第29話 農業開拓者ギルドと土建ギルドの発展は、極厚ハムカツと青椒肉絲から
まいど! Q28の正解は「② シュンが紡ぎ出した微細な『蜘蛛の糸(魔力糸)』」だねぇ!
あんなに細い糸で国中の情報をパパッと繋いじゃうんだから、シュンちゃんの技術は本当に
大したもんさね。縁の下の力持ちってやつだよ。
さて、通信や道路のインフラが整って、ウチのモールはどんどん巨大な『国家』になってる
けど、人が増えれば当然「メシ」の量も「住む場所」も半端じゃない。外部からの仕入れだけ
じゃ、いつか限界が来ちまう。
今回は、ミノさんたち土建ギルドによる都市拡大インフラ整備と、干からびた砂漠をオアシス
に変える農業開拓者ギルドの大工事が連動するよ!
【♪ 砂漠のオアシス(アラビアンな旋律に昭和歌謡の熱気が混ざる、情熱的なメロディ) ♪】
「さあて、荒野を開拓する鉄の意志を、極厚ハムカツとシャキシャキの青椒肉絲で
思いっきり労ってやろうかねぇ!」
「サトル社長、このままじゃ完全に『兵糧攻め』状態になるだちゅ……」
メガロモールステーツが魔界の中心として圧倒的な成長を遂げる裏側で、二階の中央モール
事務所には再び重苦しい空気が漂っていた。前世ではITベンチャー社長であり、現在このモール
で財務・経営を任されているサトルは、モール全体の収益を任されていたからだ。
一方で、外の荒野ではミノが率いる土建ギルドが、急増する人口を収容するための
『都市拡大インフラ整備』に追われている真っ最中だった。
「建物や道はいくらでも造れるが、そこに通す『上下水道』がなきゃ、
街としては機能しねぇ! サトル、水脈の確保はどうなってる!」
ミノが泥だらけの図面を手に怒鳴り込んでくる中、サトルは額に冷や汗を浮かべ、深く
ため息をついた。
「分かってるっす……。人口の爆発的な増加に対して、食料の自給率と生活用水が
決定的に追いついてないんすよ」
マリアンのセントラルキッチンがフル稼働してはいるが、毎日数万の胃袋を満たす野菜や穀物
の消費量は桁違いだ。システムに支配された冷酷な『管理都市』からの物資ルートは
当然絶たれており、完全に独立した経済圏を維持するためには、大規模な農地開発とインフラの
拡張が急務だった。
「バウさんたちコボルト族が『循環農業工房』で必死に野菜を育ててくれてるっす。
でも、あの規模の農地を今の十倍、いや百倍に広げるには
……絶対的に『水』が足りないんすよ!」
「すまねぇ……。俺たちの技術で土を肥やそうにも、
肝心の命の水がなきゃ、種は芽吹かないんだ」
泥だらけの優しい手を申し訳なさそうに擦り合わせながら、コボルトのバウがうつむいた。
魔界の荒野は、基本的には水気のない不毛の砂漠だ。乾いた風が吹き荒れ、ひび割れた大地が
どこまでも続く。
沈痛な空気が事務所を包む中、メッキーは自身の魔導板を見つめたまま、
ピクリとネズミの耳を動かした。
その脳裏に、前世の記憶が鮮烈にフラッシュバックする。
摂氏50度を超える灼熱の太陽。見渡す限りの砂漠。アラブ首長国連邦、アブダビ。
元・佐藤忠商事のエースバイヤーだった彼は、あの中東の地で、金に糸目をつけずに砂漠を
緑に変えようとする王族たちを相手に、水資源開発とインフラ構築の最前線で泥水をすすって
きたのだ。
「……ちゅっ。諦めるのは早すぎるだちゅ」
「メッキーさん?」
「水がないなら、見つけるまで掘ればいい。それが資源開発の基本だちゅよ!」
メッキーは力強く立ち上がり、サトル、ミノ、そしてバウに向かってニヤリと笑った。
「サトル社長、シュンちゃんの通信網のセンサーをフル稼働させて、この荒野の地質データを
かき集めてほしいだちゅ。バウさんたちの土を読む感覚と、俺の『目利き』の力……前世の
アブダビで培ったノウハウを全部つぎ込めば、必ずこの砂漠の底に眠る『命の水脈』に辿り
着けるはずだちゅ!」
「……本当か!? もし水が手に入るなら、俺たちコボルトは寝る間を惜しんで土を耕すぜ!」
「フン、水脈さえ見つかれば、俺たち土建ギルドが速攻でパイプを繋いで、
街中を巡る血管に仕立て上げてやる!」
「当然だちゅ! 俺たち五色商会とギルドの連携は、
不可能を可能にするプロ集団だちゅよ!」
翌日から、メッキーとバウ、そしてミノを中心とした壮大な「水資源開発プロジェクト」が
幕を開けた。
太陽が容赦なく照りつける荒野のど真ん中で、メッキーは表示される地形の三次元マップと、
地中の魔力波形を血走った目で見つめ続けていた。
「そこじゃないだちゅ! もっと西、断層の傾斜角が少しだけ変わるポイントだちゅ。
バウさん、その辺りの土の匂いはどうだちゅか?」
「ああ、メッキーの言う通りだ! ここの土だけ、ほんの微かに湿り気を帯びてる……。
地下深くに、何かが流れてる匂いがするぜ!」
コボルトたちの野生の直感と、メッキーのデータ分析が完璧にリンクしていく。
「よし、ここだ! ミノさん、ペンジさん、ぶち抜いてくれだちゅ!」
「任せな! 俺の一級建築士としての計算でも、ここが地盤のウィークポイントだ!」
ミノ率いる土建ギルドの重機が唸りを上げ、ペンジが特注で作り上げた「魔導超硬合金掘削
ドリル」が、岩盤を次々と砕いていく。
ガリガリガリッ! ギュィィィィン!!
