第39話:黒鉄鉱山の咆哮! 資源独占打破と極上オイスター煮込み!
まいど! Q38の正解は「③ 現世の応援とシンクロした、『いただきます通貨』の物理化」だねぇ!
子供たちの純粋な感謝が、冷たいシステムの弾丸を溶かす盾になる……。数字至上主義の連中には計算できない、これが本当の「熱量」の正体さね。聖女セリアちゃんも、ようやく「数字のプロ」から「子供たちの先生」になれたみたいで、おばちゃんも鼻が高いよ!
さて、独自の経済圏を確立し始めたウチの国だけど、次なる課題は「資源」さね。
かつて、嵐の夜に熱々のラーメンの出前を届けた縁がある『黒鉄鉱山』が、管理都市の陰湿な買取停止で干上がってるって噂を聞いたんだ。
鉄がなきゃ、ミノさんの建設もペンジの工作も止まっちまう。
今日は、飢えた鉱夫たちを、伝説の家政婦さんもびっくりの「始祖のまかない」で救いに行くよ!
【♪ 鋼鉄のシンフォニー(重厚な金槌の音をリズムに、力強いトロンボーンが吼える昭和の労働歌風) ♪】
「さあて、冷え切ったツルハシも胃袋も、わーしの料理で真っ赤に熱してやろうかねぇ!」
メガロモールステーツがどれほど巨大になろうとも、鉄という『骨組み』が途絶えれば、国家の拡張は一瞬でフリーズしてしまう。二階の中央モール事務所では、メッキーが冷え切ったモニターを前に、凍りつくような表情でブツブツと独り言ちていた。
「どうしたんすか、メッキーさん。朝からそんなに耳を垂らして。何かヤバいトラブルでも起きたっすか?」
元IT社長のゴブリン、サトルがマグカップ片手に近づいてきた。中身はバウの農園で採れた特製焙煎コーヒーだ。その芳醇な香りでリラックスしようとしていたサトルだったが、メッキーの画面をのぞき込んだ瞬間、ゴブリンの緑色の肌がサァッと青ざめた。
「鉄だちゅ! モールを拡張するための鋼材も、ペンジさんが造る精密機械のパーツも、在庫が完全に底を突きかけてるだちゅ! システム側がウチへの『戦略物資の供給停止』を周辺国家に強制し始めたんだちゅよ!」
「……マジっすか。経済封鎖の第二段階、ってやつっすね。あっちの親玉、なかなかにエグい手を打ってくる」
サトルの顔が険しくなる。現在、メガロモールステーツの建築資材の八割は、ここから北西に位置する『黒鉄鉱山国』からの輸入に頼っていた。高品質な鉄鉱石を産出するその鉱山は、モールの発展には欠かせない心臓部の一つだ。だが、黒鉄鉱山で働くドワーフやオークの鉱夫たちが、管理都市からの「買取停止」という非道な脅しに屈し、経済的に自死寸前の状態に追い込まれているというのだ。
「あそこの鉱夫たちは、命懸けでエネルギーを支えてきた職人集団だちゅ。なのにシステムは、鉄の価値を暴落させて、彼らに飯すら与えようとしないだちゅ! これじゃウチへの鋼材の供給ルートも完全にストップしちゃうだちゅよ!」
メッキーが机をドンと叩く。彼の目には、理不尽なシステムへの怒りの涙が浮かんでいた。
「……フム。システムの買取停止による兵糧攻め、すなわち『人権侵害のプロトコル』か。ポイントを持たざる者を容赦なく切り捨てる、あいつららしい冷酷なマニュアルだな」
猫獣人のジッジーが冷静に状況を判断し言葉にした。
「要するに!」
ピシィィン!
