第35話 魂を揺さぶる炊き出し! 勇者の逆襲と慈愛の豚汁!
まいど! Q34の正解は「③ 厳しい取り立てで恐れられた『国税局員』マルサの女」だねぇ!
数字の裏に隠された嘘を暴くプロ中のプロ。システムの冷たい計算なんか、彼女にかかれば
丸裸さね!
さて、一杯の塩ラーメンで「社畜の仮面」を脱ぎ捨て、ウチの『特級内部監査官』になった
アレン。彼が深夜にもたらしたのは、管理都市が低ポイント住民数千人を「不要なリソース」
として明朝に一斉消去するという、耳を疑うような恐ろしい情報だった。
効率やポイントのために命をデータみたいに消す? そんなふざけた話、下町のおばちゃんが
許すわけないだろ!
今回は、管理都市の喉元まで突っ込む決死の大まかない! 踏みにじられてきた者たちによる、
魂の逆襲の開幕さね!
【♪ 逆襲のマーチ(勇壮なトランペットと和太鼓が交差する、反逆の昭和熱血ソング) ♪】
「さあて、冷え切ったシステムの壁を、熱々の豚汁と人情でぶち壊しに行こうかねぇ!」
「緊急事態です。システムの『一斉消去』プロセスが、明朝6時に実行されます」
深夜のメガロモールステーツ、二階の中央事務所。特級内部監査官に任命されたばかりの
アレンが、血相を変えてサトルたちに報告した。
「一斉消去……? 何を消すって言うんすか、アレンさん!?」
サトルが魔導板を叩きながら目を丸くする。
「管理都市の周縁部にある第9スラム区画です。そこに住む数千人の低ポイント住民が、
『維持コストの無駄、不要なリソース』として、区画ごとシステムから物理的に削除される。
昨日までの私なら、それを『効率化の代償』として見過ごしていたことでしょう」
アレンの言葉に、事務所の空気が凍りついた。
「ちゅっ!? 数千人の命を、ただのデータみたいに消去するだちゅか!?」
メッキーのネズミ髭が怒りで震える。
「それがシステムの『正義』です。彼らにとって、利益を生まない住民はバグと同じだ。
……ですが、今の私は違います」
アレンは強く拳を握りしめた。
「マリアンさん。特級内部監査官としての私の初仕事……彼らをシステムから奪い返し、
救うための作戦を提案させてください。これは、俺を飼い殺しにしてきたあの街への、
『禊』です」
ピシィィン! と、床を打つお玉の音が響く。
背中に翠色の大きな羽根を揺らした第3形態【極楽厨房の饗食天使】
のマリアンが、仁王立ちでアレンを見据えていた。
「作戦もクソもないさね! 腹を空かせて震えてる連中がいるなら、温かい飯を食わせに行く!
それがわーしらの商売の基本だろ!」
マリアンは振り返り、事務所に集まった仲間たちに号令を飛ばした。
「サトル、メッキー! 食材の在庫をありったけ出しな!
ジッジーさんは自警団を、ガロワは冒険者ギルドの連中を叩き起こして護衛に回すんだよ!
ウサミチとシュンちゃんで、大鍋を運ぶ最速ルートを確保しな!」
「「「了解っす(だちゅ・おうよ)!!」」」
「神崎さん! 今回のメニューは決まってるね! 冷え切った心を芯から温める、
極上の『豚汁』と『塩むすび』だ!」
「御意!!」
白の割烹着を着た神崎玲二が、すでに厨房で巨大な鉄鍋に火を入れ始めていた。
午前5時30分。
夜明け前の荒野を、メガロモールステーツの「救済の炊き出し部隊」が猛スピードで進んでいた。
ペンジが溶接で補強した巨大な牽引車には、グツグツと煮えたぎる豚汁の大鍋が積まれている。
「アレン、前方の空間が歪んでいる! システムの干渉だ!」
猫獣人のジッジーがモニターを睨みながら鋭く叫んだ。
「私が解除コードを打ち込みます!
シュン、私の端末のパケットを光ファイバー通信網で最前線に飛ばしてくれ!
