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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
第三章:人情の掟とメガロモールステーツ建国編

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第31話 杏の掟と正義の天秤! 裁定者ギルドと激辛酸辣湯麺!

 まいど! Q30の正解は「② 損益計算書(P/L)上は利益が出ているのに手元にお金がない

「黒字倒産」」だねぇ!


 数字を追いかけるあまり、一番大切な「お金という血液を回すこと」を忘れちまう。

 サトルたちもお金の怖さを知ってるからこそ、真剣になりすぎちまったんだね。

 でも、ウチのワンタン麺で心もぽっかぽかに温まったはずさね。


 さて、お金が回って国が豊かになると、今度は色んな揉め事が起きてくる。

 いくらジッジーさんの自警団が強くても、ルール(法)がなきゃ街は内側から腐っちまう。


 新しい掟、すなわち法律を作らなきゃいけないのさね。

 でも、その掟を面白く思わない「あいつら」が、ついに直接干渉してくるみたいだねぇ。


【♪ 笑いと涙の法廷(軽快なアップテンポのジャズに、時折コミカルなホイッスルが混ざる旋律) ♪】


「さあて、堅苦しい理屈も揉め事も、激辛(げきから)酸辣湯麺(サンラータンメン)でまとめてギルティー!」

 メガロモールステーツは、農地、工場、物流網、そして強固な金融システムを備え、もはや

単なる商業施設を遥かに超えた、実質的な『巨大な共同体』としての機能を果たしつつあった。

 もちろん、閻魔システムや管理都市(ディストピア)から見れば、ここは未だ「0点のバグが

固まっているだけの不法建築物」に過ぎない。

 だが、内側に生きる者たちにとっては、こここそが唯一の、そして最強の『居場所』へと変貌

を遂げていたのである。

 ミノが率いる土建ギルドが外壁と施設を増築し、ペンジとシュンが魔導通信網を張り巡らせる。

メッキーたちが開拓した広大な農地からは豊かな作物がもたらされ、サトルが構築したシステム

によって健全な経済が脈打っていた。


 しかし、その急激な膨張と多種族の密集は、新たな歪みをモールの内側に生み出しつつあった。


「……ダメだ。また西区画で、オークとドワーフの取引トラブルが発生しました!

 東区画では、エルフのテナントと獣人の客が商品の取り扱いで揉めてます!

 さらに南区画では境界線を巡る小競り合いが……っ!」


 二階の中央モール事務所。

 ゴブリンのサトルが、次々と舞い込むトラブル報告のデータを前に、頭を抱えていた。


「前々から言ってたっすよね。これだけ人が増えて、システムが機能しない場所だと、

 数字の管理だけじゃなくて『独自のルール』がないと、そのうち内側から崩壊するっすよ……!」


 サトルは、かつて復興作業中にこぼした懸念が、今まさに現実のものとなっていることに焦り

を感じていた。ネズミ獣人のメッキーも、髭をヒクつかせて深く同意する。


「ちゅっ。商取引のトラブルも頻発してるだちゅ。

 閻魔システムの法をそのまま適用しようとすると、評価ポイントの低い者が無条件で

 不利になる、クソみたいに不平等な判決しか出ないだちゅよ」


 一階の警備室から、猫獣人のジッジーの苦々しい声がインカム越しに響いた。


『我がプロトコルで不審者を捕縛し、物理的に制圧することは可能だ。

 だが、裁くための「天秤」がこの国には無い。

 このままでは、自警団がただの暴力装置になってしまう』


 ルールなき国家は、やがて自滅する。エリートたちはその恐怖に直面していた。


「はいはいはい! 眉間にシワばっかり寄せてると、せっかくの男前が台無しさね!」


 バァァァンッ! と、応接室の重厚なドアが勢いよく開け放たれた。

 そこに立っていたのは、背中の美しく大きな翠色の羽根を優雅に揺らす、第3形態

【極楽厨房の饗食天使(キッチン・エンジェル)】へと神進化を遂げたマリアンだった。

 巨大なお玉を肩に担ぎ、ふっくらとしたグラマラスな美女の姿でありながら、その豪快な

笑顔は相変わらずの下町のおばちゃんそのものだ。


「裁く天秤がないなら、自分たちで作ればいいじゃないのさね。

 ウチにはちょうどいい『専門家』が来てるんだよ!」


 マリアンの言葉と共に、彼女の背後から一人の男が進み出た。

 磨き上げられた銀色の甲冑に身を包んだ、いかにも「正義の騎士」といった風貌の男。

しかし、その手には剣でも盾でもなく、なぜか「巨大な白いボード(フリップ)」と

「指差し棒」が握られていた。


「お待たせしました。私の話を聞けばみんな無罪になります」


 彼の名は、アーサー。

 前世では、企業の大型訴訟を次々と勝ち抜いた「現役の敏腕弁護士」でありながら、週末は

劇場で法律の矛盾を突くフリップ芸やスタンダップコメディーを披露する「お笑い芸人」として

活動していたという、異色の二面性を持つ男だった。


「べ、弁護士と芸人の二刀流……!?

