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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
第二章:モールテナントと眷属の拡大編

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23/23

第23話 システムの鉄槌と崩れゆく聖域!

 まいど! Q22の正解は「① 土壌改良と農業技術」だねぇ!

 システムの連中は「非効率」だってバカにして切り捨てたけど、コボルトたちの泥だらけの

優しい手が育てた野菜は、どんな冷たい合成食より美味しくて、命の力がギッシリ詰まってる

のさね。

 さて、彼らが加わって循環農業の基盤も完成し、ウチのモールはますます活気づいていたん

だけど……。

 順調にデカくなりすぎたせいで、ついに「あいつら」を本気で怒らせちまったみたいなんだ。

 今回は、冷徹なシステムが放つ『大規模粛清部隊』の強襲。


【♪ のんびりとした昭和の下町ジャズ(アップライトベースとピアノが軽快に跳ねるBGM) ♪】


「さあて、今日も元気に鉄鍋振っていこうかねぇ!」

 メガロモールステーツの朝は、いつも通り賑やかに始まった。

 一階のセントラルキッチンには、コボルト族のバウたちが早朝から丹精込めて収穫したばかり

のネギや、朝露を纏っていきいきとした葉野菜が所狭しと並べられている。

 一方、横の調理スペースでは、凄まじい鉄鍋の打音がみんなの目を覚ましていた。


「はいよ! 極旨天津飯三丁、エンザーキー特盛り、追加入ったよ!!」


 ちび女将・マリアンが吠える。その背負ったグレーのランドセルからは、半透明に輝く魔力の

腕が四本、五本とニョキニョキ展開されていた。能力【お玉の舞】である。


カカカカカンッ! ジャァァァァッ!!


 本物の腕がお玉で巨大な中華鍋を煽り、二本の魔力の腕が同時に別の鍋で黄金色の餡を煮立

たせる。さらに別の腕が、揚げたてのエンザーキーを驚異的な速さで皿に盛り付けていく。


「ヒヒッ、もたもたしてると衣のサクサクが死んじまうさね!

  神崎さん、卵はもっとフワッフワにね!」


「御意、女将!!」


 実戦的なお団子頭を揺らし、多重展開された腕を千手観音のように操るマリアンの姿は、

まさに厨房の支配者そのものだった。


「はいよ! 極旨天津飯三丁、エンザーキー特盛り、上がりさね!」


 ふんわりと焼き上げられた卵は、まるで雲のように軽やかで、その上からかけられたマリアン

特製の黄金色に輝く甘酸っぱい餡が、とろりと食欲を刺激する艶を放っていた。横に添えられた

エンザーキーは、醤油と生姜を効かせた衣がカリッと黄金色に揚がり、肉汁を閉じ込めたまま

湯気を立てている。


「うめぇぇぇっ! なんだこのフワフワの卵と、

 薄衣にオリジナルスパイスのパンチの効いた唐揚げは!」


「いくらでも食えちまうぜ! おばちゃん、おかわり頂戴!」


 カウンター席では、モールに居着くようになった鬼人族の荒くれ者たちが、皿に顔を突っ込む

ような勢いで料理を掻き込んでいた。システムから低評価をつけられ、荒んだ生活を送っていた

彼らにとって、今、マリアンの作る飯は唯一の救いであり、心の拠り所になっていた。


「ヒヒッ、さあ遠慮しないでたくさんお食べ!

 腹が減ってちゃあ、勇気も元気も、なーんも湧いてこないからねぇ。

  安心しな、あんたたちの分はここにたっぷり仕込んであるさね!

