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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-34.恋愛事情

 そう。立っていた。


「もふもふに掴まり立ちしながら突き飛ばされた時、反射的に転ばないようバランスを取ったのね。人間の本能みたいなもの。それで立ち方を思い出した」


 起き上がったキアの手から果物を取ると、ゾーラはホイの前まで持ってきた。

 受け取って食べるかと思えば、ホイは口を動かしてそれをかじった。


「手の使い方は、これから学ぶことになるわね」

「でもすごいじゃない! ホイすごいわ! 人間に近づけたわね!」

「だなー。アタシのおかげかな」

「もふもふのおかげよ!」

「こら。ふたりとも喧嘩しない。次は歩く動作を覚えないとね。ホイ、右足をゆっくり前に出してみて。転んでも支えてあげるから安心しなさい。ほらキア、すぐに支えられるよう近くにいなさい」

「お、おう」

「わたしも手伝うわ! もふもふ、ホイの後ろで見てて。転びそうになったら服を噛んで止めて」


 こうして、女の子三人に両側と後ろを固められながら、ホイはゆっくりと歩き始めた。

 意外にうまい。本能でできちゃうのだろうな。


「この調子なら、手が掛からなくなる日も近いかもね」

「だな。なんとか、リーサたちの手間を減らせるようにしたいな」


 さっきまで言い合いをしていたけれど、ホイの成長にみんな笑い合った。



――――



 ティナと一緒に街の市場へ向かう。この街では、森から採れる木の実が多く食べられているらしい。海辺にあるガリエル公爵領みたいな海産物は、当然だけどこの街にはほとんどない。

 魚が腐らないように干したものは持ち込まれているかもしれないけれど、そういうのは商人が金持ちの所に直接持ち込む高級品だ。


 川が流れているから、川魚は穫れる。生食には向かないものらしくて刺し身は食べられないけれど、串に刺した塩焼きはあちこちで売っていた。


 せっかくだから食べよう。


「どうですかヨナ様」

「ちょっと苦いかも」

「ですよね。海の魚と何が違うんでしょう。お刺身はしょっぱいのに。やはり海がしょっぱいから?」

「刺し身の味付けの問題だと思う」

「そうですね! ……川は苦いから、川魚も苦いんでしょうか」

「水の味から離れようか。というか、別に苦くはないよね?」

「お父さん、こういうの好きそうです。お酒の肴に、苦味がある野菜の漬物を食べていたのを思い出します。大人になると苦さがたまらなくなるって言ってました」

「大人かー」

「はい。大人ですね」

「僕たちには、まだ早いかも」

「わたしもまだまだ子供だったんですねー」

「ティナは頼りになるけどね。それより晩ごはん」


 川魚の買い食いに来たわけじゃないからね。


 木の実にも色々あるな。果実類とかナッツ類とか。


「ナッツをパンに練り込んだら、美味しいかもしれませんね。食感もいい」


 帰ってパンを焼くつもりのティナ。得意だもんね。オーゲル家のみんなにも食べさせて、驚いてもらおう。


 というわけで、ナッツ類と小麦粉を買う。誰かは好きそうだと思って川魚の串焼きも数本買った。

 それから肉もいくらか。ちなみに鹿肉だ。この地域でも肉を得るための畜産は行われているけれど、森に覆われていて山がちだから、そんなに盛んではない。


 森の中で野生動物を狩猟する、つまりジビエが盛んだ。買った鹿肉もそうだし猪や熊なんかも城壁内の森に生息しているらしい。森の中の湖には鴨が群生していて、適度に餌をやって増やしながら捕る、半分養殖が行われてるそうだ。


「鹿肉って美味しんでしょうか」

「キアなら食べたことあるかも」

「あの人、もっと変なものばかり食べてませんか? トカゲとか」

「いつも食べてるわけじゃないよ」


 変な物も遠慮なく食べるだけだ。


 とにかく、買ってきた食材が入った布袋を持ってオーゲル邸に戻る。その途中、昨日セイホラン像を作った集会所の近くを通った。


「ヨナ様。あれ」

「うん」


 集会所で何かの準備をしていたのだろうな。それが終わった頃らしく、若者たちが外に出ていた。

 リーサとジェゾの姿もあった。距離が近いなあ。お互いに照れた様子で。相手のことを見つめたいけど恥ずかしくてできないって感じだ。


 仮面さえ被っていれば、赤面した顔を隠して相手を見れるのかな。


「あれで付き合ってないって、無理がありますよね」

「うん。あれは大人の恋の駆け引きなの?」

「いえ。自分の気持ちを伝えるのが恥ずかしいだけです。相手が自分をどう思っているのか探るという意味では、駆け引きですけど。もちろん、子供の情緒ではできないことです」

「ティナは詳しいね」

「いえ。そんなことは」

「ティナも、こういう恋をしたことがあるの? 誰かを好きになったりとか」

「わ、わたしですか!?」


 思ってたより大きな驚きの声が上がった。


「わわわ、わたしは、恋なんかしたことないです!」

「でも詳しいよね。どうして?」

「そ、それは……その……」

「?」

「お話しで読んだり。家族に連れられて行った演劇で、恋愛ものがあったりして。大人の男女の恋の話とか、そういうのを学びました。なので、その。本物の恋愛はしたことありません」


 本心を隠しているのは明らかだ。けれど、追求しても彼女のためにならないのも、わかっているとも。

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