 そんなふざけた経歴で、この混沌とした魔界の法律が作れるんすか!?」


 サトルが目を丸くしてツッコミを入れると、アーサーは眼鏡をクイッと押し上げ、ニヤリと

笑って『ギルティー!』と叫びながらフリップを裏返した。そこにはデカデカと『異議なし!』

の文字が書かれている。


「どっちやねん!」とたまたま報告に来ていたオークのペンジが、関西人の『ノリ』を抑え

きれずに『ツッコミ』を入れていた。


「法廷も劇場も、論理で人の心を掴んでナンボの世界なんでー。

 システムの冷たい理屈なんか、私の笑いで吹き飛ばしてごらんにいれますし」


 その時、ジッジーからのインカムが鋭く鳴った。


『サトル、マリアン! 広場を見てくれ。管理都市(ディストピア)から派遣された下級監査官の連中が、

 勝手にウチの客を裁こうとしている!』


「なんだって!?」


 サトルたちが急いで一階の広場へ駆けつけると、灰色のローブを纏った管理都市の監査官たち

が、一人のコボルトを冷たい目で見下ろしていた。


「システム法第4条・器物破損および不敬罪。

 高ポイント者である私の靴を汚した罪は重い。

 よって、お前の全ポイントを没収し、即刻この地から放逐する」


 周囲の魔物たちが怒りと恐怖でざわめく中、コボルトは震えながら土下座していた。


「お、お待ちください! 私はただ、荷物を運んでいただけなのに、

 そちらが急にぶつかってきて……っ」


「黙れ! 0点のゴミが、システムに選ばれた私に口答えする気か!」


 監査官が魔力の鞭を振り上げたその瞬間。


「異議あり!! その判決、ちっとも笑えませんねぇ!」


 アーサーが甲冑の音を響かせながら、監査官とコボルトの間に颯爽と割って入った。


「な、なんだ貴様は! システムの完璧な法を愚弄する気か!」


「完璧? はてさて。私、気になってシステムの法律、ちょっと調べてきたんですけどね……

 ムチャクチャなんですよー!」


 アーサーは甲冑の中から素早く新しいフリップを取り出し、指差し棒でパンッ! と叩いた。

 ここから、法廷劇という名の、アーサーのお笑いライブが始まった。


「システムの法律、ここが変!!」


 ペラッ、と一枚目のフリップをめくる。


「まずこれ! システム法第4条『高ポイント者の靴を汚した者はポイント全没収』。

 ……いや、重い重い重い!! 靴の汚れと命、全然釣り合ってないんですよ!

 刑の均衡の原則、ガン無視! どんだけお気に入りの靴履いてるんですか!

  スーパースターのサイン入りスニーカーですか!」


 観衆の魔物たちから、ドッと笑いが起こる。監査官は顔を引きつらせた。


「次!」


 ペラッ! バンッ!


「『故意・過失を問わず、無条件で有罪』。

 ……これね、要するに『偶然肩がぶつかっただけでも死刑』ってことですよねー。

 いやいや、それやったら魔界の通勤ラッシュ、毎日がデスゲームやないかい!

  満員電車乗るたびに遺書書かなあかんのですよー!」


「ひぃーっ、はははは!」と、今度はオークやドワーフたちが腹を抱えて笑い出した。


「さらにここ!」


 ペラッ! バンッ!


「『高ポイント者の証言のみを100%採用する』。……いや、それもう裁判いらんやん!!

 双方の話聞く気ゼロやんか! 被害者の救済ちゃうねん、システム様が面倒くさいから

 『弱い奴消してハイ終わり!』って言ってるだけなんですよ!

  ええ!? こんなペラペラの法律……私が持ってるこのフリップよりも薄いんですよ!!」


 アーサーは次々とシステムの法の矛盾と理不尽さを、ユーモアたっぷりに、しかし論理的な

鋭さを持って突き崩していく。数字だけで人間を裁く冷酷な法に対し、彼のユーモア溢れる

『弁論』は、国家としての「格の違い」をまざまざと見せつけていた。


「き、貴様ぁ……! 屁理屈を並べ立ておって! これは絶対的な正義なのだぞ!」


 顔を真っ赤にして激昂する監査官に対し、アーサーはビシッと指差し棒を突きつけた。


「その主張、システム的には満点かもしれませんが……法律家としても芸人としても、

 1点も入りませんよねぇー!」


 完全に論破され、周囲からの大爆笑とブーイングに耐えきれなくなった監査官は、

「おのれ、覚えておれ!」と捨て台詞を吐いて逃げるように立ち去った。


 歓声に包まれる広場の中央で、アーサーは高らかに宣言した。


「これより、この巨大モールにおける新たな法律『杏の掟』を制定します!」


 それは堅苦しい条文ではなく、「困ったときはお互い様」「腹が減ったらまずは飯を食え」

「嘘をつかず、はらぺこを笑顔にする」といった、マリアンの精神を基にした、誰もが分かり

やすく、守りたくなる楽しい決まり事だった。ポイント制ではない、笑いと人情に溢れた法の

確立である。


 これは、「裁定者ギルド(裁判所)」の設立をモール内外の住人たちに知らしめた出来事で、

メガロモールステーツは「理屈を笑いで包み込んで人情に変える」という究極の法治基盤を手に

入れたのだ。



 二階の応接室に戻ったアーサーたちは、心地よい疲労感に包まれていた。


「よくやったねぇ、アーサー!