  まずはガツンと食べて、それからわーしと一緒に笑顔になりな!」


 マリアンは巨大なお玉を肩に担ぎ、グレーのランドセルを揺らしながら満足げに笑っている。

 その光景は、戦いとは無縁の、あまりにも平和な日常の縮図だった。

 二階の【中央モール事務所】では、サトルやメッキーが売上の伸びを示すモニターを眺めながら

顔を見合わせているし、一階の警備室ではジッジーがのんびりとパイプを燻らせている。

 誰もが、この温かく泥臭い「下町の日常」が、明日も明後日も、ずっとずっと続くと信じて

疑わなかった。


 しかし、その平和は、一匹のカラスの「ガー、ガー」という鳴き声と共に、ガラス細工が砕け

散るように唐突に終わりを告げた。


 《♪ 審判のレクイエム

  (無機質で圧倒的な電子音と、冷酷なクワイアが響き渡る警告音) ♪》


 ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ!


 二階の【中央モール事務所】で、ゴブリンのサトルが管理する魔導板(ダッシュボード)が、突如と

して毒々しい真紅に染まり、けたたましいエラー音を吐き出し始めた。


「な、なんだ!? サーバーへのアクセス負荷じゃない……!

 トラフィックの異常検知……いや、違うっす! 外部からの物理干渉だ!」


 サトルが顔面を蒼白にしてキーボードを叩く。隣でネズミ獣人のメッキーが、震える指で

ホログラム画面を操作し、絶望的な数値を読み上げた。


「ちゅっ……サトル社長!

 聖域の境界線に、計測不能の魔力反応が急接近してるだちゅ!

 これは……システム直轄の『物理的な消去(デバッグ)プログラム』だちゅ!

 間に合わないだちゅ!」


 同時に、一階の【警備室】のモニターが次々とブラックアウトし、ノイズの海に飲み込まれて

いく。


「……第一防衛ライン、突破された。早すぎる!」


 猫獣人のジッジーがインカムを握りしめ、パイプを噛み砕かんばかりに奥歯を鳴らした。


『こちらヤードのウサミチ! ジッジーさん、外壁の前に……敵です!

 少数ですが、全員が桁外れのポイント数……いや、神に近いオーラを纏ってます!』


 モールの正面玄関、ミノが心血を注いで築き上げた堅牢な城壁の前に、眩いばかりの黄金の

光輪を纏った一団が音もなく降り立った。閻魔システムに選ばれた高得点エリート、

『勇者パーティ』と『システムの執行官』たちである。

 先頭に立つ男、勇者アレンは、彫刻のように整った美しい顔を醜く歪め、あからさまに不快

そうに鼻を覆った。


「……くさいな。油とニンニク、それに、下等な亜人どもの汗が混ざった

 ドブのような臭いだ。吐き気がするよ」


 アレンのその言葉に、背後の聖女や戦士たちが「全くですわ」「浄化魔法が必要ですね」と、

無機質な笑みを浮かべて同意する。

 彼らの瞳には、生気がない。システムの望むNPC(いい子ちゃん)として最適化され、感情

すらも効率化された成れの果ての姿だった。



 アレンの脳裏に、前世の記憶がフラッシュバックする。

 前世での彼の名は、阿久津 蓮(あくつ れん)。大手広告代理店やITコンサルを渡り歩いた、

自称「勝ち組」のビジネスエリートだ。


(……そうだ。前世のオフィスも、このように清潔で無機質で、無駄な『体温』などなかった)