突然、床を打つ鋭い金属音が、事務所の張り詰めた空気を一刀両断した。
サトルとメッキーがビクッと肩を揺らして振り返る。そこには、背中に神々しい黄金の後光を背負い、ふっくらとした聖母のような姿となった第四形態のマリアンが立っていた。彼女の右手には、愛用の巨大な金属製のお玉がしっかりと握られている。
「鉄がないなら、直接買い付けに行けばいいんだろ? 相手が困ってるってんなら、なおさらさね! あの嵐の夜、ウチの特製ラーメンを啜って『美味い、美味い』って大粒の涙を流した連中を、おばちゃんが見捨てるわけないじゃないか!」
「マリアンさん! ……でも、あそこは今、管理都市の監視ドローンが大量に目を光らせている超危険地帯っすよ! 下手に近づけば、蜂の巣にされる可能性だってあるんす!」
「ヒヒッ! だったらこっちも『プロ』を連れて行くさね。システムがなんだってんだい。うちらの胃袋と人情の繋がりは、あんな鉄クズのドローンなんかに断ち切れるもんじゃないよ!」
マリアンが力強くお玉を突き上げると、事務所の奥から頼もしい声が響いた。
「了解しました、マザー。鉱山までの最短ステルスルート、すでに演算完了しています。システムの監視網にジャミングをかけ、一瞬の隙を突いて突破します」
「いつでもいけますよ! 大女将の飯を待ってる奴らがいるなら、ドローンなんて全部この足でぶち抜いて走りますから!」
インフラ統括のシュンが八つの複眼を光らせ、ウサギ獣人のウサミチが自慢の脚力をアピールするようにその場で高く跳躍する。
マリアンの号令の下、メガロモールステーツ初の「資源獲得部隊」が電撃的に結成された。
砂塵が舞う荒野を、一台の巨大な車両が猛スピードで爆走していた。
ドワーフを束ねるオークの鍛冶師、ペンジが極秘裏に改造を重ねた『連結式魔導トレーラー』である。漆黒の装甲に覆われたその巨体は、シュンの放つ光学迷彩フィールドによって周囲の景色に溶け込み、空を飛び交う管理都市のドローンの監視網を見事にすり抜けていく。
「見えたっす! あれが黒鉄鉱山……って、なんて酷い有様っすか……」
助手席に座るサトルが、モニター越しに映し出された光景に息を呑んだ。
かつては活気に満ち、昼夜を問わずツルハシの音とトロッコの走る音が響き渡っていた黒鉄鉱山の入り口は、今は完全に死に絶えていた。
積み上げられた高品質の鉄鉱石は行き場を失って放置され、錆びた線路には赤い塵が虚しく積もっている。そして何より痛ましいのは、坑道の入り口で力なくうなだれている鉱夫たちの姿だった。
全身が煤で真っ黒になった屈強なドワーフやオークの男たちが、地面にへたり込み、虚ろな目を宙に向けたままでピクリとも動かない。
「……もう、限界だ。ポイントも尽きた。これじゃ、ツルハシを振るう力も出ねぇ……」
鉱山長を務める大男のオーク、ガノンが、枯れ果てた声で呟いた。彼の手元にある魔導板の画面では、生命線であるLPポイントが赤く点滅し、今にも完全に消えようとしていた。
管理都市は「鉄の価値はゼロになった」と一方的に宣言し、彼らから労働の対価も、食料を買う権利すらも容赦なく奪い去ったのだ。
「……俺たちの誇りだったこの腕も、この鉄も、システムにとっちゃただのゴミだって言うのかよ……」
ガノンの瞳から、絶望の涙がこぼれ落ちた。
「勝手に価値をゼロにするなんて、誰が決めたんだい!」
突如、静まり返った荒野に響き渡る、快活で力強い声。
ズザァァァァァッ!! と凄まじい砂煙を上げて、虚空から突如として巨大な魔導トレーラーが姿を現し、鉱夫たちの目の前で急停車した。
「な、なんだ!? 誰だお前たちは……! 管理都市の執行部隊か!?」
ガノンが残された力を振り絞って立ち上がろうとする。しかし、トレーラーのドアが開き、そこから降り立った人物の姿を見て、彼は信じられないというように両目を見開いた。
「忘れちまったのかい? あんたたちの空きっ腹に、一番最初に『杏』の熱々スープを流し込んだのは、わーしらさね!」
「あ、あの時の……! いや、あの時は芋虫みたいな魔物だったはず……なのに、今はなんて神々しい、まるで女神のようなお姿に……」
「姿なんてどうでもいいのさ! ほら、文句を言う前にこれを見な!」
マリアンが合図をすると、トレーラーの巨大なコンテナがプシュゥゥと音を立てて開け放たれた。
その瞬間、鉱夫たちの口から一斉に「おおおっ……!」というどよめきが漏れた。
コンテナの中に積まれていたのは、五色商会の流通網を通じて仕入れられた、COTCOブランドの規格外サイズの巨大な食材の山だった。
「メッキー! 商社の意地、見せときな!」
「ちゅっ! 任せるだちゅ! 資源独占を打破するのは、圧倒的な『直接取引』だちゅよ!」
メッキーが素早くAn-Padを取り出し、ガノンたちに新しい経済圏の提案を突きつけた。
システムのポイントを一切介さない、独自の経済条約。彼らが掘り出した鉄鉱石と、メガロモールステーツの『いただきます通貨』の直接交換。
そして、そのポイントで今すぐ手に入るのは――極上の「まかない」だ。
「さあて、シマちゃん! 仕込みは任せたよ!」
「はい、お任せください、大女将!」
マリアンの威勢のいい掛け声に応じたのは、割烹着姿の神崎――ではなく、エプロンの紐をキリッと締め直した小柄な女性、シマだった。
彼女こそ、マリアンが「どんな余り物でも一瞬で極上のまかないに変える天才」と見込んで、先日、管理都市のポイント搾取で倒れていたところをマリアンが拾った新しい厨房スタッフ。前世は地球で、数々の多忙な家庭を救ってきた『伝説の出張家政婦』としての記憶を持つ転生者だ。
神崎のような格式高い宮廷中華の技法とは対極にある、冷蔵庫の残り物やありふれた業務用食材をアイデア一つで化けさせる「生活の知恵(即興アレンジ)」こそが、彼女の最大の武器である。
ドンッ!と巨大な木製まな板の上に置かれたのは、メッキーがCOTCOの業務用ケース仕入れで大量に余らせ、デリバリー倉庫に眠らせていたという、枕ほどもある分厚い塊のままのベーコン。
そして、コボルトのバウさんの農園から今朝届いたばかりの、泥がついたままのみずみずしい大根だ。
「大根は皮の近くに旨味が詰まっていますから、あえて皮は剥かずに、大きめの乱切りで味が染み込みやすいように隠し包丁を入れます。ベーコンの脂を吸わせるための、最高の『相棒』に仕立てますね!」
トントントントントンッ!!!
