第32話 いただきますの精神と受け継がれる詩! 魔導学院と吟遊詩人ギルドは、揚げパンとシチュー!
まいど! Q31の正解は「③ フリップを使って、日常の不満や変な法律をツッコむ芸」だねぇ!
理屈や常識でガチガチになった相手を、笑いの力でひっくり返す。
アーサーのフリップ漫談裁判、最高にスカッとしただろ?
さて、法律ができて街の揉め事は減ったけど、国が長く続くためには「次世代」を
育てなきゃいけない。
今回は、荒くれ者や魔物たちの子供を集めた『魔導学院(学校)』と、歴史を刻む
『吟遊詩人ギルド』の立ち上げさ!
懐かしの給食メニューと、ミクちゃんの歌声が、冷たい魔界の常識をまた一つ打ち破るよ!
【♪ ノスタルジック・デイズ
(木琴の温かい音色とアコースティックギターが奏でる、放課後の夕焼けのような優しい旋律) ♪】
「さあて、今日はどんなメニューで、みんなの心に栄養を補給しようかねぇ!」
メガロモールステーツは、今や単なる商業施設を超え、魔界の誰もが認める巨大な独立国家へ
と指数関数的な成長を遂げていた。
外壁はミノタウルスのミノによって要塞化され、内部にはペンジの工場、ウサミチとシュンの
物流通信網、エルザの診療所、そしてアーサーの法廷が整然と並んでいる。
だが、国家としての機能が充実していく一方で、二階の中央モール事務所では、新たな問題が
サトルたち経営陣を悩ませていた。
「サトル社長。ここ最近、居住区での『未成年』による小さなトラブルが急増してるだちゅ」
ネズミ獣人のメッキーが、魔導板に浮かぶグラフを険しい顔で指差した。
「窃盗や暴力といった重犯罪はジッジーさんの自警団が未然に防いでいるだちゅ。
でも、配給された食料を独り占めしようとして喧嘩になったり、
共有施設の設備を壊したりと、モラルの欠如が目立つんだちゅよ」
「……分かってるっす」
ゴブリンのサトルは、眉間を揉みながら深いため息をついた。
「システムから0点と見捨てられたり、スラムで育ったりした魔物や転生者の子供たちっす
からね。彼らの世界は弱肉強食がすべてで、『道徳』や『感謝』なんて概念を教わった
ことがないんすよ。……とはいえ、このまま彼らが大人になれば、いずれ国家の治安維持
コストが跳ね上がり、経済的な破綻を招くっす」
「ええ、その通りです。そこで私からの提案ですが……」
銀狐のメコンが、高級な扇子をパタパタと煽りながらスマートに口を挟んだ。
「次世代の子供たちには、実践的な『職業訓練プログラム』を早期に施すのです。
モールの将来を支える労働力として、効率的に投資対効果を高めるべきですよ」
「ちゅっ、それは一理あるだちゅ。早期に技能を身につけさせれば、将来の人的資本として……」
ピシィィン!
応接室の重厚な机が乾いた音を立てた。
「――はいはいはい! またあんたたち、
数字と横文字ばっかり並べて頭でっかちになってんじゃないよ!」
背中の美しく大きな翠色の羽根を揺らし、第3形態【極楽厨房の饗食天使】マリアンが、
巨大なお玉を肩に担いで仁王立ちしている。
グラマラスな美女の姿でありながら、その表情は完全に怒れる下町のおばちゃんだった。
「子供をなんだと思ってるんだい! リソースだの投資対効果だの、そんな冷たい計算で教育を
語るなんて、あの胸糞悪い『管理都市』の連中と同じじゃないか!
要するにさ、みんなで手を合わせて『いただきます』って言って、美味しくご飯を食べられる
心を育ててやればいいんだろ!?」
「い、いただきます……っすか?」
突拍子もない提案に、サトルが目を丸くする。
「そうさね! 食べ物を大事にする心、作ってくれた人への感謝。それが分かれば、食べ物を
奪い合ったりなんかしないさ! 教育ってのはね、心を豊かにすることなんだよ!」
マリアンの真っ直ぐな一刀両断に、エリートたちはハッとして口を閉ざした。
「フン……ちび女将の言う通りだぜ。街のインフラがどれだけ立派でも、そこに住む人間の心が
腐ってちゃ、国は砂上の楼閣だ」
いつの間にか入口のドアにもたれかかっていたミノが、腕を組んで力強く頷いた。
「俺が最高のハコ……『魔導学院(学校)』と、歴史と文化を残す『図書館』を造ってやる。
サトル、中身の『熱血教師』には心当たりがあるんだろ?」
「……ええ。前世で、生徒のために誰よりも汗を流していた、暑苦しいくらい本物の『先生』
が一人、ウチの居住区でくすぶってるっすよ」
サトルは眼鏡を押し上げ、不敵な笑みを浮かべた。
数日後。ミノの土建ギルドの突貫工事によって、光が差し込む広々とした『魔導学院』が
完成した。
教室には、スラムから集められた小鬼や獣人の子供たちが、落ち着きなく座らされていた。
彼らの目は警戒心に満ち、隣の席の者の持ち物を隙あらば奪おうと身構えている。
ガラッ! と勢いよく教室の扉が開いた。
「おらぁぁぁッ! お前ら、席につけぇぇぇッ!!」
教室に入ってきたのは、筋骨隆々の馬の胴体に人間の上半身を持つ、熱血ケンタウロスの
ケンパチだった。前世では昭和の熱血教師として、何人もの非行少年を真っ当な道へと更生
させてきた男である。
「俺が今日からお前たちの担任のケンパチだ! 魔界のルールが弱肉強食だって?