 さあ、『裁判ちょ』、頭と口を全力で使った後は、これをお食べ!」


 マリアンがドンッとガラステーブルに置いたのは、熱々の『激辛(げきから)酸辣湯麺(サンラータンメン)』だった。


 真っ赤なラー油の突き刺すような「辛味」と、黒酢の深く芳醇な「酸味」。

 それが極上の鶏ガラスープの中で完璧なバランスを保ち、ふわふわの溶き卵と豆腐、

シャキシャキのタケノコとキクラゲが、とろみのある極細麺にたっぷりと絡みついている。


 ズズズッ! ハフッ、ハフッ! ズルルルッ!


「辛(から)いし、酸(す)いなぁ! ……そやけど、えろう美味(おい)しいわぁ!!」


 アーサーが額に大粒の汗をかきながら絶賛する。


「相反する二つの強い味が、一つの丼の中で見事な調和を見せている。これぞまさに、

 裁く者のあるべき姿……『正義の天秤』! 料理の逆転勝訴ですわ!」


 サトルもメッキーも、むせながら夢中で麺をすする。


「ちゅっ! この刺激、溜まったストレスが汗と一緒に全部吹き飛ぶだちゅ!」


 マリアンは翠色の羽根を揺らしながら、満足そうに微笑んだ。


「どんなに厳しい法律を作ってもさ、それに『人情』っていう酸味や辛味のバランスがなきゃ、

 息が詰まって食べられたもんじゃないのさね。あんたの笑いが、この国の最高のスパイスに

 なったんだよ」


 平和な笑いと、心地よい熱気に包まれたモール。

 しかし、アーサーの圧倒的な論破により「システムの法」が公式に否定され、独自の

『杏の掟』が制定されたことは、現世の閻魔モニターを通じても大反響を呼んでいた。


『システムの法律、論破されてて草』

『法廷フリップ漫談、最高じゃん!』


 現世からの圧倒的な「いいね」と「ブックマーク」がシンクロバフとなり、モールの熱量が

限界を超えて急上昇する。


 その時だった。


≪♪ システム警告音(鼓膜を刺すような不協和音の電子音)♪≫


 サトルの魔導板(ダッシュボード)が、突如として不吉な赤色に染まり、激しい明滅を始めた。


『警告。警告!!!

 聖域における独自法の制定を確認。……対象エリアを「監視対象:重要バグ」に指定。

 特別監査勇者パーティの選定を開始します』


 ついに、システムの中枢からエリート勇者が動き出す予兆。


 笑いと人情の国家と、冷酷なシステムの理。二つの世界は、逃れられない巨大な激突へと

向かって静かに加速を始めていた。

 最後まで読んでくれてありがとねぇ!

 アーサーのフリップ漫談裁判、最高にスカッとしただろ?

 本家はもうフリップは使ってないらしいから、オマージュとして許されるよね。

 『『『異議なしー』』』


 堅苦しい理屈や冷たい法律じゃ、人は幸せになれない。笑って、美味い飯を食って、

「困った時はお互い様」って助け合えるのが、本当の『掟』ってもんさね!

 激辛酸辣湯麺の辛味と酸味みたいに、みんなでバランスを取っていくのが国造りさ。

 でも、どうやらシステムの親玉は、ウチの掟がお気に召さなかったみたいだねぇ。

 いよいよ、あの「勇者」ってやつらがやってくるみたいだよ!


 システム(閻魔)からの出題【Q31:アーサーの二刀流】


 今回、見事な論破で「杏の掟」を制定したアーサー。彼が前世で、敏腕弁護士というエリート

の顔を持ちながら、週末に劇場で披露していたのはどんな芸だったかな?


 ① 理性と常識をすべて脱ぎ捨て、人間の衝動と誇張だけで突き進む、破壊的な芸

 ② 一から順番に数えていって、3の倍数の時だけアホになる芸

 ③ フリップを使って、日常の不満や変な法律をツッコむ芸


「ヒントはねぇ、モデルになった芸人を思い出せば簡単に分かるさね。

 六法全書をちゃんといつも持ち運んでそうな奴だよ。

 ……さあ、あんた達なら、どれが本当の正解か、もう分かってるよねぇ?

 応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、今日もよろしく頼むよ!」

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