 阿久津は、他人の手柄を横取りする天才だった。部下が不眠不休で書き上げた企画書を、さも

自分がゼロから考えたかのように上層部へプレゼンし、反対する有能なライバルには

「効率が悪い」とレッテルを貼って組織から追い出した。上司の靴を舐めるような媚びへつらい

と、数字さえ良ければ何をしてもいいという徹底した成果主義。

 システムは、そんな彼の「他人をリソースとして使い潰す効率性」を高く評価した。他者の心

を壊しても、組織の利益(数字)に貢献すれば「徳ポイント」として加算される

――それがこの世界の狂った「理」だった。

 その結果、彼は現世で「中身は空っぽの権化」でありながら、魔界では数億ポイントを持つ

「正当判定を受けた勇者」として君臨することになったのである。


 アレンは、マリアンたちが泥水の中で積み上げてきた「人情の熱量」が詰まったモールを、

まるで道端のゴミを見るような冷ややかな目で見据えた。


「ここが、システムに逆らう0点のバグが作ったゴミ溜めか。

 ……まったく、泥臭くて反吐が出る。

 管理都市(ディストピア)のニュートリ・ブロックでも食って、

 無機質に生きていれば消されずに済んだものを」


「さっさと消去(デバッグ)して、ボーナスポイントを稼ごうぜ。

 こんな違法建築、一秒で十分だ」


 アレンが冷たく指を鳴らした瞬間、天から光の柱が降り注いだ。

 システム補正という絶対的なチートを与えられた魔法が、城壁に向かって容赦なく放たれる。


 ドガァァァァァァァァァァンッッッ!!!


「なっ……! 俺の……俺たちの城壁が!!」


 モールの奥で作業していたミノタウルスのミノが、絶望の叫びを上げた。

 彼とゴーリキが何日も徹夜して組み上げ、どんな強力な魔獣の攻撃も弾き返してきた、

100年先まで揺るがないはずの巨大な石壁が、まるで薄い紙切れのように、たった一撃で粉々に

吹き飛ばされたのだ。


「ふざけんじゃねえ!

 テメェら、誰のシマで暴れてるか分かってんのか!」


 竜人族のザンが咆哮を上げ、巨大な戦斧を振るって勇者パーティへと突進する。

 その後ろから、ゴーリキが丸太のような腕で巨岩を投げつけた。

 しかし――。


「無駄だ。バグの分際で、システムに愛された俺たちに傷をつけられるとでも?」


 キィィィン!


 ザンの全力の一撃も、ゴーリキの巨岩も、勇者たちの周囲に展開された見えない壁

『システム絶対防御』に触れた瞬間、無機質な電子音と共に完全に無効化された。

 物理攻撃が空間そのものに阻まれ、手応えすら感じさせない。


「なっ……! 攻撃が、透過しただと!?」


「遅いな。不法投棄のゴミは処分だ」


 執行官の一人が無造作に剣を振るうと、ザンとゴーリキの巨体が、まるで羽虫のように宙を

舞い、モールの外壁に激突して血を吐いた。


「ザン! ゴーリキさん!」


 ウサミチが悲鳴を上げる。


「……フム。システム補正のチートか。

 我が防犯プロトコルでは、この規格外の暴力は計算式に収まらん……!」


 建物の影からジッジーが放った、死角からの極細の魔力ワイヤーも、勇者アレンは振り返りも

せずに指先一つで焼き切った。


「小賢しい猫だ。消えろ」


 アレンの手から放たれた光弾が、警備室の防音魔法隔壁を紙屑のように貫通し、ジッジーを

吹き飛ばした。


「ジッジーさん!!」


 サトルとメッキーが二階の窓から絶叫する。

 圧倒的。あまりにも理不尽で、規格外な暴力。努力や工夫、人情や技術といった、マリアン

たちが泥水の中で積み上げてきたすべての「熱量」が、冷酷な「チートスキル」の前に蹂躙

されていく。


 バキバキバキッ! 轟ォォォォ……!


「アカン! ワイの工場が……ドワーフのオッサンら、逃げろ!!」


 東大阪の誇りであったペンジの『ファクトリー・ウイング』の一部が炎に包まれ、崩れ落ちる。

 ミクたちが一生懸命に描いた手作りのPOPが、無残にも燃えながら灰となって空へと舞い

上がっていった。


「……あーあ。汚いネズミやらゴブリンやらがチョロチョロと。

 本当に胸糞の悪いバグ空間だな。……おい、元凶の『0点の丸虫』はどこだ?」


 アレンが瓦礫を踏み越え、ゆっくりと『(あん)』の厨房へと歩みを進めてくる。


「女将……逃げて、ください……っ!」


 血だらけになった神崎玲二が、真っ白な割烹着を赤く染めながら、包丁を杖にして立ち上がり、

アレンの前に立ちはだかった。


「おや? お前、システムから『特級調理師』の称号を与えられた神崎じゃないか。

 なぜこんなバグの手先に……まぁいい、裏切り者は処分だ」


 アレンの剣が、無慈悲に振り下ろされようとしたその時。


 カァァァァンッ!!