管理都市のロジック、俺の指でハックしてやる!」
「了解です。ルーティングを最適化します」
アレンの高速タイピングとシュンのネットワークが融合し、管理都市が張った不可視の障壁を
次々と突破していく。かつては防衛のために使っていたエリートの知見が、今は侵略を阻む「盾」
ではなく、理不尽な支配を打ち破る「逆襲の矛」へと変わっていた。
やがて、灰色の高い壁に囲まれたスラム区画が見えてきた。
そこには、絶望の表情でうずくまる数千の魔物や転生者たちの姿があった。彼らの頭上には、
赤く点滅する『削除対象』というホログラムが浮かんでいる。
上空には、冷徹な光を放つシステムの執行官たちが無数に浮遊し、デバッグのカウントダウン
を無機質に進めていた。
「そこまでだよッ!!」
ズドォォォン!! とスラムの中心に砂煙を上げて停車したのは、ペンジが突貫工事で溶接補強
した巨大な『連結式魔導トレーラー』だった。
呆然とする執行官たちの前で、トレーラーの荷台から異様な集団が飛び出した。
狼獣人のガロワ率いる冒険者ギルドの精鋭たち。彼らは夜明け前だというのに全員が真っ黒な
サングラスをかけ、その上には重厚な黒い革ジャンを纏っていた。
「おい、機動炊き出し班! 1ミリの不備も出すな! 釜に火を入れろ!」
ガロワの怒号が響く。彼らはトレーラーが完全に止まる前に次々と飛び降り、ペンジ製の
特大コンロをミリ単位の精度で設置していく。その動きはまさに、かつて現世で見た
「伝説の軍団」そのものだった 。
「団長、第1から第5大鍋、着火完了!」
「配給開始まで、カウント5……4……3……2……1……GO!!」
マリアンの合図と共に、野郎たちが一斉に大鍋の蓋を開け放った 。
ブワァァァァァァッ!!
その瞬間、強烈な湯気と共に、味噌と根菜、そして豚肉の甘い香りがスラム全体を暴力的に
ハイジャックした。
「さあ、みんな遠慮せずに並びな! 特製の豚汁と、わーしらが握った塩むすびだよ!」
「な、なんだお前たちは!? 許可のないエリアでの炊き出しは禁止だ!」
空から警告する執行官たちに対し、サングラスを光らせたギルドの面々が、巨大なお玉を
ショットガンのように肩に担いで立ち塞がった。
「どきな。俺たちは客にメシを食わせるのに忙しいんだ。……怒るぜッ!」
隻眼の竜人・ザンが革ジャンの袖を捲り、かつての「Boss」さながらの風格で執行官を睨み
つける。その圧倒的な「プロの殺気」に当てられ、冷徹なはずの執行官たちが思わず怯んで後
ずさった。
彼らに生まれたその僅かな隙に、絶望してうずくまっていた住民たちが一人、また一人と
温かい飯を求めて立ち上がり始めた。
「い、いい匂いだ……」
「豚汁……前世の冬に、母ちゃんが作ってくれた、あの匂いだ……」
「チィッ! 削除対象が勝手に動くな!
ええい構わん、隔離プロトコルを省略しろ! 力ずくで制圧だ!」
焦りを見せた執行官たちが、一斉に住民たちへ向けて魔力砲の発射態勢に入った。
「させないぜッ!!」
狼獣人のガロワ率いる冒険者ギルドの面々が、即座に武器を掲げて執行官の前に陣取る。
「俺たちの居場所を、温けぇメシを教えてくれた大女将の邪魔はさせねぇ!
ジッジーの旦那、指示をくれ!」
「各員、防犯プロトコル・フェーズ3! 一人の死傷者も出すな。盾となれ!」
ジッジーの号令で、自警団と冒険者ギルドが完璧な連携で防御陣形を敷き、執行官たちの攻撃を
弾き返していく。
その防壁の内側で、炊き出しが始まった。
「ほら、熱いから気をつけて食べなよ」
マリアンが手渡したお椀を受け取り、住民たちが一口すする。
「……っ! う、美味い……!」
大根、ニンジン、ごぼう、こんにゃく。モール内の農業区画で、泥臭く育てられた野菜の甘み
が、味噌のコクと豚肉の脂と絡み合い、冷え切った胃袋を猛烈な勢いで満たしていく。
そして、マリアンが両手でギュッと愛情を込めて握った塩むすび。米粒一つ一つが立ち、絶妙
な塩加減が豚汁の旨味をさらに引き立てる。
「うわぁぁぁん……! 美味いよぉ……生きててよかったぁ……!」
その光景を見て、上空の執行官が冷笑した。
「無駄なことを。間もなく午前6時。デバッグが始まれば、そいつらも豚汁ごと消え去るのだ。
アレン! 貴様、エリートの地位を捨てて、そんな無価値な連中の肩を持つか!」
豚汁を配っていたアレンが手を止め、元同僚の執行官を真っ直ぐに睨み返した。
「無価値だと……? お前たちの目は節穴か!」
アレンの怒号が響き渡る。
「数字と効率だけで人間を測るお前たちこそ、何一つ生み出していない!
