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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-44.彼は恨みを忘れない

 取り囲んでいた兵士がヨナに近づいて、ようやく彼は後退った。武器は抜かないけれど手を伸ばした兵士を掴み返して捻ろうとした。

 背後から別の兵士がヨナを掴んで強引に取り押さえた。さすがに見ているだけは無理だ。アンリは背負っていた弓を掴んで矢をつがえようとして。


「やめなさい。騒ぎを大きくしても、彼のためにならない」


 背後から穏やかな声が聞こえた。

 振り返れば、見覚えのある顔だった。かなりの年齢のおじいさん。鎧を着ているから兵士とわかる。でも誰だっけ?


「城門の警備隊長さん? その節はどうも」

「うむ。学者先生も元気そうでなによりだ」

「それは皮肉かしら」


 ゾーラが返事したから、ようやく思い出した。あの村で戦いがあった後に、街から派遣された兵士のリーダーだ。


「悪いけど、あたしたちは彼が捕まるのを黙って見ているわけにはいかないの」

「そうですよ! ヨナ様をどうするつもりですか!?」

「落ち着け。彼がこの人を殺す理由がないことは知っている。兵士に掛け合って、すぐに釈放するよう掛け合う。信じてくれ。私は先代の城主様とも懇意にしている」

「……」


 ゾーラは老人に杖の先を向けた。その気になれば闇の塊が彼の顔を殴る。



「本当でしょうね? もし彼をすぐに解放しければ、あたしにも考えがあるわ」

「わかっている。だからおとなしく引いてくれ。そこの彼女を落ち着かせて、家に帰してあげなさい。その後で城に来なさい。門番には私の名前を出せば通すように言っておく」

「……ええ。わかった。でも忘れないで。彼に何かあれば、あなたを殺す。この街の兵士全員を殺して、貴族連中も全員殺す」

「そんなことにはならないから、安心しろ。だが、そんなことが学者先生にできるのか?」

「あたしじゃないわ。彼がやるのよ。あの子は受けた恨みを忘れない。復讐は必ずする。あたしたちは、その手伝いをするだけよ。だからお願い。早く釈放して。街が血の海になる前に」

「……わかった」


 隊長はしっかりと頷いてから、ヨナを取り押さえている兵士たちの方へと行った。


 兵士たちはヨナの体を組み伏せて、仮面を剥がして放り投げた。ヨナは自分を取り押さえている兵士を睨みつけている。顔を覚えているのか。

 何かあればやり返すために。


 隊長が駆け寄り、ヨナに何か囁きかけた。そして彼を立たせて服についた土を払い落とし、どこかに連れて行く。


「見たか! 恐ろしい人殺しが連れて行かれたぞ!」


 勝ち誇った笑みを浮かべるドラントに、周りの兵士は冷ややかな目を向けていた。それに気づかず笑い続けていたドラントは、思い出したように周りを見回して。


「リーサ! どこだ!? かわいそうなリーサはどこにいる!?」


 妙に芝居がかった仕草で、婚約者の妹を探し始めた。


「見てられないわね。リーサさん行きましょう。あの隊長さんには家に連れて帰れと言われたけど、そこは危険よ。どこかの宿屋に泊まりなさい」

「でもっ! 姉さんが!」

「今はあなたの身の安全が大事なの!」

「いやっ! やだ! 姉さん!」


 あんな姉でも、大切な家族なんだろう。四人がかりで、なんとかナーサの遺体から引き剥がすと、路地の中へと入っていった。


 ドラントもこちらに近づこうとしている。目的は、もちろんナーサの遺体じゃない。


「リーサ! 安心してくれ! 君のお姉さんを殺した悪は必ず成敗される! 爵位についても心配ない! 君の家は俺が守る! 俺の嫁になってくれ! そうすれば君の家に爵位を与えられる!」


 それが狙いか。ナーサのことは最初から愛してなんかなくて、リーサと結婚するために邪魔だから殺した。その罪をヨナに被せることで、恥をかかされたことの復讐もする。リーサに恩を着せることで自分に惚れさせるとか、そんな魂胆もあるのだろう。


 けど計画が幼稚すぎる。顔を隠していても服装が変わっていないなら、人殺しが誰なのか目撃者がいればわかってしまうもの。それにリーサはドラントのことなんか好きじゃない。

 それがわからないのか、勝ち誇ったドラントはリーサに語りかけ続けた。人混みに紛れてリーサの姿は見えないだろうし、ドラント自身も兵士に囲まれて城に戻るよう促されている。


 ナーサの遺体の周りにも兵士が集まって、殺人事件の証拠として回収されていった。それを見ながら、アンリたちはリーサを連れて裏路地へと消えていった。


 お祭りは中止にするしかないだろうな。行き場を失ったセイホランの像は、立ち尽くしたように大通りに放置されている。


 細い路地で、放心しているリーサを建物の壁に寄りかからせるように座らせた。


「リーサさん。落ち着きましたか? 本当に、お姉さんのことは本当に残念です。殺したのはドラントで間違いありません。わたしは見ましたから」

「……ドラントは、どうして姉さんを」

「本命のあんたと結婚するためよ」

「どうしてそんなこと。許せない……」

「そうね。許せない。あいつは許されないことをした」

「はい! よりによってヨナ様に罪を着せるなんて! しかも権力を使って! 兵隊さんたちが逆らえるわけないじゃないですか! 許せません!」

「そうだなー。ヨナは今頃、ドラントをどう殺すか考えてるだろうな。……アタシたちにとっても、あいつは許せないな」

「ええ。あたしたち、ヨナくんに祝福をもらってない。神様に抱きしめてもらえるはずだったのに。許せないわ。ぶっ殺してやる」


 あ。それもあった。アンリだって、このお祭りはそれが楽しみだったのに。あの男のせいでぶち壊しだ。


 絶対に許さない。

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