第43話 ポイント債務超過からの救済! 裁定者ギルドの国際裁判と黄金フカヒレ姿煮スープ!
まいど! 前回のQ42の正解は「③ シュンちゃんが自ら吐き出す『魔力糸』を、ペンジの工場でガラスコーティングした『魔導光ファイバー』」だねぇ!
あんなに細くて切れやすい蜘蛛の糸を、ウチの職人たちが知恵を絞ってガラスで包み込み、爆速の光回線にしちまうなんてね。全く、ウチの連中の見事なコラボレーションは本当に大したもんさね! おかげさまで、全魔界の放送網を見事にM&Aして、ウチの美味しい電波と温かい歌声を世界中へ届ける無敵のインフラが完璧に整ったよ!
さてさて、情報も経済もガッチリと繋がって、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのウチの国無限連結国家群だけどさ。今回はちょっとばかり胸の痛くなるような、だけど絶対に放っておけない大事件が起きちまったのさ。
システムの冷酷な数字の計算によって「お前たちの国には存在価値なし」と冷たく判定され、国ごと丸ごと消去されそうになっている、か弱い小国の大ピンチさ!
いよっ! お待たせしました! ここで満を持してウチの芸人弁護士、アーサーさんの出番だよ! 法律の知識と、前世から鍛え上げた極上の笑いの力で、血も涙もない冷酷なお役所仕事を大爆笑の渦に巻き込んで、ひっくり返してやろうじゃないのさ!
【♪ 歓喜の法廷(アップテンポなビッグバンド・ジャズに、小気味よい裁判槌の木音がパーカッション代わりに弾ける昭和レトロ・ジャズ) ♪】
「さあて、冷え切った冷酷な法律も、おばちゃんの特製スープと笑いの力で、まとめて大逆転してやろうさねぇ!」
「……ちゅ、ちゅわあああああっ! これ、ただの経営難や赤字なんて生易しいレベルじゃないだちゅ! システムの中枢から、南の辺境にある【手工業とマスコットの楽園】『玩具共和国』に対して、恐ろしいシステム警告が発令されてるだちゅよ!」
メガロモールステーツ二階、中央モール事務所。
無数のモニターが並ぶ薄暗い部屋の中で、元商社マンのネズミ獣人・メッキーが、血走った目でAn-Padの画面を激しく叩きながら、毛を逆立てて悲鳴のような声を上げた。
彼の見つめるメインスクリーンには、禍々しいほどの真っ赤な警告ウィンドウが、脈打つように点滅を繰り返している。
「どうしたんすか、メッキーさん。魔導放送ギルドを無事に傘下に収めて、ウチの顧客生涯価値は過去最高を記録して、経済圏は絶好調のはずっすよ?」
元IT社長のゴブリン、サトルが、驚いた表情で淹れたてのコーヒーが入ったマグカップをデスクに置き、慌ててメッキーの背後へと駆け寄った。
サトルの視線の先で、メッキーは震える指で画面の一部を拡大表示する。
「ウチの国のデータじゃないだちゅ! 連携を打診していた玩具共和国のデータだちゅ!そこに住む、ピクシーやドワーフの子供、それに戦闘力を持たない非力な転生者たちの『徳ポイント』が、システムの一方的な評価基準のせいで大暴落してるだちゅ!」
「徳ポイントの大暴落……? まさか、あの理不尽な生産性評価スコアのことっすか?」
「そうだちゅ! 累積赤字……いや、ポイント債務超過に伴う『自動物理消去プロトコル』が、たった今起動しただちゅよ!」
メッキーが提示した画面には、不吉な真っ赤な文字で冷酷な宣告が映し出されていた。
『玩具共和国:存在価値評価・0点。維持コスト不要。15分後に全エリアの強制削除を実行』
戦闘力も生産効率も低いマイナー種族たちの命を、冷酷な閻魔システムは「データ上の不要なコスト」として、あっさりと削除しようとしているのだ。
「……最悪っすね。あっちの親玉、武力による制圧や、関税障壁による経済封鎖がウチらに破られたからって、今度はシステム自身が敷いた『法律』という絶対的な力で、弱い国を直接握り潰しにかかってきたっす」
サトルが悔しげに青い顔を歪め、ギリッと鋭い牙を噛み鳴らした。
自分たちには豊かな食料も、強大なインフラもある。しかし、システムが直接「法律」という名の暴力で存在そのものを消し去ろうとするなら、物理的な支援が届く前に彼らは消滅してしまう。
絶望的な空気が事務所を包み込んだ、まさにその時だった。
ガチャァッ!!
