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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-43.祭りの中で

 向こうは僕に気づいたらしい。


「あ! みんな見て! ヨナよ! おーい! こっちよ!」


 アンリが手を振って、他のみんなも僕を見た。こっちは服が普段と同じで、周りと比べて背が低いからわかりやすいよね。

 ティナもゾーラも控えめに手を振っている。


 リーサとナーサもいた。ナーサがいることはちょっと意外だったけれど、彼女なりに浮ついた街の雰囲気を楽しんでいる様子だった。

 ゾーラ以外はドレス姿だった。


 キアは普段と違う格好が気になるのか、少し居心地悪そうにしていて、ちらちらこちらを見ながらも自分が着ているドレスに目を向けていた。

 アンリはスカートの丈が短めの子供向けドレス。その格好でぴょんぴょん跳ねるものだから、裾がめくれて少し危ない。

 ティナは、綺麗だった。体型があまり出ないドレスは、全体的にスマートな体つきのティナにもよく似合っている一方で、普段とは全く違う印象を与える。


 それがあまりにも綺麗で、足が止まってしまった。


「ヨナ! 抱きしめて! 他の女の人がそうされてたの見たわ!」


 アンリは楽しそうだなあ。もちろんそうするつもりだけれど、誰からやるべきかが重要なのは僕も知っている。

 そして、僕の中では答えが出ていた。だから迷いなく歩み寄る。


 不意に、別の人影が僕とみんなの間に立ち塞がった。周りと比べて、随分と上等な服を着ている。だから通りを歩く他の眷属の中でも目立っていた。


 彼は手に木の枝を持っていなかった。代わりに腰に剣を差していた。


「危ない!」


 そう叫んだ僕の声は仮面のせいでくぐもって、あまり響かなかった。



――――



 仮面を被ったヨナの姿を、アンリはすぐに見つけられた。だから声をかけて、こっちに来てもらおうとした。けど、こちらの前に立ったのは別の眷属だった。

 いいのよ。眷属たちに祝福してもらうための祭りなんだから。でも、今じゃなくていいじゃない。ヨナがそこにいるんだから。後にしてよ。


 ヨナに抱きしめてもらってからなら、木の枝でパシパシ叩いていいから。


 それから、アンリはふと気づいた。その眷属が腰の剣を抜こうとしたことを。


 周りの人々は祭りのムードに飲み込まれて、それに気づいていない。

 ヨナを見ていて邪魔された、アンリたちだけが異変に気づいた。


 ティナももちろん同じで、アンリの胸に手を当てて後に押して距離を取らせながら、自分も鞄と一緒に持ち運んでいた剣に触れる。キアもゾーラも身構えていた。

 その横にいたリーサとナーサは、もちろんそんな動きはできなかった。



 仮面の眷属が抜いた剣は、ナーサの体をばっさりと切り裂いた。



 悲鳴が上がる。

 女たちが恋人が扮した眷属に抱きつかれて上げる、嬉しそうな悲鳴じゃない。悲痛なやつだ。


 ナーサの体がどさりと倒れて、周りの人たちは流血を見て大声を上げる。混乱はあたりに広まり、逃げ惑う人たちが入り乱れる。

 剣を振った男は、その人混みの中に消えていった。追いかけようとしたけど無理だった。


「ナーサさん! しっかり! しっかりしてください!」


 ティナが駆け寄って呼びかけているけれど、彼女の虚ろな目に光は戻らなかった。胸からお腹にかけてばっさりと切られていて、膨らんだお腹の中まで刃が到達しているようだ。

 リーサはその場で呆然と立ち尽くしている。キアがナーサの首筋に指をやって脈を見て。


「駄目だ。死んでる」

「そう……」

「いやぁ! 姉さん! どうして!?」


 その言葉を聞いた途端に、リーサは取り乱した。遺体にすがりついて呼びかけているけれど、もちろん反応はない。


 混乱の中で比較的冷静な人が、兵士を呼べと声をあげた。それから、ざわめきを鎮めるような声がもうひとつ聞こえた。


「俺は見たぞ! そこのガキが女を斬った!」


 聞き覚えがある声だった。ドラントだ。


 周りの視線がそちらに向く。城主の息子であることは把握しているらしく、みんな静まり返った。

 人混みの隙間からドラントを見る。さっきナーサを斬った眷属と同じ格好をしていた。だから本当は彼が人殺し。けれどそんなものは、他の誰も見ていない。


 ドラントが指差したガキっていうのは、ヨナだった。仮面を被っていた彼の姿がたじろいだ。多くの視線がそっちに向かう。


「嘘! ありえないわ!」


 アンリは即座に否定したけれど、ドラントはさらに声を張り上げた。あまりこういうのに慣れてないのか、声が裏返り気味だったけれど、それでも街の権力者。みんな聞いてしまっている。


「そのガキは異能持ちだ! 木の棒で人を殺す力を持っている!」


 ヨナは前にドラントの前でその力を使っている。そして今も、ヨナは木の枝を持っていた。


「それが何よりの証拠だ! あいつを捕まえろ!」


 駆けつけた兵士たちは、ドラントの言葉に逆らうわけにもいかず、数人でヨナを取り囲んだ。ヨナはといえば、仮面をつけたまま動こうとしない。

 下手に兵士に抵抗するのはまずいと考えているのだろうか。聖剣になる木の枝を持っているなら逃げられるかもしれないけれど、その後が困る。そもそもあの枝は聖剣になっていないだろうし。


「早く捕まえろ! そいつは人殺しだ! 早くしろ!」

「嘘つかないで! あんたが殺したんでしょ!」


 喚くドラントに、アンリは言い返した。キアたちは、なんとか助け出せないかと武器を手にしている。けど、抜けばこっちも狙われかねない。


「ヨナ逃げて!」


 こっちの声は聞こえているのかな。ヨナは動こうとしない。

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