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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
第三章:人情の掟とメガロモールステーツ建国編

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第30話:欲望と経済の交響曲! 商業・流通ギルドと特製ワンタン麺!

 まいど! Q29の正解は「② 山の斜面を切り開き、重機も入らない「棚田」や小規模な農園を

手作業で守り続けていたから」だねぇ!

 本文には出てこないバウさんの過去からの出題だったからね。

 機械も入らないような厳しい場所で、石を積み、水を管理し、一歩ずつ田畑を広げていく……。

 そんなバウさんの泥臭い執念が、この魔界の荒野で『命の水』を最高の福音に変えるための、

何よりの経験値になったのさ。

 さて、農地ができて食料問題が解決し、モールはますます巨大になってるけど、人が増えれば

モノが動き、モノが動けば「お金」が必要になるさね。

 今回は、サトルや五色商会が活躍する『商業・流通ギルド(金融庁)』の立ち上げだよ!

 でも、数字ばかり追いかけると大切なことを見失っちまう。頭でっかちになったエリートたち

を、特製ワンタン麺でシャキッとさせるさね!


【♪ 黄金のシンフォニー

 (軽快なジャズワルツに乗せて、コインが弾けるような華やかなメロディ) ♪】


「さあて、冷たい数字も欲の皮も、黄金のスープで温め直してやろうかねぇ!」

「おい! この魔石じゃ、その剣は買えねえぞ!」


「なんだと!? 黒鉄(くろがね)鉱山じゃこれで一ヶ月分の食料になるんだぞ! ぼったくる気か!」


「こらこら、二人とも武器を収めるんじゃ! 広場での争いはご法度じゃぞ!」


 一階の広大な交易市場では、今日もジッジー率いる自警団の怒声が響き渡っていた。

 農業ギルドの開拓によって完全自給自足の基盤が整い、次世代通信網と物理的なインフラが

血脈のように街中を巡ったことで、メガロモールステーツは爆発的な発展を遂げた。

 だが、数万の魔物や転生者が集まるようになった結果、それぞれの地域で使われていた

「バラバラの通貨」や「物々交換」が入り乱れ、市場の価値基準は完全に崩壊していたのである。


「……というわけで、ジッジーさんたち自警団から『いい加減なんとかしろ!』

 ってクレームが殺到してるっす」


 二階の中央モール事務所。

 ゴブリンのサトルは、応接室の空中に巨大なホログラムグラフを展開しながら、深いため息を

ついた。

 ガラステーブルを囲むのは、五色商会のエリート獣人たち——リィク、アオバ、コクテン、

メッキー、メコンの五人だ。


「見ての通りっす。メガロモールステーツの経済規模は周辺国家を完全に凌駕してるんすが、

 統一された『通貨』と『信用』がないせいで、取引コストと時間のロスが異常に

 跳ね上がってるんすよ」


「ええ。各ギルドの取引、我々五色商会のロジスティクス、

 すべてにおいて決済の遅延が発生しています」


 蒼鷹の獣人であるアオバが、冷たい緑の瞳を細めて眼鏡を押し上げた。


「このままでは、遠からず経済の血流が詰まり、モールは心筋梗塞を起こして自壊しますね」


「ならば、我々自身が『基準』を作ればいいだけの話だろう?」


 赤獅子の獣人リィクが、野心に満ちた笑みを浮かべて立ち上がった。


「このメガロモールステーツの中央銀行となる『商業・流通ギルド』を設立する。

 そして、モール内でのみ使用・換金可能な統一魔界通貨……『杏(あん)コイン』を発行し、

 経済圏を完全に独立させるのだ!」


「ちゅっ! それ名案だちゅ! サトル社長の魔導板(ダッシュボード)と、

 シュンちゃんの通信網を連動させれば、各テナントのAn-Pad(アンパッド)を

 通じた即時電子決済も可能になるだちゅ!」


