第18話_夜の、独占欲
仕事が終わった夜、21時を回った頃。
私は指定された場所、駅近くの静かなカフェの奥の席に座っていた。
照明は落とされていて、夜の街の明かりが窓から少しだけ差し込んでいる。
誠二はすでに席に座っていた。
スーツのジャケットを脱ぎ、シャツの袖を少し捲って。
いつもの完璧な王子様の姿とは違う、少し疲れたような、でも熱を帯びた目をしている。
「遅かった」
私が座ると、彼は低く言った。
「ごめん。少し資料を片付けてて……」
誠二は私の手をテーブル越しにそっと掴んだ。
人目につかない位置で、指を絡めてくる。
「さっきの件……気にしてる?」
私は彼の指に力を込めながら、小さく首を振った。
「少しは。仕事の話だったのに……」
「わかってる。でも、俺は我慢できないんだよ」
彼の瞳が、じっと私を見つめる。
「お前が他の男に笑顔を向けてるのを見ると、胸がざわつく。
ゲームのときより、もっと強く」
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
私は彼の手に自分の手を重ねて、静かに言った。
「誠二さん……私はあなたのものよ。
仕事では普通に話すけど、心はもうあなただけ」
誠二は私の言葉を聞いて、少しだけ表情を緩めた。
でも、次の瞬間、彼は私の手を引いて、席から立たせた。
「ここじゃ話せない。
俺の車で、ちょっとだけいいか?」
私は頷いた。
車内は、夜の街の明かりが柔らかく差し込んでいた。
誠二は運転席に座ったまま、私を助手席に引き寄せた。
シートベルトを外した私の腰に腕を回し、顔を近づけてくる。
「香織」
名前を呼ばれただけで、身体が熱くなる。
彼の唇が私の唇に重なった。
車内という狭い空間で、キスはすぐに深くなった。
舌が絡み合い、息が混ざる。
彼の手が私の背中を撫で、腰を引き寄せる。
「ん……誠二さん……」
私は彼のシャツを掴みながら、必死に息を整えようとした。
誠二は私の唇を離すと、額を私の額にくっつけて、荒い息を吐いた。
「ごめん……少し熱くなりすぎた」
私は彼の胸に顔を埋めながら、小さく笑った。
「大丈夫……私も、嫌じゃない」
彼は私の髪を優しく撫でながら、低く囁いた。
「お前が俺のものだって、ちゃんと実感したかった。
オフィスじゃ我慢してるけど……夜は、こうして抱きしめたい」
私は彼の言葉に、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
「私も……あなたがそばにいてくれると、安心する」
誠二はもう一度、私の唇に軽くキスをした。
「これからも、こうして会おう。
誰にも知られないところで」
私は彼の首に腕を回し、そっと抱きついた。
「ええ……」
車内の空気は、甘く熱を帯びていた。
まだ秘密の関係。
でも、二人の想いは、確実に深まっていた。
(第19話へ続く)
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