事務所の重厚なオーク材のドアが勢いよく開け放たれ、まばゆいばかりの白銀の甲冑に身を包んだ大柄な男が、マントを翻して颯爽と入ってきた。
「待たせたな、サトル社長、メッキー。……理屈と絶望を、極上の笑いに変える専門家の出番ですねぇ」
無限連結国家群が誇る裁定者ギルド。
かつては売れないお笑い芸人として苦汁を舐め、今は『正義の騎士』として法を司るギルド長、アーサーが、分厚い六法全書を小脇に抱え、不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「アーサーさん! 来てくれたんすね!でも、相手は魔界を管理するシステムそのものの法律、絶対規約っすよ!? 弁護士の交渉なんかで、どうにかなる相手じゃないっす!」
サトルの悲痛な叫びに、アーサーはフハハハと豪快な笑い声を上げて首を横に振る。
「フハハハ! 規約がなんだあ、あーりませんか! 前世で視聴率という冷酷な数字の裏ばかりを見て、評価という名の暴力に押し潰されてきたこの私を、舐めてもらっては困りますねぇ」
アーサーはガシャンと音を立てて甲冑の胸元を開くと、その中から、お笑い芸人時代の魂の相棒である『使い込まれた白いフリップボード』と、極太のマジックペンを取り出した。
「システムの冷酷な規約なんてものは、私の磨き上げたユーモアと、我が国の誇る絶対法『杏の掟』で、跡形もなく論破して差し上げましょう!大女将、法廷での戦いを終えた後の『まかない弁当』、腹ペコたち全員分の大盛りで頼みますよ!」
「ヒヒッ! 任せときな裁判ちょ! ウチの厨房は、どんなに冷徹な裁判官の胃袋だって一発で無罪放免にしてとろけさせる、特級のまかないを用意して待ってるからねぇ!」
窓際に立つ慈愛の始祖マリアンが、神々しい黄金の後光を背負いながら、巨大な金属製のお玉をビシッと天に向けて掲げ、頼もしい笑い声を響かせた。
管理都市と玩具共和国の境界線に位置する、冷たく無機質な大理石で覆われた「システム中枢法廷」。
そこには窓ひとつなく、ただ青白い魔導照明だけが、絶望に震える被告席を冷たく照らし出していた。
法壇には、黒いスーツを纏い、顔の半分が機械化された無感情なシステム執行官(AI検事)が立ち、冷徹な合成音声で判決を読み上げようとしていた。
『……対象エリア「玩具共和国」は、当システムが求める生産効率の基準を著しく下回る不良リソースと判定。累積ポイント赤字は100億を突破し、回復の見込みなし。これより、連邦内に存在する全生命データの消去を執行します』
法廷の傍聴席や被告席には、鎖で繋がれたピクシーや、ボロボロの服を着たドワーフの子供たちが、怯えて泣きながらお互いの身を寄せ合っていた。
彼らの足元から、徐々にデータが分解されるような青い光の粒子が立ち上り始めている。
「や、やめて……! ぼくたち、お腹が空いてて、力が出なかっただけなんだ……っ!」
ピクシーの少年が涙ながらに訴えるが、AI検事は微動だにせず、執行のハンマーを振り下ろそうとした。
その時である。
「――ちょっと待ったぁぁぁぁぁッ!!! 異議ありありやん!!!」
バァァァンッ!! と、法廷の巨大な両開きの扉を豪快に蹴り開け、アーサーが『不当判決!』と太字で書かれた白いフリップボードを高く掲げて乱入してきた。
『……警告。何者ですか。法廷内での非論理的な大声は制限されます。直ちに退廷しなさい』
「私は無限連結国家群裁定者ギルド長、アーサー! 本日は、このか弱く愛らしいマイナー種族の連中の『特別代理人』として参りましたぁ!」
『無限連結国家群?……理解不能。そのような国家データは存在しない」
アーサーはキリッと白銀の甲冑の襟元を正すと、AI検事の冷たい視線を受け止めながら、フリップボードのページを素早くバシッとめくった。
「検事さん、あなたの主張する『100億ポイントの債務不履行による強制消去』……システム的な計算としては満点ですが……わてらの笑いの沸点、いや、国際法の基準には1点も届かない、大スベりの三流コントですよね!」
『……不審なエラー。論理破綻。比喩表現の意図が不明。法的な説明を要求します』
「いいですか、よーく耳の穴をかっぽじって聞いてくださいよ! 本日午前8時00分、我が国無限連結国家群と玩具共和国との間で、正式な『魔界自由貿易同盟』の締結、および経済的な国際アライアンスが成立いたしました! サトル社長、An-Padからデータ同期よろしくです!」