 ネズミ獣人のメッキーが興奮気味に尻尾を振ると、黒熊のコクテンも重々しく頷いた。


「俺たちの巨大資材倉庫にある圧倒的な物資を担保にすれば、新通貨の信用は盤石だ。

 魔界の誰もが、俺たちのルールに従わざるを得なくなる」


「決まりっすね。さっそくシステムを構築するっす!」


 かくして、魔法と科学の交差点たるインフラをフル活用し、モール内に独自の金融システムが

構築された。

 効果は劇的だった。通貨の統一と電子決済の導入により、市場の混乱はピタリと収まり、

取引スピードは数十倍に跳ね上がった。

 だが――その「莫大な富と権力」は、現世のビジネス最前線で泥水をすすってきたエリート

たちの心の奥底に眠る、どす黒い「欲望」を呼び覚ましてしまったのである。



 数日後。応接室のガラステーブルを囲む彼らの目は血走り、異常な熱気に浮かされていた。

 魔導板(ダッシュボード)に表示される「利益」と「流通総額」の数字は、まさに指数関数的に

右肩上がりとなっている。


「サトル社長、このまま農業ギルドの作物の卸値に、一律でシステム利用料を上乗せしましょう。

 彼らはウチの決済システムに依存しているから、逆らうことはできません」


 アオバが一切の感情を排した声で提案すると、リィクも牙を剥き出しにして笑った。


「ああ。さらに、全テナントの出店料をポイント制と連動させ、売上の低い店舗は即刻

 入れ替える『最適化』を図るべきだ。利益率の低い商品は陳列から排除し、効率のみを追求しろ」


「ちゅ、ちゅっ……それなら、五色商会の輸送ルートも、高利益のクライアントを優先する

 だちゅ。スラムや周縁部への配給は後回しにすれば……それが一番のコストカットだちゅ」


 メッキーでさえ、増え続ける数字の魔力に当てられ、普段の冷静さと優しさを失っていた。

 すぐ隣に居た物静かなコクテンも、完全に同調し、目を血走らせて無言で頷いている。

 サトルは魔導板(ダッシュボード)の輝く数字を見つめ、ゴクリと生唾を飲み込む。


「……そうっすね。利益の最大化。それこそが企業の、いや、国家の至上命題っす。無駄な

 リソースを省き、効率を極限まで高める。……なんだ、やればできるじゃないっすか、俺たち……!」


 彼らは気づいていなかった。自分たちが熱を帯びて発している言葉が、かつて憎み、否定した

はずの『管理都市(ディストピア)』の冷酷なシステムと全く同じになっていることに。


「……フハハハハ! 素晴らしい! これぞ資本主義の究極のナラティブ! 我々は通貨を支配する

 ことで、魔界の経済を完全にコントロールする神になるのですよ!」


 銀狐のメコンが金細工の扇子を振りかざし、狂気を帯びた高笑いを上げた、その瞬間。


 ――ピシィィン!!!


 鼓膜を突き破るような、硬質で圧倒的なお玉の打音が、応接室に響き渡った。

 衝撃で魔導板(ダッシュボード)のホログラムが掻き消え、男たちはビクッと肩を震わせ、一斉に

振り返る。


「……神様になるだの、利益を最大化するだの、ずいぶんと景気のいい話をしてるじゃないのさ」


 応接室の入り口に立っていたのは、マリアンだった。

 背中の美しく大きな翠色の羽根を静かに揺らす、ふっくらとグラマラスな美女。しかし、その

神々しい姿に似合わず、彼女の右手には身の丈ほどもある巨大なお玉がしっかりと握られ、左手

には大きな銀のトレイが掲げられている。


「ち、大女将! いや、これは国家の健全な成長のために必要な処置でして……」


「黙りな!!」


 ドンッ! と、お玉が再び絨毯に突き立てられた。地響きのような威圧感に、サトルたちは

冷や水を浴びせられたように硬直する。


「あんたたち、魔導板(ダッシュボード)の数字ばっかり睨めっこして、

 一番大事なことを見失ってんじゃないよ!」


「見失って……?」


「売上が低い店は追い出す? スラムへの配給は後回しにする? ふざけるんじゃないよ!