シマの手から繰り出される、目にも留まらぬ包丁さばき。大根が正確に、かつ豪快な乱切りにされていく。
それを見届けたマリアンが、ふっくらとした聖母のようなしぐさで、ニヤリと笑って巨大なお玉を掲げた。
「ヒヒッ、いいねぇ!これぞ現場の知恵さね!それじゃあ、わーしの熱量もまとめて、この大鍋に注ぎ込んでやるよ!」
マリアンの究極能力【概念調理】が、シマの即興アレンジと完全にシンクロし、起動する。
≪♪ ピキィィィィンッ! 荘厳にして不可侵な『天の声』が響き渡る ♪≫
『 告。究極能力【概念調理】起動。
――対象:大根。定義を「野菜」から「すべての旨味を吸収する黄金のスポンジ」へ書き換え。
――対象:ベーコン。定義を「保存食」から「生命を繋ぐ脂の奔流」へ書き換え 』
ジュワァァァァァァァッッッ!!!
マリアンが熱した極厚の巨大鉄鍋の中に、シマが分厚く切り分けたベーコンが投入され、猛烈な音を立てて焼かれ始めた。
じっくりと燻製された上質な豚の脂が溶け出し、スモーキーで野性味あふれる香りが、死に絶えていた鉱山全体を暴力的なまでに包み込んでいく。そこへ、シマが乱切りにした大根が山盛りに投入された。
「水は一滴も入れないさね!大根自身の水分と、この極上のオイスターソース……そしてあんたたちの鉄への誇りを、まとめて煮込んでやるんだよ!」
マリアンの持つ巨大なお玉が、まるで光の軌跡を描くように鍋の中を躍る。
味付けはコク深いオイスターソースと、隠し味にほんの少しの砂糖、そして香り付けの紹興酒だけだ。 だが、マリアンの概念調理によって「煮込む」という時間の概念が書き換えられ、通常なら数時間はかかるはずの琥珀色の輝きが、一瞬にして大根の芯まで深く、深く染み込んでいく。
グツグツ、トロォォォ……ッ!!!