強い奴が弱い奴から奪うのが当たり前だって? ……ふざけるなッ!!」
ケンパチは黒板をドンッと叩き、教室中の子供たちを睨み据えた。
「お前たちが今、安全な屋根の下で雨風を凌げているのはなぜだ!?
ミノさんたち土建ギルドが汗水流して壁を造ってくれたからだ!
お前たちが着ているその服は、五色商会が命懸けで運んできたものだ!
お前たちは一人で生きているんじゃない。
誰かの『命の削りカス』の上で生かされてるんだよッ!」
ケンパチの怒号にも似た熱い言葉に、子供たちは圧倒され、ポカンと口を開けていた。
「そして何より『食』だ! 肉も、野菜も、元々は生きていた『命』だ。
それを奪って自分の命に繋いでいる。だからこそ、俺たちは食事の前に、
その命と、作ってくれたすべての人に感謝を込めて言う言葉がある! 分かるか!」
ケンパチは太い腕をクロスさせ、胸の前でパンッ! と力強く手を合わせた。
「『いただきます』だ!! さあ、全員声に出して言ってみろ!!」
「い、いただきます……?」
「声が小せぇぇぇッ!! もっと腹から声を出せ!!」
教室の中に、少しずつ、しかし確実に「感謝」という文化が芽生え始めていた。
そんな熱血授業が一段落した昼下がり。
教室の廊下から、鼻腔をくすぐる甘く暴力的な香りが漂ってきた。
「はいはいはい! お勉強の後は、待ちに待った給食の時間だよー!」
ワゴンを押して現れたマリアンの声に、子供たちの目が一斉に輝いた。
配膳されたのは、ふっくらと黄金色に揚がったコッペパンに、たっぷりのきな粉と砂糖が
まぶされた『特製きな粉揚げパン』。
そして、鶏肉と大きく切られたニンジン、ジャガイモ、タマネギがゴロゴロと入り、濃厚な
ミルクの甘みが溶け込んだ『極上クリームシチュー』だった。
「……先生。これ、食べても、いいの?」
一人の小さな獣人の少女が、よだれを垂らしながらケンパチを見上げる。
ケンパチは力強く頷いた。
「ああ。だがその前に、教えた言葉を忘れるな!」
子供たちは顔を見合わせ、そして全員で一斉に、胸の前で小さな手を合わせた。
「「「いただきます!!」」」
サクッ……ジュワァ……ッ!!
揚げパンにかぶりついた瞬間、心地よい咀嚼音が教室に響き渡った。
表面のカリッとした食感の直後、パン生地に染み込んだ極上の油のコクと、きな粉の香ばしい
甘みが、爆発的に口の中を満たしていく。
そして、すかさず温かいクリームシチューを流し込む。トロトロに煮込まれた野菜の甘みと、
鶏肉のジューシーな旨味が、揚げパンの甘さと完璧なマリアージュを引き起こす。
「う、うわぁぁ……あまくて、あったかい……っ!」
「おいしい……! こんな美味しいもの、初めて食べたよぉ……っ!」
スラムで冷たい残飯や木の実しか食べたことのなかった子供たちの目から、ボロボロと大粒の
涙がこぼれ落ちた。彼らはもはや食料を奪い合うことなく、隣の友達と顔を見合わせて、最高の
笑顔でパンを頬張っていた。
「……フッ。大女将。あんたの給食は、どんな説教よりも子供の心に響くらしいな」
ケンパチが涙ぐみながらシチューを啜る。マリアンは翠色の羽根を揺らし、満足げに微笑んだ。
「お腹がいっぱいになれば、心にも余裕ができる。それが平和の第一歩さね」
その感動的な給食の風景を、教室の隅から静かに見つめている少女がいた。
広報・癒やし部を担当するスライムアイドルのミクである。彼女の隣には、美しい装丁の白紙
の本を手にしたエルフの吟遊詩人たちが控えている。
「みんなの笑顔……すっごくキラキラしてる。この温かい気持ち、絶対に忘れちゃダメだよね」
ミクは、自身の魔導板の配信カメラを起動し、魔界全土、そして次元を
超えた現世(地球)のモニターに向けて、透き通るような声で歌い始めた。
「聞いてください。これは、冷たい荒野に生まれた、温かい『いただきます』の詩――!」
ミクの歌声が、エルフたちの奏でるリュートの音色に乗って、街中へと響き渡る。
今日起きた子供たちの変化、マリアンの温かい給食、そしてケンパチの熱い想い。
ミクはそれらを即興の『詩』として紡ぎ、吟遊詩人ギルドがそれを「歴史」として
本に刻み込んでいく。文化の保存の瞬間だった。
その優しくも力強い旋律に、荒くれ者の子供たちも、ケンパチも、静かに涙を拭っていた。
「……良い歌じゃないのさね」
教室の入り口で腕を組んで聞いていたマリアンが、満足げに微笑んで前に出た。彼女は巨大な
お玉を肩に担ぎ、ミクと、伴奏をしていたエルフたちをビシッと指差す。
「腹を満たすのがわーしらの飯なら、心を豊かにして歴史を残すのはあんたたちの『詩』さね!