アーサーは、左手で自分の鼻を摘み、右手はまっすぐに指先まで伸ばして突き上げ、シンクロナイズドスイミングのポーズを取って、周囲をざわつかせた。
「了解っす! 国際合意契約、システムの裏帳簿へ強制コミット完了っす!」
傍聴席に陣取っていたサトルが、猛烈な速度でAn-Padのキーボードを叩き込む。
その瞬間、黄金に輝く複雑な契約魔導陣が、法廷の空間にドカンと巨大なホログラムとして投影された。
「これに伴い、玩具共和国が抱える100億ポイントの債務は、我が国の強固な共通通貨である『いただきます通貨』によって、100%全額買収いたしましただちゅ! つまり、彼らの債権の完全相殺が今この瞬間に完了しただちゅよ!」
メッキーが黄金のダッシュボードを力強く叩くと、連邦の住民たちを縛っていた赤い赤字データが、一瞬にして純白のゼロへと上書きされていく。足元から立ち上っていた消滅の光も、スゥッと消え去った。
『……バ、バグ検知。システム外の非公式通貨による債務相殺は認められません。我々の規約上、彼らもその通貨も無価値です』
AI検事が機械的な声で反論する。
「規約規約って、どっちやねん! あなたの頭はカチカチに凍った冷凍大根ですかぁ!?」
アーサーは間髪入れずに次のフリップ『大根の絵』をバシッと叩き、法廷全体に響き渡る声で啖呵を切った。
「我がメガロモールステーツの最高基本法『杏の掟』第1条第1項!『お腹を空かせたはらぺこを、美味しい飯で一人残らず笑顔にする』!この掟は、玩具共和国が我が国と経済連結した瞬間、国際条約としてあなたの古臭いシステム規約の上位法へと昇華されたのです!」
『そ、そんな非論理的な法律が……』
「命をただの数字で測り、温かい飯も食わせずに一方的に消去する行為こそ、宇宙で最も醜く、笑えない重大な『規約違反』ですよ!!」
アーサーは、右手人差し指をAI検事に向かって突き出し、おなじみの『ギルティ―』ポーズでバシッと決めセリフを吐いた。
「ギルティ―!」
それまではシーンと静まり返っていた法廷だったが、今、傍聴席の大勢がその勝利のポーズに心から笑った。
『……ピ、ピ、ピピピッ! 論理演算、許容量オーバー! 規約優先度の上書きエラー、強制終了――』
ドゴォォォンッ!!!
サトルが強制同期したイタダキ・ポイントのデータには、メガロモールステーツの国民全員が美味しいご飯を食べて笑った『極大の感情エネルギー(重すぎる熱量データ)』が暗号化されて付帯しており、それがシステムの冷酷な論理回路の処理能力を限界突破させて焼き切ったため、AI検事の頭部から黒い煙が上がって完全に沈黙した。
「勝訴! いや、大爆笑の大逆転・完全勝訴だちゅよぉぉぉっ!!!」
メッキーの歓喜の叫び声と共に、法廷内は、救われたマイナー種族たちの歓喜の涙と、嵐のような拍手に包まれたのだった。
「みんな、本当にお疲れ様さね! 怖い思いをさせて悪かったねぇ。さあ、もう大丈夫。ウチの国が、あんた達のお腹も心も全部守ってあげるからね!」
冷たい荒野に建てられた裁判所の前に設置された、温かい湯気がもうもうと立ち上る特設の炊き出しテント。
第四形態の聖母マリアンが、満面の笑みで巨大なお玉を持ち、大鍋の重い蓋を開け放つ。
その瞬間、信じられないほど濃厚で、かつ高貴なスープの香りが、荒野の冷たい空気を一瞬にして黄金色に染め上げた。
「女将……これは、一体……っ。すごく、いい匂いがする……」
魔王軍最強の戦士ガロワの太い腕に抱えられ、まだ恐怖で震えていた玩具共和国のピクシーの少女が、うっとりとその大鍋を見つめる。
「ヒヒッ! システムの連中に『無価値な0点』だなんて切り捨てられそうになったあんた達にこそ、世界で一番贅沢で、一番元気が湧き上がる極上の温もりを食べて欲しかったのさね!」
マリアンが優しく微笑みながら差し出した、熱々の大きなどんぶり。そこにたっぷりと注がれていたのは――。
とろぉん……、ぷるるん……。
究極能力【概念調理】によって、単なる高級食材から「一口食べた者の、命の誇りと生きる喜びを10,000%蘇らせる奇跡の潤い」へと概念を書き換えられた、極上の『逆転勝訴の・黄金フカヒレ姿煮スープ』だった!