粉塵が舞い、摩擦熱で激しい火花が散る。過酷な労働環境だが、誰一人として弱音を吐く者は
いなかった。彼らは皆、自分たちの「国」を自分たちの手で創り上げているという誇りに満ちて
いたからだ。
「もう少しだちゅ……! この岩盤の下に、間違いなく巨大な帯水層がある……!
アブダビの砂漠で見たデータと全く同じ波形だちゅ!」
メッキーの叫びと共に、ドリルが最後の一番硬い岩盤を貫いた。
その瞬間。
――ドゴォォォォォォンッ!!!
凄まじい地響きと共に、大地が割れ、天高く数十メートルもの水柱が噴き上がった。
「出たぁぁぁぁぁっ!! 水だ! 命の水だぞ!!」
「よし! この命の水を、俺たちの土建ギルドが造り上げた都市の水道網と、
新しい農地に一気に繋ぐぞ!」
太陽の光を浴びてキラキラと輝く純水が、乾ききった荒野の砂に降り注ぎ、瞬く間に潤して
いく。泥だらけになったコボルトたちと土木作業員たちが、天から降る水を全身で受け止め、
歓喜の涙を流して抱き合った。
メッキーも水浸しになりながら、ネズミの髭を誇らしげに揺らした。
「……見たか、システムども。俺たちの熱量は、干からびた砂漠にだって
オアシスを創り出せるんだちゅ!」
掘り当てた巨大水脈を中心に、すぐさま精緻な灌漑網と都市部への水道インフラが整備された。
コボルト族が得意とする農業技術によって種が蒔かれ、潤沢な水が与えられ、数日のうちに
荒野は見渡す限りの「緑の絨毯」へと変貌を遂げた。
「……フン。思い出すぜ。あの『緊急復興会議』をよ」
その奇跡のような光景を見渡しながら、ミノが、、完成したばかりの巨大な水道インフラを
見つめながら、自慢の斧を肩に担いでニヤリと笑った。
先日、半壊したモールで行われた会議で、サトルが「インフラ機能を計画的に誘致する」と
いう国家基盤の構築を提案した。その時、ミノは一級建築士としての血をたぎらせ、
「俺たちのモールにレゴブロックのようにガチッと組み込むってわけだな!」と鼻息を荒くして
立ち上がったのだ。その圧倒的な熱意と実績を買われ、彼らは都市の拡大とインフラ整備を担う
『土建ギルド(建設局)』として正式に任命された。
「あの会議で託された『道を拓く』って使命……。
水脈から街へ通すこの血管の完成で、ようやく一つ果たせたってわけだ」
そして今、干からびた砂漠を見渡す限りの緑の絨毯に変えた立役者たちへ、マリアンが巨大な
お玉を天高く掲げて高らかに宣言する。
「メッキーのアブダビ仕込みの知識と、バウさんたちコボルト族の泥だらけの優しい手!
どっちが欠けても、この広大なオアシスは生まれなかったさね!」
マリアンは満面の笑みで、水浸しになって喜ぶ彼らをビシッと指差した。
「あんたたちを、ウチの完全自給自足を担う『農業開拓者ギルド(水資源開発局)』
に正式に任命するよ! これからも、その土への愛と目利きの力で、ウチの国を
どんどん豊かにしておくれな!」
ここに、都市インフラを担う『土建ギルド』の鉄の意志と、メッキーとバウたちを主体とした
『農業開拓者ギルド』の連動が、国家の盤石な基盤として正式に確立されたのである。
「さあ、みんな、宴の準備はできてるさね」
モールマネージャー兼、異世界中華食堂『杏』の女将のマリアンが笑顔で皆を迎えた。
「おおおおっ!! 極厚ハムカツがいっぱいだぁぁ、これ俺の大好物!
しかも採れたてピーマンの青椒肉絲もウマそー!」
その日の夕方、モールの広場では、水脈発見とインフラ開通を祝う大宴会が開かれていた。
マリアンが巨大な鉄鍋を振り、特設のコンロから立ち上る凄まじい火柱が夕闇を照らしている。
「オラ、まずは道と水路を拓いた土建ギルドの男たち!