 それじゃあ、あの胸糞悪いシステムの連中と同じじゃないか!」


 マリアンの怒号が、鋭い刃となって彼らの胸に深く突き刺さる。


「わーしらは何のためにこのモールを作ったんだい!? 数字でお腹はいっぱいにならない。

 システムで心は温まらないんだよ。美味い飯を食える場所を創るためだったはずだろ!」


 その言葉に、サトルはハッとして目を見開いた。

 リィクも、アオバも、コクテンも、メッキーも、メコンも、雷に打たれたように固まる。

 前世で自分たちを追い詰め、心を壊した「数字至上主義」の亡霊に、自分たち自身が完全に

取り憑かれていたことに、ようやく気づいたのだ。


「……っ。俺たちは、また同じ過ちを……」


 サトルが震える両手で顔を覆うと、マリアンはフッと表情を和らげた。


「まあ、あんたたちも頭使いすぎて、脳みそがショートしてたんだろうねぇ。

 疲れた時には、温かくてホッとするものを胃袋に入れるのが一番さね」


 銀のトレイがガラステーブルの上に置かれる。

 蓋を開けると、ふわりと柔らかな湯気が立ち昇り、応接室に極上の香りが広がった。


「さあ、お食べ。わーしと神崎さんで作った、『黄金のスープ・特製ワンタン麺』さね!」


 一人ひとりの前に配られたどんぶりの中には、底まで透き通った、文字通り黄金色のスープが

まばゆく輝いていた。

 鶏と豚骨をベースに、雑味を一切出さないよう神崎が付きっきりでアクを取り続け、金華ハム

や干し貝柱の極上の旨味だけを抽出した、奇跡の清湯(チンタン)スープ。その黄金の海に、喉越しの

良い極細麺と、薄い皮からピンク色の肉餡が透けて見える大ぶりのワンタンが、花びらのように

美しく浮かんでいる。


「こ、これは……」


 サトルが震える手でレンゲを取り、黄金のスープを一口すする。


「……っ!!」


 口に含んだ瞬間、幾重にも重なった圧倒的な旨味が、数字で疲弊した脳と身体の隅々にまで

優しく染み渡っていく。塩味(えんみ)は絶妙で、角が取れていて、丸く、深い。

 続いてワンタンを頬張ると、ツルンとした滑らかな皮の食感の直後、中から豚肉とエビの

ジューシーな肉汁が、ジュワァァァ……ッ! と口いっぱいに爆発した。


「美味い……。なんだこれ、優しくて……美味すぎるっす……」


 サトルの目から、ボロボロと大粒の涙が溢れ落ちた。


「俺……魔導板(ダッシュボード)の利益ばっかり見て、このスープの温かさを完全に忘れてました……。 

 こんなに優しくて、ホッとする味が、俺たちのモールの本当の『価値』だったのに……っ」


「……私たちが作ろうとしていた経済圏は、血の通っていない、ただの冷たい機械でした」


 アオバが涙で曇った眼鏡を外し、声を震わせながら頷く。


「本当に強い経済とは、このスープのように、誰もが安心して飲み干せる

 『温かさ』の上に成り立つものなのですね」


「ちゅっ……マリアンおばちゃんの言う通りだちゅ。

 お金は、みんなを笑顔にするための道具に過ぎないだちゅ……!」


 メッキーもワンタンを頬張りながら激しく鼻をすすり、リィクたちも無言で涙を流しながら

麺を啜り続けている。

 マリアンは翠色の羽根を優しくパタパタと揺らしながら、満足そうに微笑んだ。


「分かればいいのさね。お金ってのは、血液と同じさ。国の隅々にまでしっかり回さなきゃ

 意味がないし、冷え切っちまったら人は生きていけない。あんたたちのその立派な頭脳で、

 このモールの『経済』ってやつを、いつもぽっかぽかの適温に保っておくれよ!」


「「「はいっ!!」」」


 エリートたちの顔からは数字の亡霊が落ち、かつての情熱と使命感を取り戻した清々しい表情

になっていた。


 晴れやかな顔で返事をする一同を見渡し、マリアンは巨大なお玉をポンと肩に担ぎ直した。


「よし! サトル、改めてあんたを、この国のサイフと血流を預かる

 『商業・流通ギルド(金融庁)』の局長に正式に任命するよ!

 そして、この二階にある五色商会の本部機能も、

 今日からはギルドの『中央オペレーションセンター』として正式に公認するさね。

 あんたたちのエリートの知恵を、ウチの国の『共通言語』に変えておくれな!」


「……了解っす、モールマネージャー!

 五色商会の全ロジスティクスと、俺の魔導板(ダッシュボード)を完全同期(シンクロ)させてみせるっすよ!」


 かくして、あの「マンガ肉」の熱量に胃袋を掴まれ、電撃的にこの地へ合流していた

五色商会の本部は、サトルを局長とする『商業・流通ギルド(金融庁)』の中枢拠点にして、

国家の『中央銀行』としての役割を担うこととなった。

 それは単なる利益追求の機関ではなく、マリアンのワンタン麺が教えてくれた「温もり」を

分配し、人情と健全な経済を両立させる、この国独自の生存戦略たるインフラの完成であった。

 冷たい管理都市(ディストピア)のシステムに抗うための、最強の『黄金の血流』が、

ついに正式な国家誕生を間近に控えたモール群の隅々にまで、力強く脈打ち始めたのである。

 最後まで読んでくれてありがとねぇ!

 サトルたちも、お金の魔力に少し目が眩んじゃったみたいだけど、特製ワンタン麺の

黄金のスープでバッチリ目が覚めたさね。

 お金や数字は大事だけど、それに振り回されちゃおしまいさ。

 一番大事なのは、みんなで美味しくご飯を食べられる「温かい場所」を守ることなんだからね!

 ウチの国は、絶対に誰も見捨てないよ!


 システム(閻魔)からの出題【Q30:サトルたちのトラウマ】


 今回、サトルたちが陥りかけた「数字至上主義」は、彼らが前世で苦しめられたものと同じ

だったね。前世のベンチャー社長時代、サトルが一番恐れていた事態は何かな?


 ① 関西弁で捲し立てるおばちゃんの理不尽なクレームの電話

 ② 損益計算書(P/L)上は利益が出ているのに手元にお金がない「黒字倒産」

 ③ 経営会議で在庫(棚卸資産)の水増しを黙認した直後の税務署の突然の監査


「ヒントはねぇ、経営者にとって一番怖い『お金(血液)が回らなくなる』ことさね。

 ……さあ、あんた達なら、どれが本当の正解か、もう分かってるよねぇ?

 応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、今日もよろしく頼むよ!」

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