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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
第三章:人情の掟とメガロモールステーツ建国編

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33/48

第33話:管理都市の灰色の食卓! ニュートリ・ブロックと怒りの極上カツ丼!

 まいど! Q32の正解は「② 物理的な応援ポイント(魔力バフ)として蓄積し、世界の理を

上書きする力になる」だねぇ!

 あんた達が画面の向こうでポチッとしてくれる「評価(☆)」や「ブクマ」、それがただの

数字じゃないってことさ。わーしらの世界じゃ、その熱量が冷たいシステムを打ち破る最高の

「バフ」になって蓄積されてるんだよ。いつも本当にありがとねぇ!

 さて、法も学校も整って、いよいよウチの国も本格始動って時に、ついに「あいつら」が

やってきたよ。

 管理都市から派遣された、システムのエリート勇者一行の視察さね。

 でもね、あいつらの持ってきた「最高に効率的な食事」を見て、わーしの堪忍袋の緒が

ブチ切れたよ!


【♪ 仁義なき戦い(緊迫感のあるトランペットが鳴り響く、昭和の極道映画風BGM) ♪】


「さあて、冷え切った死んだ目をしている連中に、

 おばちゃんの熱いお説教を食らわせてやろうかねぇ!」

 メガロモールステーツの正面。ミノ率いる土建ギルドが造り上げた『鉄壁の門』が、重々しい

駆動音を響かせて開いた。

 そこから足を踏み入れたのは、黄金に輝く鎧と純白のマントを纏った四人の男女だった。

 まるで現世のRPGから抜け出してきたかのような完璧な美貌。しかし、彼らから放たれるのは

希望ではなく、周囲を氷点下に染め上げるような無機質な威圧感だった。

 彼らこそ、システムの親玉である閻魔が派遣した『特別監査勇者パーティ』。

 その先頭を歩く金髪の青年――勇者アレンが、周囲で立ち止まる魔物たちを汚物でも見るかの

ように冷ややかに一瞥した。


「……これが、システムのバグが作り上げたという無法地帯ですか。

 ひどい有様だ。街の動線も、住民の配置も、効率の欠片もない」


 アレンの呟きは、彫刻のように美しい笑顔の裏に隠された、冷酷な棘を含んでいた。

 彼らの歩みを遮るように、二階の中央モール事務所から降りてきたサトルとメッキー、

そして警備室から出てきた猫獣人のジッジーが立ち塞がる。


「ようこそ、メガロモールステーツへ。

 我が防犯プロトコルは貴方たちの魔力波形を完全に捕捉している。妙な真似はしないことだ」


 ジッジーが鋭い眼光で牽制するが、アレンは全く動じず、大仰に肩をすくめてみせた。


「お気遣いなく、旧式の獣人さん。我々はシステム管理プロトコルに基づき、

 この『異常な特異点』を視察し、適切な是正措置……

 つまり、遅れたあなたたちに効率化の『指導』をしに来ただけですから」


 表面上は極めて丁寧な敬語だが、その声には一切の温度がない。

 サトルはゴブリンの青い顔をさらに険しくし、眼鏡を押し上げた。


「視察、っすか。ウチの国はすでに完全に独立した経済圏とインフラを築いてるっすよ。

 あなたたちの『指導』なんて受ける筋合いはないっす」


「ちゅっ。数字の計算ならウチの経営陣の右に出る者はいないだちゅよ。

 帰るなら今のうちだちゅ」


 サトルとメッキーの牽制にも、アレンはただ薄ら笑いを浮かべるだけだった。


「独立? 経済圏? 0点のバグが寄り集まっておままごとをしているだけでしょう?

 すぐに現実をお見せしますよ」


 そのヒリつくようなやり取りを、少し離れた柱の陰から見つめている少女がいた。この国の

文化と歴史を紡ぐ『吟遊詩人ギルド長』を拝命したばかりのスライムアイドルのミクである。

 彼女は、アレンとその取り巻きたちの目を見て、思わず身震いし、自らの腕を抱きしめた。


(……あの目、知ってる。現世で、私を商品としてしか見ていなかったプロデューサーや、

 ランキングの数字だけで私を評価して、最後は使い捨てたファンたちと同じだ……)


