第25話 闇を飲み込む二色火鍋と、マリアン第三形態へ!
まいど! Q24の正解は「② 徹底した挨拶と、靴を揃える生活規律のプロトコル」だねぇ!
戦いの前に、まずは「型」と「心」を整える。伝説のSP・ジッジーさんらしい、本物のプロの
シゴキさね。挨拶もできない奴に、国なんて守れやしないんだよ。
さて、瓦礫の中から立ち上がったウチの『杏』に、性懲りもなくシステムの大規模粛清部隊
が再び攻めてくるよ。でも今回は、やられっぱなしじゃ終わらないさね!
それに、裏でコソコソ動いてる「闇」の連中もまとめて、わーしの鍋で煮込んじゃうよ!
【♪ 限界突破のファンファーレ(重厚なブラスが鳴り響く、反撃の昭和熱血アニメソング) ♪】
「さあて、今日も美味しくみんなでご飯をいただこうかねぇ!」
閻魔システムによるマリアンたちのモール大規模破壊から数週間後。
メガロモールステーツの崩れかけた外壁の向こうに、再び眩い黄金の光輪が群れをなして
現れた。
勇者アレン率いる「大規模粛清部隊」。彼らは、瓦礫となった聖域を完全に更地にするため、
容赦のない進軍を開始していた。
「フン、バグどもめ。まだしぶとく足掻いているようだが、
今日で完全にデータ消去してやる。全軍、魔力砲のチャージを開始しろ!」
アレンが冷酷な笑みを浮かべ、手を高く掲げた。
一方その頃、迎え撃つモール側の仮設陣地では、なぜか怒号が飛び交っていた。
「ちょっとペンジ! 厨房の仮設換気ダクト、これ低すぎるって言ったさね!
煙が抜けなくて目が痛いよ! あと50センチ、いや1メートル上に上げな!」
「ちょっ、女将!? 今それどころやないで!
外にアレンのアホ部隊が来とるんや!」
「敵の都合なんか知るもんかい!
こっちは命懸けでスープの仕込みをしてるんだよ!
後でいいから、絶対ダクト上げとくんだよ!」
「……予測座標、誤差ゼロ。ミノさん、防壁展開お願いします。
女将のダクトは僕が後で糸で引っ張り上げときますから」
二階の仮設事務所から、蜘蛛の獣人シュンの冷静な声がインカムを通じて響き渡る。
ズガガガガァァァンッ!!
アレンが放った極太の魔力砲が直撃する寸前、地面が爆発するように盛り上がり、分厚い鋼鉄
と岩で構成された「可動式防壁」が瞬時に目の前に姿を現す。魔力砲は表面の装甲を焦がした
だけで、完全に弾き返されてしまう。
「なっ……!? なんだあの壁は!」
「驚くのは早いぜ、エリート気取りの坊ちゃん!」
防壁の上から、巨大な斧を担いだミノタウロスのミノが見下ろして鼻で笑う。
「ペンジの野郎が造った耐魔導装甲と、俺の建築美学の結晶だ!
テメェらの単調な攻撃パターンなんざ、シュンのネットワークで全部筒抜けなんだよ!」
「各員、プロトコル通りに動け。一歩も引くな」
ジッジーの低く静かな号令と共に、崩れた外壁の影から、屈強な鬼人族の荒くれ者たちが一斉
に飛び出した。
彼らは以前のように力任せに武器を振り回すだけの烏合の衆ではない。ジッジーの過酷な訓練
によって「徹底した規律」を叩き込まれ、完璧な連携で動く『自警団』へと生まれ変わっていた
のだ。
「うおおおおッ! 俺たちの居場所は、俺たちで守るッ!」
「前列、盾を構えろ! 後列、槍衾だ! 押し返せ!!」
鬼人族の放つ一糸乱れぬ壁が、システム側の兵士たちの進軍を完全に食い止め、逆に押し返し
始めていた。
「ええい、手こずるな! 単なるバグの寄せ集めだろうが、この無能どもが!」
アレンが焦りを顔に滲ませたその時、戦場の側面の瓦礫に潜んでいた真っ黒な影の集団が、
不気味な笑い声を上げて姿を現した。
「ヒヒッ……システムの手先とバグの潰し合い。面白ぇなぁ」
「おいお前ら、今のうちに両方とも裏から喰っちまえ。
混乱に乗じて、あのモールの物品を根こそぎ奪い尽くしてやれ」
彼らは魔界の闇に潜む『魔族』の暗殺部隊だった。
光のシステム部隊、闇の魔族、そしてマリアンの自警団。三つ巴の混沌とした殺し合いが
始まろうとした、まさにその瞬間。
――カン、カン、カァァァンッ!!
戦場の殺伐とした喧騒を切り裂くように、澄み切った中華鍋の打音が響き渡った。
「……おいおいおい、あんたたち!