鉄鍋の底で、飴色に透き通った大根が、ベーコンの極上の脂を限界まで吸い上げてジュウジュウと震えている。
水を使用せず、大根そのものの水分だけで煮詰めたからこそ生み出される、濃縮された甘辛く香ばしい匂いが、鉱夫たちの理性を完全に吹き飛ばした。
「……なんだ、この匂いは。胃袋が……俺たちの魂が、震えてやがる……」
「腹が減った……死ぬほど腹が減ったよぉ……!」
飢えでツルハシを握る力すら失いうつむいていたドワーフやオークの鉱夫たちが、一人、また一人と、匂いに引き寄せられて、ゾンビのようにふらふらと長机の周りへ集まってくる。
マリアンは、湯気が立ち上る大皿をドカンと長机に置いた。
「はいよ!お待たせ!『鉱夫に捧ぐ・厚切りベーコンと大根の極上オイスター煮込み』さね!シマちゃんの知恵と、わーしの熱量がたっぷり詰まった極上の一皿、熱いうちにハフハフしながら食いな!」
鉱山長のガノンが、震える手で割り箸を割り、器に盛られた大根とベーコンに手を伸ばす。
飴色に透き通った大根を、震える口に運び、一口噛んだ瞬間――。
「…………っ!!」
彼の脳内で、旨味の爆弾が爆発した。
ベーコンの暴力的な肉の旨味と燻製の香りが、大根の優しい甘みと完全に融合している。濃厚なオイスターソースの海の中で、それらは完璧な調和を保っていた。
水を使わずに煮込まれた大根は、口の中で雪のようにホロホロと溶け、ベーコンから溶け出した極上の脂が喉を通り抜けるたびに、冷え切っていた細胞の一つひとつに強烈な「火」が灯っていくのがわかる。
「美味い……! なんだこれ、めちゃくちゃ美味いぞ!! 脂っこいはずなのに、大根が全部の旨味を受け止めてて、いくらでも食える! こんな、こんな温かくて力になる飯……俺たちは、何のためにシステムに媚びて、飢えに苦しんでいたんだ!」
ガノンの目から、今度は絶望ではなく、歓喜と感動の大粒の涙が滝のように溢れ出した。
他の鉱夫たちも我を忘れて鍋に群がり、泣き叫びながら、咽び泣きながら、大根とベーコンを胃袋に流し込んでいく。
「ガハハ! 美味いだろ! 遠慮しなさんな、おかわりはいくらでもあるよ! その熱い脂は、あんたたちの明日のエネルギーさね!」
マリアンが巨大なお玉を高く掲げ、涙と汗と油で顔をクシャクシャにしている全鉱夫に向けて宣言した。
「聞きな! 管理都市の親玉が、あんたたちの鉄をゴミだと言うなら、わーしらが『ダイヤモンド』以上の価値で買ってやるよ! その代わり、その鉄でウチのモールをさらにデカく、頑丈にしな! 誰にも邪魔させない、わーしらとあんたたちの、最高の『城』をさ!」
「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉッッッ!!!」」」」
鉱夫たちの怒号のような歓喜の咆哮が、地下深くの岩盤まで届かんばかりに響き渡った。
地響きと共に、彼らの死んでいた瞳に、ギラギラとした「職人のプライド」が完全に戻った。
「ちび女将……いや、マザー・マリアン! 俺たちの鉄、俺たちの命、すべてあんたに預けるぜ! 管理都市のクソみたいなデータなんて知ったことか! 俺たちの『いただきます』は、今日からこの味だ!」
その瞬間、メッキーが持っていた魔導板のグラフが、あり得ない角度で天を突くように跳ね上がった。
「サトル社長! 資源エネルギー加盟、完了だちゅ! 黒鉄鉱山国が『国際モール機構』の第一号メンバーとして、完全にウチと連結されただちゅよ!」
「最高っすね、メッキーさん。システムの資源独占、たった一皿の煮込みで完全突破っす!」
夕焼けに赤く染まる荒野の鉱山に、再び力強いハンマーの音が響き始める。カンッ、カンッというその音は、まるで新たな時代の幕開けを告げる鐘のようだった。
メガロモールステーツを中心とした国際機構の芽が、今、鋼鉄の誇りと共に力強く芽吹いたのだった。
まいど! 最後まで読んでくれてありがとねぇ!
黒鉄鉱山の男たち、見てて気持ちがいいくらいの食べっぷりだったねぇ。
管理都市の連中は「鉄の価値が下がった」なんて偉そうに言ってるけど、現場で汗水垂らして何かを造り出す連中の価値は、絶対にゼロになんかならないのさ。
ベーコンの旨味をスポンジみたいに吸い込んだ大根みたいに、うちらも周りの仲間たちの想いを全部吸収して、さらにデカくて強い国になっていくからね!
さて、鉄を手に入れて無敵になったウチの国だけど、その強大な資源を狙って、今度は「あの物騒な連中」が動き出したみたいだよ。
次回は、お腹を空かせた最強の軍団が登場! 剣を包丁に持ち替えさせてやるからね!
システム(閻魔)からの出題【Q39:大根が旨味を吸った秘密】
今回、マリアンが大容量のベーコンと大根を調理する際、一滴も水を入れずに大根を「黄金のスポンジ」に変えた裏技(ひと手間)は何かな?
選択肢は次の三つさね。
① 魔法の力で大根の分子構造を無理やり広げた。
② 大根を事前に冷凍し、組織を壊して味が染み込みやすくした。
③ ベーコンの脂だけで大根をコーティングし、旨味を閉じ込めた。
「ヒントはねぇ、忙しいお母さんや伝説の家政婦の志摩さんなら当たり前にやってる『下準備』さね。
さあ、あんた達ならもう、どれが正解かバッチリ分かってるよねぇ?
応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、今日も全開でよろしく頼むよ! おかわり用意して待ってるからね!」