 綺麗に着飾ってはいるが、瞳の奥に「人としての熱」がない。相手を数字とリソースでしか

測らない、完全に『死んだ目』だった。


「……サトル社長、メッキーさん、気をつけて。あの人たち、心が空っぽだよ……」


 ミクの震える呟きは誰にも聞こえなかったが、その直感はすぐに最悪の形で証明されることとなる。



 一行は、モールの中心にある巨大なフードコートへと案内された。

 そこでは、オークやエルフ、ドワーフといった様々な種族の魔物たちが肩を寄せ合い、湯気を

立てるラーメンや炒飯を頬張りながら、大声で笑い合っていた。

 鍋を振るう小気味良い音と、食欲をそそるスパイスの香りが空間を満たしている。

 だが、アレンはその光景を見て、心底軽蔑したように鼻で笑った。


「……野蛮ですね。未だにこんな原始的な方法でエネルギーを補給しているとは」


「なんだと?」


 サトルが眉をひそめる。


「食事ごときにこれほどの時間と空間、そしてリソースを浪費するなんて愚かの極みです。

 やはり0点のバグが作った施設だ。合理的配慮が全く欠如している。こんな無駄な時間が

 あるなら、ポイントを稼ぐ労働に充てるべきだ」


 アレンの言葉に、食事を楽しんでいた周囲の魔物たちがムッとして立ち上がろうとするが、

サトルが手で制した。


「時間と空間の浪費、っすか? 言いがかりも甚だしいっすね。

 食事は明日への活力を養う、この国で最も重要なインフラっすよ」


「だから野蛮だと言うのです。旧世代の遺物ですね」


 アレンは腰のポーチから、銀色に輝く小さな立方体を取り出した。

 それは、灰色の粘土を固めたような、無機質で味気ないブロックだった。


「これこそが、我々『管理都市(ディストピア)』が誇る完全無欠の食事。システムが算出した

 完璧な栄養素を凝縮した『ニュートリ・ブロック』です。これを一つ摂取するだけで、一日に

 必要なカロリー、ビタミン、ミネラルを過不足なく、わずか1分で補給できる。味覚という

 無駄なノイズを排除し、調理の手間も、後片付けのコストもゼロ。これこそが、選ばれた

 エリートの、究極に効率化された『食』のあり方ですよ」


 アレンは得意げに灰色のブロックを掲げてみせた。

 サトルもメッキーも、その極限まで突き詰められた「数字上の効率」には一瞬言葉を失った。

 前世で利益と効率を追い求めていた彼らの脳裏に、「確かにコストカットの究極形だ」という

危険な誘惑がよぎる。

 だが、その凍りつくような空気を、凄まじい破壊音が粉々に打ち砕いた。


 ピシィィン!!

 大理石の床に、ヒビが入るほどの勢いで巨大なお玉が叩きつけられた。


「――はいはいはい! さっきから黙って聞いてりゃ、随分と寝言をほざいてくれるじゃないのさ!!」


 バサバサと美しく大きな翠色の羽根を広げ、第3形態【極楽厨房の饗食天使(キッチン・エンジェル)】へと

進化したマリアンが、鬼の形相で立っていた。グラマラスな絶世の美女の姿をしているが、

そこから発せられる覇気は、紛れもなく怒り狂う下町のおばちゃんそのものだ。


「お、大女将!」


「マリアンおばちゃん!」


 柱の陰から駆け寄ったミクとサトルが、安堵と驚きの声を上げる。

 マリアンはズンズンとアレンの前に歩み寄り、彼が掲げていたニュートリ・ブロックをジロリ

と睨みつけた。


「これが完璧な食事だって? ふざけるんじゃないよ!

 こんな味も素っ気もない消しゴムみたいな塊、

 腹は膨れても、心はちっとも温まらないじゃないか!!」


 あまりの剣幕に、アレンは美しい顔を歪め、不快そうに一歩下がった。


「……感情論ですね。味覚というノイズは、業務の効率を低下させるだけです。我々はポイント

 を稼ぎ、システムに貢献するために生きている。食事に無駄な喜びなど不要なのです」


「バカ言うんじゃないよ!!」


 マリアンの怒号が、フードコート全体をビリビリと震わせた。


「いいかい! 食事ってのはね、ただ栄養を身体に詰め込む作業じゃないんだよ!

 熱いものを熱いって言いながらハフハフ食べて、美味しいねって隣の奴と笑い合う!

 その『喜び』が、明日を生きるための本当のエネルギーになるのさ!

