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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-41.祝福する側、される側

「なあ。狼が近くにいた痕跡がある。注意してくれ」


 不意にそんな声があがって、僕は神々しい気持ちから現実へと引き戻された。


 言ったのは、毛皮を纏った男。この祭りに本気で臨むが故に眷属の正装をしてきた者……ではなくて、本職の猟師なのだろう。森に入って獲物を仕留めるのを生業にしている。

 毛皮は、戦利品を売らずに自分で取っておいたもの。せっかくだから眷属になりきろうって考えだ。


 いやそれより。


「狼?」

「ああ。糞と足跡がある。しかも新しい」

「そうか。ありがとう。みんな、周囲の警戒をしてくれ。森を出て練り歩くのを、少し早めようと思う。狼が来る前に森を出よう」


 ジェゾが準備会の面々に指示を出す。


 僕はといえば、気になって猟師に声をかけた。


「この森って狼がいるんですか?」

「ああ。そうだよ。時々街にまで降りてくる。城壁で区切られているから、外の森とは繋がっていないけれどね。だから群れがひとつ作れるくらいの少数だけれど、たしかに生息している」

「そうなんですか……」


 森の恵みには、そういうものも含まれているのか。


 狼が出てこないか警戒はするけれど、その気配はない。そもそも城壁の中の狼は、外で大量発生したのとは無関係な群れだ。人間の味を覚えているわけでもない、普通の野生。

 向こうも人が大勢いる前に不用意に姿を現したりはしないだろう。さほど心配するものでもない。


 そうこうしているうちに、祭りの準備が整った。準備会の男たちも、さっきの猟師も、その他一般参加の男たちも仮面を被る。色とりどりの斑模様がそれぞれ美しい。

 僕も仮面を被れば、眷属の仲間入りだ。


 眷属たちは森から取れる木の枝を使って、街の女たちに祝福を与える。周りにはいい感じの枝が多く落ちていた。葉っぱ付きの方が、ありがたみが強いらしい。


 普段は葉っぱが無いのを主に使ってるから変な感じだけれど、今日は戦うために拾うんじゃない。

 いくつも枝分かれしていて青々とした葉がついている枝を拾う。聖剣判定されたのか、体が熱くなる感覚がした。


 そのまま使うと危なすぎるから、一度落とした。再度拾った枝はただの枝となり、鋭い切れ味は見せない。我ながら、よくわからない仕組みの異能だ。 


「動かすぞ! せーの!」


 ジェゾの掛け声で、セイホラン像がゆっくりと動く。足元に車輪がついていて、大きな荷台に乗っている形のそれは、神が歩くというよりは滑るような動き。

 森の地面は凹凸があるから、振動で倒れないように慎重に動かしているようだ。しかしすぐに石畳の街の通りに出る。その周りには既に市民が集まっていて。


 像の登場と同時に歓声が上がった。


「セイホラン様ー!」


 そう声をあげる若い女。同じようなのが他にも大勢いた。


 僕たちはといえば、セイホラン像に続くように森から出た。


 沿道に人が集まっている。眷属が女だけを狙って、そちらに枝を振って軽く当てている。

 僕も真似してやってみよう。二十歳くらいのお姉さんの肩のあたりに、枝をペチンと当てる。もちろん切り裂いたりはしない。


「ありがとう、小さい眷属さん」


 お姉さんが微笑んでくれた。なんか、いいことした気分だな。自然と顔がにやける。


 ふと、悲鳴が聞こえた。そちらを見ると、眷属がひとり女に抱きついていた。女の方はきゃあきゃあ叫びながらも、逃げようとはしないし嫌がってもない。顔に笑みが浮かんでいる。

 周りを見れば、似たような光景が数件あった。ある眷属は、恋人らしき女を追いかけている。女の方も本気で逃げているわけじゃない。


 ある女は、目当ての眷属を探して背伸びしている。仮面を被ってるから誰が誰かわからないかと思えば、意外に見分けはつく。仮面の色彩はそれぞれ特徴的だし、服装は普段のままだし。ほら、恋人になりそうな男を見つけたらしい女が、それとなく手を振っていた。


 眷属たちはセイホランの周りにいることが推奨されるけれど、基本的には街を自由に歩いていいらしい。像よりも先行している眷属は大勢いた。集合場所の森にはいなかったけれど、祭りの始まりと同時に、街の中で仮面を被って眷属になる男も大勢いるとのこと。


 彼らは像からは離れた場所にいるし、こうすることで街中に眷属が溢れて多くの女が祝福されることになる。


 僕もまた、像からあまり離れないようにしながらも、先に行っては目についた女たちに枝を当てる。

 これだけのことなのに感謝されるのって、なんだか変な気分だな。けど嬉しかった。


 像は森から離れて大通りに入っていく。僕もそれについていった。この像がどんなルートを通って街中にその姿を見せるのか、僕はわかっていない。だからはぐれないようにしないとね。


 ティナたちが待ってる地点まで、あとどれくらいだろうか。



――――



「おいお前ら! さっさと行くぞ! なんか外が騒がしくなってきたし、像が近づいて来たんじゃねえか!?」

「えー!? 何言ってるんですかキアさん気が早いです! いえ気持ちはわかりますけど! ヨナ様に、早く抱きついてほしいですよね!」

「いや違うから! アタシはそういうの別にいいから! お前らと一緒にすんな。てか、準備にどれだけ時間かけてんだよ」

「キアさんだってドレス着てるじゃないですか!」

「お前らが無理やり着せたんだろ! てかゾーラは着てないのに、なんで時間がかかってんだよ」

「着替えよりもお化粧するのに時間がかかるものなのよ。ヨナくんに抱いてもらえるんだから、それくらいは気合い入れないと。体型に合うドレスがなくて残念だったわ。リーサさん、胸は控えめなのね」

「本人の前でそれは言うんじゃねえぞ。嫌味に聞こえるから」

「そうですよ。嫌味ですよ」

「あなたは逆に、胸がスカスカね」

「誰が貧乳ですか!?」

「ねえキア。おまつりに、もふもふも連れて行っていいかしら」

「やめておけ。外はすごい人通りだ。混乱が起きるから。あんなでかい馬、怖がる人が多いだろ」

「えー。かわいいのに。モフモフなのに」

「ほら。みんな準備できたな。リーサは?」

「あ、降りてきましたよ!」

「わぁ! 皆さん本当にお似合いです! わたしのお古しかなかったんですけれど、役に立ってよかったです!」


 ティナたちは、オーゲル家のクローゼットに眠っていたお古のドレスを使わせてもらい、普段よりも少しおしゃれな格好になっていた。アンリも子供用の、他所行きの格好をしている。


 キアはやる気なんかなかったのだけど、周りから押し切られてそうなってしまった。ヒラヒラな格好はどうも落ち着かない。


 普段と違う格好も、たまには悪くないとは思ったけれど。本当に少しだけな。

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