本や音楽は、国が百年、千年と続くための最高の栄養なんだから!」
マリアンは天高くお玉を掲げ、高らかに宣言した。
「あんたたちを、ウチの文化と歴史を紡ぐ『吟遊詩人ギルド』に正式に任命するよ!
ミクちゃんは広報・癒やし部から吟遊詩人ギルド長に異動になるさね。
エルフのみんなも吟遊詩人ギルド幹部としてミクちゃんのサポートをお願いするよ。
ミクちゃんの詩を本に刻んで、この国の『いただきます』の精神を、ずっと先まで残しておくれな!」
それはまさに、メガロモールステーツに吟遊詩人ギルド(図書館・文化庁)「文化の保存」
という新たな血が通った瞬間だった。
その時、二階のモール事務所でネットワークを監視していたシュンの複眼が、驚愕に見開かれた。
「サトル社長! ミクの配信枠のトラフィックが異常です! 現世からの『ブックマーク』と
『評価の星(☆)』が、凄まじい勢いで流れ込んできています!」
「なっ……! ただのアクセス数じゃない。この数字の熱量……まるで、現世の人々の『応援』
そのものが、物理的な魔力となってサーバーに蓄積されていくみたいっす!」
サトルが震える手でキーボードを叩く。
ミクが呼びかけた「応援」は、単なるWeb上のお約束ではなく、閻魔システムの理をハックし、
マリアンたちの世界を物理的に強靭化する絶対的な「エネルギー」としてプールされ始めていたのだ。
だが、この異常な熱量の高まりを、冷徹なシステムが放置するはずもなかった。
≪♪ システム警告音(不規則で不快な低周波) ♪≫
サトルの画面の隅に、真っ赤な警告ログが走る。
『警告。第72区画にて、非論理的なエネルギーの蓄積を検知!
システムの最適化を阻害する「非効率な感情」と判定。
――管理都市より、特級視察官、勇者パーティの即時投入を承認。
至急、排除プロセスへ移行せよ』
「……ついに、来やがったっすね。システムの犬どもが」
サトルの呟きは、誰の耳にも届くことなく、楽し気な給食の笑い声の中へと溶けていった。
メガロモールステーツの泥臭い人情と、管理都市の冷酷な効率主義。二つの思想が真正面から
ぶつかり合う「本当の戦い」が、いよいよ幕を開けようとしていた。
最後まで読んでくれてありがとねぇ!
ケンパチ先生の熱血授業、最高だっただろ? 「いただきます」っていうのは、ただの挨拶
じゃない。命と、作ってくれた人へのリスペクトさね。揚げパンのきな粉で口の周りを真っ白に
しながら笑う子供たちを見てたら、わーしまで泣きそうになっちまったよ。
それにミクちゃんの歌! あんたたちが押してくれる評価(☆)やブックマークが、本当に
わーしらの力になって蓄積されてるんだ。いよいよ管理都市の連中がやってくる
みたいだけど、あんたたちの応援があれば絶対に負けないさね!
システム(閻魔)からの出題【Q32:ミクの歌の秘密】
ミクが後書きや配信で一生懸命募っている「応援(ブックマークや評価)」。
これが物語の後半で、システムを打ち破るためにどう作用するかな?
① モール内の通貨として換金され、高級食材が買えるようになる
② 物理的な応援ポイント(魔力バフ)として蓄積し、世界の理を上書きする力になる
③ 閻魔様の機嫌を取るための賄賂になる
「ヒントはねぇ、あんたたちとわーしらが『繋がってる』って証拠さね!
さあ、あんた達なら、どれが本当の正解か、もう分かってるよねぇ?
応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、今日も全開でよろしく頼むよ!」