ベースとなるのは、白濁するまで強火でじっくりと数日間炊き出した幻の地鶏の鶏ガラと、熟成された金華ハムの極上スープ。そこに、神崎が付きっきりでアクと雑味を限界まで取り除いて完成させた、まばゆい黄金の清湯が見事なバランスでブレンドされている。
そしてその黄金のスープの海の中央には、職人の芸術品のように肉厚で、スプーンで軽くすくうだけでフルフルと妖艶に震える、特大の最高級フカヒレの姿煮が豪快に浮かんでいた。
「……いただきます……っ!」
子供たちが、そして生き残った玩具共和国の大人たちが、冷え切った震える手で黄金のスープを一口すすり、大きなフカヒレを口へと運んだ。
ほろり……、シャキ、ぷるんっ。
「――っっっ!!!!」
口の中に入れた瞬間、ゼラチン質の繊維の一本一本まで極上のスープの旨味をスポンジのようにたっぷりと吸い込んだフカヒレが、口の中で快感のようなハモりを残して、優しく、そして儚く解けていく。
コラーゲンの圧倒的なトロみと、身体の芯をカッと熱くする極上の温もりが、恐怖で冷え切っていた彼らの体内の血管を、猛烈な勢いで駆け巡っていった。
「美味しい……っ! 美味しいよぉ……っ! 私たち、生きててよかったんだ……!」
「ポイントが足りないからって、理不尽に消されそうになって……本当に、本当に怖かった……っ」
「アーサーさん、メッキーさん、マリアンさん、モールステーツのみなさん、本当にありがとうございました」
「しかも、こんなに温かくて、こんなに凄いお料理を、私たちのために作ってくれるなんて……っ!」
大人も子供も、極上のスープの温もりに包まれながら、大粒の涙をポタポタとどんぶりにこぼして号泣し、無我夢中でフカヒレを平らげていく。
「フハハハ!まじでギルティー! このスープの圧倒的な美味さは、完全にまかないの域を超えすぎですわ。わてらのハートの防壁を完全ハックする有罪ですねぇ!」
アーサーも甲冑を脱ぎ捨て、ボロボロと大粒の涙を流しながら、芸人時代のように豪快にフカヒレを貪り食っていた。
「大女将!玩具共和国の全加盟プロセス、滞りなく完了したっす!」
サトルが魔導板を誇らしげに叩き、ダッシュボードに投影された新しい魔界の、イコールアース図法で描かれた世界地図を指差す。
「『杏の掟』が、連邦加盟国の国際基本法として完全に同期されたっす。これにて、法の支配の拡大……システムに頼らない、完全なる『人情の法治国家ネットワーク』の開通っすよ!」
「おほほほほ! これでまた、わーしらの国に一緒にご飯を食べる美味しい『家族』がどっさりと増えちまったさね!」
マリアンの豪快で温かい笑い声が、青く晴れ上がった荒野の空へと、どこまでも響き渡るのだった。
最後まで読んでくれてありがとねぇ!
アーサーさんのフリップ漫談裁判、今回も冷たいお役所仕事をコテンパンに論破して、最高にスカッとしたさね!
システムの連中は「ポイントが足りないからお前たちはゴミだ」なんて冷たいこと言って、か弱い小国を丸ごと消そうとしたけれどさ。
お腹を空かせて、美味しいフカヒレを食べて「美味しい!」って涙を流して笑い合えるなら、それだけで誰もが100点満点、生きている価値がギッシリと詰まってるのさね!
これで『玩具共和国』もウチの大切な仲間になって、国際機構(WMF)の完成に向けて、また一歩大きく近づいたよ!
あんた達が画面の向こうでポチポチしてくれる「星(評価)」や「ブクマ」が、ウチの国の新しい法律(杏の掟)をさらに強くする最高の盾になるんだからね。
これからも全力の応援、よろしく頼んだよ!
システム(閻魔)からの出題【Q43:アーサーの逆転勝訴の秘密】
今回、アーサーさんが見事な論理ハックで、玩具共和国の「100億ポイントの債務超過」を帳消しにし、システム削除から小国を救い出した『法律&金融トリック』は何だったかな?
① システムのサーバーを、ペンジとガロワが特製コンロの熱量で物理的に焼き切った
② 裁判官の枕元に、マリアン特製の『黄金フカヒレ姿煮スープ』をそっと置いて買収した
③ 『魔界自由貿易同盟』の国際合意を締結し、債務をすべて『いただきます通貨』で全額買収・完全相殺した
「ヒントはねぇ、ウチの国の『新しい血液(共通通貨)』と、エリートたちが誇る最高のM&A戦略さね! さあ、あんた達ならもう、どれが正解かバッチリ分かってるよねぇ?」
「評価☆☆☆☆☆とブックマーク、特盛りのフカヒレをお皿にぷるぷる揺らして待ってるからねぇ!」