わーしの店の前で、勝手にドンパチやってんじゃないよ!」
瓦礫の中央に、いつの間にか巨大な円卓と、それを囲むように設置された特大の鍋が据えられ
ていた。
グレーのランドセルを背負ったちび女将・マリアンが、巨大なお玉を肩に担ぎ、仁王立ちで
戦場の全員を睨みつけている。
「な、なんだあのバグは……戦場のど真ん中で、料理だと!? ふざけるな、撃て!」
アレンが呆然としながらも命令を下すが、マリアンは全く動じない。
彼女の目の前にある鍋は、真ん中でS字に仕切られた『二色火鍋』だった。
片方には、大量の唐辛子と花椒が真っ赤に煮えたぎる、刺激的な『麻辣紅油』。
もう片方には、魔界巨獣の骨を何日も煮込んで白濁させた、濃厚で優しい『白湯』。
「神崎! 油、いくよ!」
「はい、女将!」
ジュワァァァァァァッ!!
神崎が熱したごま油を鍋に注ぎ込むと、二つの全く異なる極上の香りが爆発的に立ち昇り、
戦場全体を暴力的なまでに覆い尽くした。
「腹が減ってちゃ、戦もできないだろ!
光だか闇だか知らないけどね、四の五の言わずに座って食いな!」
マリアンの固有能力【日常平和領域】が、かつてない規模で展開される。
アレンたちシステム部隊の放つ「殺意」も、魔族たちが放つ「悪意」も、その領域に触れた
瞬間、すべてがマリアンの鍋を煮立たせるための『火力』と『出汁』へと強制変換されていく。
「くそっ、体が……剣が、重い……!
な、なんだこの匂いは……っ! 胃袋が、暴れ回っている……っ!」
「ヒィィッ……闇の魔力より、腹の虫が……鳴りやがらねぇ……っ!
たまらん、一口だけ……」
光の兵士たちが武器を取り落として膝をつき、闇の魔族たちも凶悪な爪を引っ込め、ふらふら
と円卓の方へ引き寄せられていく。
マリアンは、麻辣紅油の鍋には新鮮な肉やモツを、白湯の鍋には
コボルトたちが育てた甘い野菜を次々と放り込み、お玉で手際よく取り分けては、彼らの前に
ドンッ! と突き出した。
「ほら、さっさと食べな! 熱いうちに食うのが、一番の正義さね!」
システムの兵士も、魔族も、そして自警団の鬼人族たちも。
本来なら絶対に相容れないはずの者たちが、同じ円卓を囲み、同じ火鍋をつつき始めた。
「……カハッ! な、なんだこの赤いスープ!
辛い、痛い、でも……止まらない! 身体の芯から力が湧いてくる!」
「こっちの白いスープ……優しすぎる……。
俺たちがずっと暗闇の中で求めてた、母ちゃんの温もりだ……っ」
「おいシステム兵! そこにある豚肉、俺によこせ!」
「ふざけるな魔族! これは俺が育てた肉だ! ほら、代わりにこの白菜を食え!」
光の兵士も闇の魔族も、顔を真っ赤にして汗と涙を流しながら、一心不乱に火鍋を貪り食う。
そこには、数字の優劣も、種族の壁もなかった。ただ「美味い飯を食って生きている」という、
絶対的な真実だけがあった。
「あ、あり得ない……。
システムの兵士が、魔族と肩を並べて飯を食っているだと……!?
こんな非効率なバグ、認められるはずが……っ!」
アレンが一人絶叫するが、もはや彼に従う者は誰もいなかった。
現世の閻魔モニターでは、この前代未聞の「敵味方入り乱れての大宴会」に、視聴者からの
『いいね』、そして熱狂的な応援メッセージが、天文学的なスピードで殺到していた。
『マリアン最高だ!』
『飯の力で光と闇の戦争を止めやがった!』
『おばちゃんの火鍋、マジで美味そう……!』
何十万、何百万という現世からの応援ポイントが、黄金の光の粒子のシンクロバフとなって
魔界の空から降り注ぎ、マリアンの小さな身体に一気に流れ込む。
≪♪ システム音停止 ―― 荘厳にして無機質な「天の声」が、世界を書き換えるように鳴り響く ♪≫
〓〓〓〓〓【 限界突破:シンクロレート測定不能(∞)!! 】〓〓〓〓〓
『 告。特異点種族・ランドセルちび女将の魂の器に、許容量を遥かに超える熱量の流入
を検知。――既存の評価軸の規定値を完全に突破しました。これより、世界の理を
再構築し、第3形態への進化プロセスへと移行します―― 』
ピキ、ピキピキピキ……ッ!パリィィィィィィィンッ!!!!
