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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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4-15.街の騎士たち

 ちらりとホイの方を見る。


 かなり驚いていた。それから落胆したような顔を見せた。


 言葉はわかるわけで。アンリが僕にかなりストレートな愛を伝えたことで、彼女の気持ちをわかってしまったのだろう。

 自分に対しては、単に親切にしていただけ。好意は他の男に向いている、と。


 アンリの意図はしっかり伝わっていた。しっかりすぎた。もう少しマイルドな方法で言うことだってできただろうに。アンリはそういうの苦手そうだもんな。


 ホイはうなだれて、こちらに背中を向けて寝転がってしまった。


「あれ? ホイどうしたのかしら。具合でも悪いとか?」

「かもね。今はそっとしておいてあげて」

「あー! アンリさんなにしてるんですか!? ヨナ様から離れてください!」


 ああ。ティナたちも来たな。そして抱きついているアンリを見て、血相変えて駆け寄った。


「子供には! そういうの! 早いです! なんかこう! もっと大きくなってから! やってください! 離れて!」

「やだー! やだ! 離れないもん!」


 アンリの体を掴んで引き剥がそうとするティナと、抵抗するアンリ。それから。


「そうよアンリちゃん。子供はそんなに簡単に、好きな相手を決めちゃ駄目。一生を愛する覚悟が、本当にあなたにあるの?」

「ゾーラの言ってること、全然わからないわ!」

「子供は簡単に、人に好きって言っちゃいけないってこと。ほら、ヨナくんも離れて」


 僕に背中から抱きつく。背中に、柔らかな感触が当たった。


「ふふっ。ヨナくんはあたしみたいな、年上のお姉さんが好きなのよねー? ほら、言ってみて? ゾーラが好きですって」

「さっき、子供は人に好きって言っちゃいけないって言ってなかった?」

「あたしたちは特別なのよ」

「なにが特別ですか!? ゾーラさんが一番! 不健全です!」


 建物の隅で打ちひしがれているホイなど、もはや誰も意識していない。なんなんだ。


「おーい。セイホレハの街から人が来たぞ。みんな静かにしろよ。事情とか聞かれそうだから」


 キアがやってきて、ティナたちは動きを止めた。


 鎧を着込んだ騎兵たちが何人も村に入っていくのが見えた。


「もう? 早いわね。明日になると思っていたわ」


 ゾーラが小さく、不思議そうに呟いた。


 キアが道の確認に行き、通りすがった旅人に事情を話したのは今朝のこと。それから僕たちは、狼の群れと戦ったりホイから話を聞いたりして、結構な時間は経った。もう日暮れだ。

 けど、やっぱり街が動くのが早いな。


 正規の道から、この村にたどり着く道に誘い込まれた分岐点からセイホレハの街までは、村ひとつを経由する。一日あれば着く距離とはいえ、報告を受けた軍が部隊を編成してここまで来るのには、どうしても時間が掛かる。

 確かに大事件ではあるけれど。


 見れば、到着した兵士はみんな騎乗していた。馬を飛ばしてまで来たわけか。


「何があったか事情を聞きたい。詳しい者は誰だ」


 兵士たちの指揮官らしき男が声をあげる。周りと比べて装備の意匠が豪華で、それなりの立場にいる者と思われる。

 彼は老人だった。六十代の終わりか、七十に達してるかも。兵士としてはもう一線を退くような年齢だが、声には張りがあって動きもしっかりしている。


 詳しい者か。僕たちを率いているのはザサール夫婦だけれど。


「あたしが話すべきね。一通り全部見ているわけだし」


 襲われて、話しを聞いて、神殿と呼ばれる建物も見た。ついでに狼退治もしたし、見えない所の推測もした。

 なによりゾーラは王都の学術院に所属している。立派な公的機関の人間の説明ならば、兵士たちもよくわかってくれるだろう。


「はぁい。初めまして。ゾーラと言います。こういう者ですわ。とりあえずの概要は、あたしが話します」


 学術院の職員証を見せれば、兵士や指揮官は感心した様子を見せた。



 僕たちの素性は、学者と一緒に旅をしている冒険者ということにして、見て聞いたことはすべて正直に話した。見てないけれど推測したことも、たぶん真実だとして話した。


「なるほど。わかった。後で個別に、それぞれに話を聞くから、そのつもりでいろ」


 指揮官は納得した顔を見せながらも、彼らの回りに集まっていた僕たちや商人一行に向けて言う。それは仕方ない。ゾーラの証言の裏を取ったり、見落としてる所があるか確認しなきゃいけないから。


 というわけで、個別に順番で呼び出されて、村の家を取調室にして兵士から事情聴取を受けた。僕はゾーラと一貫して行動を共にしていたから、そんなに突っ込んで聞かれることはなかった。冒険者とはいえ子供で、難しいことはわからないだろうって思われてるのかな。

 まあ、好都合だ。


 ところが一点だけ、彼らがやたらと気にしていたことがあった。

 村の家の何軒かで、女を地下に隠して子供を産ませていたということに関してだ。


 兵士たちはその事実が気になったらしく、それについて何度も聞いてきた。他の家には隠し地下室はなかったのか。地下室で他に何かみつけなかったか。

 なんだろう。捕まっていた女の中に重要人物でもいたかな。


 残念ながら、僕はその質問には答えられなかった。地下室を探したのは僕ではないから。そう答えれば、取り調べはすぐに終わった。

 後でみんなに訊けば、同じように地下室について訊かれたらしい。



「兵隊さん個人は、それについては興味はないって感じでした。上から要求されたから訊いてるだけ、みたいな」


 村の一角で地面に正座しているティナが僕に教えてくれた。なんでこの座り方かといえば、僕の頭を膝に乗せて膝枕しているからだ。


「いやなんでだよ!?」

「そうよ! なんでヨナにそんなことするのかしら!?」

「ヨナ様にお休みいただくためです! もう遅いので!」


 遅い時間なのは事実だ。取り調べを受けていたら、すっかり夜になってしまった。たしかに眠くなる時間だ。兵士たちが食料を持ってきてくれたから、夕飯は豪華だった。ただし建物は兵士が使っているから、寝るとしたら野宿だ。


 ここ数日、やるかもしれないと考えていた村の中での野宿が、ついに実現したわけだ。

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「ふふっ。ヨナくんはあたしみたいな、年上のお姉さんが好きなのよねー? ほら、言ってみて? ゾーラが好きですって」 ゾーラが好きです。
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