 あんたたちの目がそんなに死んだ魚みたいに濁ってるのは、そんなエサみたいなもんしか

 食ってないからだよ!!」


 マリアンの言葉は、アレンの心の奥底に、予想外の鋭い痛みを走らせた。


(……なんだ、この女は。私の完璧なロジックを、感情だけで否定するというのか……。

 それに、なぜだ……私の胸の奥が、こんなに……ざわつく……)


 前世で他人の手柄を横取りし続け、数字のためだけに生きてきた彼が、管理都市で

「いい子ちゃん」を演じ続けるために押し殺してきた本当の感情。

 それが、マリアンの圧倒的な熱量に触れ、かすかに疼き始めたのだ。だが、アレンはすぐに

その感情を冷徹な仮面の下に押し隠した。


「……話になりませんね。論理的思考が欠如したバグとは、対話の余地もない。行くぞ」


 アレンが冷たく言い放ち、踵を返そうとしたその時だった。


「待ちな!」


 ガシッ!

 マリアンが、去ろうとするアレンの肩を力強く掴んだ。


「視察に来たんだろ? 視察ってのは、上っ面だけを眺めることじゃないんじゃないのかい?

 ウチの『本当の飯』ってやつを食って、中身をしっかり評価してから帰りな!

 わーしが、あんたのその冷え切った胃袋と性根を、熱々の鉄鍋で叩き直してやるさね!」


「なっ……無礼な! 離しなさい!」


 アレンが振り払おうとするが、第3形態【豊穣の天使】へと進化したマリアンの腕力は、

エリート勇者であっても抗えないほど圧倒的だった。

 彼は強制的にフードコートのカウンター席に座らされる。

 マリアンは厨房へ飛び込むと、目にも止まらぬ速さで調理を始めた。

 ジュワァァァッ!!

 分厚い豚肉に衣をつけて揚げる豪快な音。甘辛い出汁の香りが立ち上り、黄金色の卵が鍋の中

でふんわりと踊る。


「いいかい! 数字なんかじゃお腹は膨らまないし、そんなエサみたいなもんで

 心までは満たされないのさね! 焼きが足りないあんたたちの根性、

 この油でカラッと揚げ直してやるよ!!」


「お、おい……何か凄まじい匂いがするぞ……」


「システムのエリート様が、よだれ垂らしてるだちゅよ」


 数分後。

 ドンッ! と、アレンの目の前に湯気を立てる丼が叩きつけられた。


「食いな! わーし特製、『極上ロースカツ丼』さね!」


 そこには、分厚く揚げられたサクサクの豚カツが、半熟のトロトロ卵と飴色のタマネギで綴じ

られ、ツヤツヤの白米の上に鎮座していた。甘辛い醤油と出汁の香りが、容赦なくアレンの鼻腔

を殴りつける。


「こ、こんな脂と糖質の塊……非効率の極みだ。私が食べるわけ……」


 ギュルルルルルルゥゥゥゥ……ッ!!

 その時、アレンの腹の虫が、フードコート中に響き渡るほどの大音量で鳴り響いた。

 ニュートリ・ブロックで「栄養」は足りていても、彼の「胃袋」と「本能」は、圧倒的な

カロリーと温かい旨味を、飢えた獣のように求めていたのだ。


「……さあ、冷めないうちに一口だけでも食ってみな。視察なんだろ。話はそれからさね」


 マリアンが割り箸を突きつける。

 完璧なロジックで生きてきたエリート勇者の手が、抗いようのない本能に突き動かされ、震え

ながら箸へと伸びていった。

 最後まで読んでくれてありがとねぇ!

 あのアレンって勇者、本当にムカつく野郎だね! 味のしない消しゴムみたいなブロックを

「究極の食事」だなんて、食を愛するおばちゃんへの完全な宣戦布告さね!

 でも、頭でどれだけ理屈を並べても、極上カツ丼の匂いには勝てないのさ!

 腹の虫が鳴っちゃうなんて、エリート様も形無しだねぇ。

 次回は、一口食べちまった勇者がどうなるか……あいつの仮面をひっぺがして、本当の涙を

流させてやるさね!


 システム(閻魔)からの出題【Q33:勇者の失ったもの】

 システムに最適化されたエリート勇者アレン。彼がこの無機質な『ニュートリ・ブロック』

を食べ続け、偽善の社会で生きるうちに、完全に失ってしまったものは何かな?


 ① 怪我をした時に痛みを感じる「痛覚」

 ② 「美味しい」と感じ、心から笑い合う「感情」

 ③ 寝なくても働き続けられるための「睡眠欲」


「ヒントはねぇ、わーしらが毎日当たり前にやってることさね。飯を食って笑えないなんて、

 生きてる意味がないじゃないのさ。

 ……さあ、あんた達なら、どれが本当の正解か、もう分かってるよねぇ?

 応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、今日もよろしく頼むよ!」

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