空間に走ったヒビが砕け散るのと同時に、マリアンの身体が圧倒的で神々しい黄金の光の繭
に包まれた。
現世からの「おばちゃん負けるな!」という祈りと、二色火鍋を囲む光の兵士と闇の魔族たち
からの爆発的な「感謝」がシンクロし、莫大な物理エネルギーとなって彼女を再定義していく 。
『 領域内の敵意を『出汁』へと変換する究極能力、固有スキル【極楽厨房】を獲得。
……進化、完了しました』
【♪ 奇跡の覚醒ファンファーレ(神々しいコーラスと重厚なパイプオルガンの圧倒的カタルシス) ♪】
光の繭が弾け飛び、眩い粒子が戦場に舞い散る。光が晴れた後、そこにあったのは、もはや
幼い「ランドセルちび女将」の姿ではなかった。 背中には、敵意を出汁に変える火力を扇ぐため
の、神々しく輝く大きな翠色の羽根 。羽根はランドセルが変化した物であったが、もはやその原型
は消滅していた。
耳はピンと尖ったエルフのような形になり、その身体は、全てを包み込むような圧倒的な母性
と安心感のある、ふっくらとグラマラスな美女へと劇的な成長を遂げていた 。
光(天使)と闇(魔族)を等しく胃袋で救済する。
第3形態――【極楽厨房の饗食天使】の誕生である 。
「……あらやだ。急に目線が高くなったと思ったら、
随分と背が伸びて、視界が良くなったじゃないのさ」
マリアンは戸惑いながらも、自身の身体の変化を確かめるように、しなやかに伸びた手足を
見つめた。
ぷにぷにだった赤ん坊のような頬は、大人の女性らしい柔らかな輪郭へと整い、その表情には、
変わらぬ下町おばちゃんらしい快活な慈愛が宿っている。
ピンと尖ったエルフのような耳は、周囲のはらぺこたちの胃袋が鳴る音を、一音たりとも
逃さぬように小刻みに震えていた。
その身体つきは、単なる美女の枠を超えている。全てを包み込み、どんな絶望からも救い
上げる圧倒的な母性と安心感を体現した、ふっくらとグラマラスで、たおやかな曲線美。
それはまさに、数万人、数十万人の命を預かる「国家の母」にふさわしい、豊穣なる肉体で
あった。
「それに……見ておくれよ、この羽根!
翠色にキラキラ光っちゃってまぁ……。
これじゃ厨房の換気ダクトにぶつかって、毎日の掃除は大変そうだけどさぁ」
「でも、これだけ立派な『団扇』がありゃ、
最高の火力で『国家規模のまかない』が作れるってもんさね!」
マリアンは自分の新しい姿を見下ろし、パタパタと背中の大きな羽根を動かしてみた。
その羽根が一煽りするだけで、厨房の火力が完璧にコントロールされ、さらに美味そうな匂い
が辺り一面に広がっていく。
ガコンッ!!
「あいたっ!?」
やはりである。その羽ばたいた羽根の先端が、上部の金属管に思い切りぶつかった。
「……ちょっとペンジ! だから厨房の換気ダクト、
低すぎるからもっと上げろって言ったじゃないのさ!!
この羽根がガッツリ引っかかるよ! これじゃ毎日の掃除も大変なんだからね!!」
美しきエルフの姿を借りた究極の肝っ玉母ちゃんは、不敵な笑みを浮かべて再び巨大なお玉を
握り直した。
見た目は神々しい天使になっても、その口から飛び出すのは相変わらずの下町おばちゃん全開
の愚痴だった。ついさっきまでは、幼女とおばちゃん言葉のギャップに、脳内バグを調節するのに
苦しんだ部下たちだったのだが、ようやく慣れてきたと思っていたら、今度はグラマラスな
エルフ風美女とおばちゃん言葉の、新しい脳内バグとの戦いが始まっていた。
サトルもメッキーも、そして火鍋を囲んでいたかつての敵たちも、全員がその脳内バグに堪え
きれずに大爆笑を巻き起こした。
システムの鉄槌を退け、光も闇も胃袋で飲み込んだマリアン。
彼女が手に入れた新たな力は、この瓦礫の街を、誰もが笑顔で暮らせる巨大な国家へと押し
上げるための、最大の福音となるのだった。
最後まで読んでくれてありがとねぇ!
システムの兵士も、暗殺に来た魔族も、みんなでひとつの鍋をつついちまう。
これぞ下町中華の「同じ釜の飯」の魔法さね! 二色火鍋の熱気で、わーしもついに第3形態
【極楽厨房の饗食天使】に進化しちゃったよ。
羽根がジャマで厨房の掃除が面倒だけど、これでさらに美味い飯が作れるってもんさ!
敵すらも飲み込んだウチのモールは、いよいよ次回から本格的な「国造り」のフェーズに
入るよ。荒くれ者たちも、ちゃんと就職先を見つけなきゃね!
システム(閻魔)からの出題【Q25:マリアン、奇跡の神進化!】
ついに第3形態へと覚醒し、もはや「ちび女将」ではなくなったマリアン。
その神々しくも圧倒的な母性を放つ新たな容姿は、次のうちどれかな?
① 敵意を出汁に変える火力を扇ぐ、翠色の羽根が生えた「天使」
② ピンと尖った耳を持つ「エルフ」
③ 天使の羽根もエルフの耳も併せ持つ、ふっくらグラマラスな「絶世の美女」
「ヒントはねぇ……ふふっ、欲張りな大衆中華の店主なんだから、一つに絞る必要なんて
ないのさね! さあ、あんた達ならもう、どれが正解か分かってるよねぇ?
応援の評価☆☆☆☆☆とブックマークのバフ、よろしく頼むよ!」




