第22話_バレかけの、熱
木曜日の午後、プロジェクトの最終調整ミーティングが長引いていた。
私は資料をまとめながら、誠二と隣の席に座っていた。
表向きは普通の同僚同士の距離感を保っているつもりだった。
でも、誠二の足が、テーブルの下でそっと私の足に触れてくる。
(……今、ここで?)
私は慌てて視線を逸らした。
ミーティングが終わり、社員たちが部屋を出ていく中、誠二が小声で言った。
「香織、資料のコピー、取ってきてくれないか?」
「え? あ、はい」
私は立ち上がって、会議室の隅にあるコピー機に向かった。
誠二もすぐに続いてきた。
誰もいない廊下を少し歩いたところで、彼は私の手首をそっと掴んだ。
「誠二……! ここは危ないわ」
「わかってる。でも、お前が隣にいて、我慢できなかった」
彼は私を壁際に押しやり、身体を密着させた。
熱い息が耳にかかる。
「昨夜のこと、ずっと考えてた」
私は彼のシャツを掴みながら、周囲を警戒した。
「誠二、誰か来るかもしれない……」
「少しだけ……」
彼の唇が私の首筋に触れた瞬間、廊下の奥から足音が聞こえた。
二人は慌てて離れた。
通りかかったのは、隣の部署の先輩だった。
「あ、佐藤さん、長谷川さん。まだ資料の整理?」
「ええ、ちょっとだけ……」
私は笑顔で返した。
誠二もいつもの王子様スマイルで軽く会釈した。
先輩が通り過ぎたあと、二人は同時に息を吐いた。
「危なかった……」
私は胸を押さえながら、小声で言った。
誠二は私の手を握り、静かに言った。
「香織……もう、隠し続けるの、限界だ」
私は彼の真剣な目に、息を呑んだ。
「誠二……」
「オフィスでこうして触れ合うたびに、誰かに見られたらどうしようって思う。
でも、それ以上に、お前を堂々と俺の彼女だって言いたい」
私は彼の手に自分の手を重ねて、苦しそうに微笑んだ。
「私も……同じ気持ち。
でも、今バレたら、仕事に影響が出るかもしれない」
誠二は私の腰を引き寄せ、額を私の額にくっつけた。
「わかってる。でも、いつか……お前をちゃんと俺のものだって、みんなに知ってもらいたい」
私は彼の熱い視線を受けながら、そっと頷いた。
「もう少しだけ……待って。
このプロジェクトが終わったら、考えよう」
誠二は私の唇に軽くキスをしてから、苦笑した。
「約束だぞ。
我慢の限界が近いから」
私は彼のシャツを軽く掴みながら、小さく笑った。
「わかってる……誠二」
二人は少し離れて、普通の距離感に戻った。
でも、心の中では、確実に「もう隠しきれない」という熱が広がっていた。
(あと少し……この熱を、どうにかしないと)
(第23話へ続く)
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