職人の魂がこもった『極厚ハムカツ定食』を食らいな!」
サクッ! ジュワァァッ! 分厚いハムの旨味とサクサクの衣が、重労働で疲れたミノや
ゴーリキたちの胃袋を暴力的に満たしていく。
「ガハハハ! この分厚さ、たまらねぇ! 疲れが吹っ飛ぶぜ!」
「そしてこっちも熱いよ、気ぃつけな! コボルトたちが手塩にかけて育てた
採れたて野菜のシャキシャキ感を殺さないように、強火で一気に仕上げた青椒肉絲さね!」
マリアンが大皿に山盛りの青椒肉絲をドカン!と置いた。
メッキーがさっそく箸を伸ばし、一口食べた瞬間、雷に打たれたように目を見開いた。
「……っ!? う、美味すぎるだちゅ! ピーマンの苦味が全くなくて、フルーツみたいに
甘いだちゅ! 細切りのお肉の旨味とタケノコの食感が完璧なハーモニーを奏でている……
これが、俺たちで切り拓いた大地の味……っ!」
「うおぉぉん! 自分たちで作った野菜が、おばちゃんの手でこんなに美味しくなるなんて……
生きててよかったぜ!」
バウも感極まって大泣きしながら青椒肉絲を頬張っている。皆が競い合うように皿に群がり、
笑顔で飯をかき込んでいる。
その光景を見渡しながら、メッキーは魔導板を片手に、少し胸を張って
語り始めた。
「ふふん、これでウチのモールの食糧自給率も水資源も完璧だちゅ!
サステナビリティな循環型アグリカルチャーの確立により、
強固なサプライチェーンが構築され、外部リスクに対するレジリエンスが……」
「はいはいはい!!」
ピシィィン! と、マリアンがいつもの巨大お玉で鍋を打楽器のようにして、メッキーの耳元
で大きな音を打ち鳴らした。
「鼓膜が破れるだちゅ!」
背中の美しく大きな翠色の羽根を揺らし、ふっくらとグラマラスな美女へと成長したマリアン
が、巨大なお玉を肩に担ぎ、仁王立ちでメッキーを見下ろしている。
「あんたさぁ、いつもいつも小難しい横文字並べてんじゃないよ!
サステナなんとかとか、レジリなんとかとか、そんな理屈でメシが美味くなるのかい?」
「えっ、いや、これは国家としての安定性を……」
「要するに!」
マリアンは、ズバッと一刀両断に言い放った。
「『自分たちで水掘って育てた野菜と、汗水流して拓いた道で食う飯は、最高に美味い!』
……ただ、それだけのことだろ!」
そのあまりにシンプルで力強い言葉に、広場が一瞬静まり返り……次の瞬間、ドッと爆笑の渦
に包まれた。
「ガハハ! その通りや! おばちゃんの言う通りやで!」
「メッキーさん、横文字多すぎっすよ!」
「ちゅはは! 負けただちゅ。どんなに立派なビジネス用語も、
おばちゃんの『美味い』の一言には敵わないだちゅね!」
メッキーも赤くなりながらネズミの髭を掻き、やがて大声で笑い出した。
道を拓く鉄の意志と、砂漠を潤す命の水脈。
メガロモールステーツは、ついに外部に一切依存しない、助け合いの精神に満ちた
「自給自足の独立国家」としての盤石な基盤を手に入れたのだった。
最後まで読んでくれてありがとねぇ!
ミノさんたち土建ギルドの都市拡大と、メッキーやバウさんたちの水資源開発。
どっちが欠けても、この広大な街と農地は生まれなかったさね。
難しい理屈やビジネスの横文字も大事かもしれないけど、
一番大事なのは「汗水流して作ったものを、みんなで笑って食べる」ってことさね。
ウチのモールの極厚ハムカツと青椒肉絲、最高に美味しかっただろ?
システム(閻魔)からの出題【Q29:バウさんの『0点』の真相】
今回の第29話で、メッキーと共に砂漠をオアシスに変える奇跡を起こしたバウさん。
そんな彼が、そもそもシステムから「非効率な0点(無価値)」と烙印を押されていた
本当の理由は何かな?
① 禁忌「強欲な錬金術」で、砂を無理やり金に変えようとした「土の錬金術師」だったから
② 山の斜面を切り開き、重機も入らない「棚田」や小規模な農園を手作業で守り続けていたから
③ 実は農業の経験など一度もなく、ただ「土の匂いが好き」な土オタクだったから
「ヒントはねぇ、効率と数字しか見ないシステム様が一番嫌う『手間暇』ってやつさね 。
機械も入らないような厳しい場所で、石を積み、水を管理し、一歩ずつ田畑を広げていく……。
そんなバウさんの泥臭い執念が、この魔界の荒野で『命の水』を最高の福音に変えるための、
何よりの経験値になったのさ。
……さあ、あんた達なら、どれが本当の正解か、もう分かってるよねぇ?
応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、今日もよろしく頼むよ!」