数字でお腹は膨らまないんだよ! これは、俺たちがシステムに飼われる
『いい子ちゃん』をやめるための、最初で最後の逆襲だ!!」
アレンがマリアンの言葉を借りて一喝した瞬間。
ピコーン! ピコーン! とサトルの魔導板が、異常な数値を叩き出した。
「サトル社長! 現世からのアクセスが爆発してます!
視聴者の『評価(☆)』と『ブックマーク』の応援バフが、カンストを超えてシンクロしてるっす!」
「なんだと!?」
住民たちの「生きたい」という強い意志と、アレンの魂の叫び、そして現世からの圧倒的な
応援が完全にシンクロし、物理的な光の柱となってスラム全体を包み込んだ。
『警告。対象エリアの熱量が、システム許容量を突破。デバッグプロセス……エラー……強制終了』
「ば、馬鹿な!? システムの理が、たかが炊き出しの熱量で書き換えられたというのか!」
執行官たちが狼狽する。
「フフッ。当然の結果です。
不正な裏帳簿で命を弄ぶような真似、この私が許すとでも?」
執行官たちの背後から、凛とした声が響いた。
純白の修道服に身を包んだ、銀髪の美しい女性。勇者パーティの『聖女』セリアだ。
「セリア!? なぜお前がここに!」
「アレンが抜けたパーティなんて、ただの泥船ですから。
それに……彼が『本当の自分』を取り戻した場所の帳簿、少し興味がありましてね」
聖女セリアは、手にした水晶板を指で弾く。
「管理都市の第9区画の維持コスト、および不正に中抜きされていた権力者たちの隠しポイント
をすべてハッキングし、メガロモールステーツのインフラ予算へと転用……。
いえ、マルサの女による『逆襲の強制執行』として差し押さえさせていただきました。
脱税は許しませんよ」
「な、なんだと!?」
前世で「国税局員」として恐れられた彼女の計算能力は、光ファイバーの如き速度でシステム
の裏をかいていた。
「よくやった、セリア!」
アレンが親指をぐっと上に突き出した。セリアも、ほんのわずかに口角を上げて頷いた。
「はいはいはい! 難しい話は後にして、あんたも早くこっちへ来て食べなさいな!」
マリアンがお玉を振りかざし、セリアに熱々の豚汁を差し出した。
「……いただきます」
一口すすると、セリアの冷徹な瞳から、ポロリと一筋の涙がこぼれ落ちた。
「……美味しい。こんなに温かい食べ物、前世の残業明け以来です……」
数字の奴隷として感情を殺していた彼女の心もまた、マリアンの人情によって解きほぐされて
いった。
「ガハハ! これで全員、ウチの家族さね!」
朝日が昇る荒野に、住民たちの歓声と、マリアンの豪快な笑い声が響き渡る。
管理都市の喉元で行われた、決死の「大まかない」。それは、冷酷なシステムに対する明確な
反逆であり、何千もの命を救う最高の勝利――勇者たちの『禊』、輝かしい逆襲の第一歩だった。
最後まで読んでくれてありがとねぇ!
システムに消されそうだったみんなを、豚汁と塩むすびで救い出したよ! 豪華な料理もいいけど、
本当に腹が減って寒い時に一番効くのは、こういう泥臭い「お袋の味」さね。
アレンの一喝に、セリアちゃんの「強制徴収」! 内部監査室コンビの逆襲、最高にスカッと
しただろ?
でも、管理都市からこんなに大勢の住民を奪い取ったんだ。システムの親玉が、このまま
黙ってるはずがないねぇ。
次回は、どうなることやら。
システム(閻魔)からの出題【Q35:決戦の合図】
次回、マリアンたちが管理都市に対して宣戦布告となる「メガロモールステーツ宣言」を
行う予定なんだけど、その時にマリアンが進化する最終・第4形態の名前は何かな?
もし、知ってる人がいるなら教えておくれよ。
① 暴食の魔王
② 慈愛の始祖
③ 究極の料理長
「ヒントはねぇ、わーしらが目指す、すべての命を温かく包み込む存在さね!
さあ、応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、今日も全開でよろしく頼むよ!」




