」


 ティナの声だった。持ちかけていたスプーンから手を離した。


 随分と足音の数が多いな。ティナたち四人と鍵を持った兵士。

 牢の前に来た一行の中にはザサール夫妻もいた。


「ヨナ様もう大丈夫です! 怖かったですよね! 兵隊さん早く鍵を開けてください! じゃないとあなたが殺されますよ!?」


 ティナの目はスプーンに向いていて、本気で兵士のことを心配しているのだとわかる。けど兵舎で兵士を脅すとは、いい度胸だ。


 兵士は落ち着いた様子で鍵を開ける。ティナが駆け寄って抱きしめた。


「ヨナ様ー! 怪我は!? どこか痛いところはありませんか!?」

「苦しい」

「苦しい!? まさかどこかお怪我を!?」

「あんたが強く抱きしめるからよ。離してあげなさい」

「あ……すいません……」


 腕の力を緩めたけれど、ティナは僕から離れようとはしなかった。


「ティナ、状況を教えてほしい。どうなってるの? なにがあった?」

「ナーサさんが殺されました。犯人は……ドラントです」


 街の兵士の前で権力者を殺人者扱いするのも気が引ける。その名前は、僕にだけ聞こえるような小声だった。


「そっか。お腹の子供も?」

「そうです。助からないですね」


 酷い話だ。


「リーサさんは安全な所に隠しています。それからすぐにヨナ様を助けに来たんです。村でお世話になった、城門の警備隊長さんが良くしてくれました。それからラマルさんたちも同じ頃に城に押しかけていました」


 ラマルの方を見る。彼は微かに頷いた。


「君は彼女たちとは離れた場所にいた。我々の近くで、娘に祝福をしてくれたのだから。ナーサさんを斬るなど不可能だ。それを兵士たちに訴えた。……もし聞く耳を持たないのであれば、来年からは街に染料を届ける仕事はしないし、他の商人仲間にも話を広めて誰も相手にしないようにすると言っておいた」


 本当にそんなことが出来るかわからないけれど、やった場合は祭りが出来なくなるから大変だな。というか森に囲まれたこの街は、商人から嫌われれば普段の生活も不便になってしまう。


「はい。落とし物ですよ、ヨナさん」


 ソノレナが僕に仮面を渡した。取り押さえた時に剥がされて捨てられたものだ。


「ありがとうございます、おふたりとも。助かりました。……僕はこれで無実ってことでいいの?」

「はい! 兵士たちもドラントに言われて仕方なくやったと謝りたいそうです」

「そっか……」

「隊長さんが、話があるそうですよ。お城に行きましょう」

「うん。わかった」


 抱きつくのは止めたものの、僕の手をぎゅっと握ったまま牢を出た。

 牢にぶち込まれた際に没収された剣も返ってきた。


 そのまま城まで向かう。あまり時間はかからなかった。こちらの存在は伝わっているのか、あっさりと中に入ることができた。

 ここにはドラントもいるはずなんだよな。顔を合わせるのは気まずい。どっちかというと、向こうの方が気まずさは勝るだろうけれど。


 通されたのは応接室のような部屋。さすがに豪華な作りだった。調度品は高いものなのだろうが、派手ではなく品がある。内装を作らせた人間の品格を思わせた。


 城主はいい人なのだろう。息子を育てる力量にだけ欠けていた。



 五人とザサール夫妻とで、割と大人数で待たされる。途中でメイドが来て、お茶を入れてくれた。

 アルレナは宿に預けているらしい。大人の話し合いに巻き込むわけにはいかないし、さっきの混乱で彼女も怖がっているそうだ。今は護衛たちに守られているとのこと。


 ややあって警備隊長が来た。それからもうひとり。警備隊長と同じくらいの老齢の男は。


「初めまして。先代の城主です。この度は孫が誤解から皆様に迷惑をかけてしまいました。本当に申し訳ない」


 そう言って頭を下げた。


 既に隠居している、前の最高権力者。物腰柔らかな彼に、頭を上げてくださいと声をかける。こっちはただの旅人なのだから、そんなに下手に出られても困る。

 それにしても。


「誤解ですか」


 ゾーラが丁寧な、けれど少し険のある口調で返事した。


 ドラントは明らかに僕を陥れるために声を上げた。誤解ではなく悪意だ。

 けど先代城主の認識は違った。


「そうだ。ドラントは己の欲望のために先走ってしまった。愚かなことだ。今後はこのようなことが無いよう、厳しく躾ける。城から出さずに、人の上に立つ者としてのあり方を学ばせる」


 隠居したとはいえ、街の長。それに相応しい威厳で言い切った。


「……そう。城から出さないのね」


 ドラントは権力者の息子。次の城主。そう簡単に、罪には問えない。罪人として捕縛して罪を償わせると大問題になる。城主の家系として、それは避けたいのだろう。

 この家族なりに、内々でやるとはいえ厳しい処罰を与えるならば、別に構わない。問題は。


「ナーサさんを殺した犯人は、誰になりますか?」


 ゾーラの次の質問に、先代城主は困った顔を見せた。


「わからない。捜査をしなければな」

「見つかりますか?」

「わからない」

「オーゲル家は、市民たちにも強い影響力があります。事件を有耶無耶にして終わるのは難しいかと」

「そうだな。対策はする。必ずだ」


 対策とは、犯人探しではなく市民へのご機嫌取りとかの意味なのだろう。ナーサを殺したとされる人間は、永遠に見つからない。それか適当な犯人をでっち上げる。真実は闇の中だ。


「ナーサさんだって辛かったのに。こんな最後になるなんて、かわいそうよ。なのに犯人も見つからないなんて」


 アンリが小さな声で呟いた。対面している先代城主には聞こえなかっただろうな。

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