「……あんたたち! 人の家を勝手に壊して、うちの大事な家族を傷つけて

 ……どういうつもりだい!!」


 巨大な鉄のお玉が、アレンの剣をギリギリで受け止めていた。

 グレーのランドセルを揺らし、炎を背に受けて仁王立ちするちび女将・マリアン。

 その瞳には、これまでにないほどの激しい怒りの炎が燃えたぎっていた。


「バグの分際で、そのふざけた調理器具を武器にするつもりか?」


 勇者アレンが冷酷に指を弾くと、虚空から無数の「光の矢(システム補正攻撃)」が、

流星群となってマリアンへ降り注いだ。


「調理器具をバカにするんじゃないよ!

 これは、うちらの家族を守る大事な『道具』さね!!」


 マリアンが叫ぶと同時に、背中のランドセルから魔力の腕が最大数展開される。その手には、

使い込まれた鉄のお玉や、ペンジが叩き直した極厚のフライパンが握られていた。


キィィィィンッ! カカカカカンッ!!


 迫り来る光の矢に対し、マリアンは多重展開した腕を高速回転させ、すべての打撃を鉄のお玉

で弾き落としていく。料理を捌く時のあの精密なリズムが、今は理不尽な暴力を拒絶する鉄壁の

旋律へと変わっていた。


「……フム。我が光の剣速を超えた、異常な反射速度。だが――」


 アレンの冷たい視線の先で、どれだけお玉で防ごうとも、システムの莫大なエネルギーは

鉄を赤く熱し、マリアンの魔力の腕を一本、また一本と焼き切っていく。


「あ、ぐぅ……っ! まだ……まだ、鉄鍋を振る力は残ってるさね……!!」


 火花を散らし、ボロボロになりながらも、マリアンは仲間たちの前に立ち塞がり、最後の一本

のお玉を握りしめた。


「おお、やはりお前がバグの親玉らしいな。

 その技といい、眼力といい、他のゴミ屑たちとは全く違う数字を叩き出している」


「数字がなんだ! システムがなんだ! お腹を空かせた客の居場所を、みんなの笑い声を

 ……よくも、よくも踏みにじってくれたねぇ!!」


 マリアンがお玉を振りかざし、『日常平和領域』の全魔力を込めてアレンへと突進する。

 だが。


「――無駄な足掻きだ。0点は、黙って消去されろ」


 アレンが冷たく言い放つと同時、システムから供給された莫大なエネルギーが、アレンの掌

から極太のレーザーとなって放たれた。


「「「ちび女将!!」」」


 シュンの糸がマリアンの身体を強引に引き寄せ、間一髪で直撃を免れたものの、その余波だけ

でマリアンは遥か後方へと吹き飛ばされ、激しく地面を転がった。


「あ、ぐぅ……っ」


「フン。今日は挨拶代わりだ。

 この汚いバラックは、明日までに完全に更地にして、

 システムに最適化された新しい管理施設を建ててやる。

 ……バグ共、震えて夜を明かせ」


 アレンたちが背を向け、黄金の光と共に転移して消え去った後には、ただ凄惨な地獄だけが

残された。

 パチパチと燃える炎の音だけが、虚しく周囲に響く。倒れ伏し、呻き声を上げるザンや

ジッジー、神崎たち。エルザ率いる医療部隊が泣きながら駆け寄り、懸命に応急処置を始めている。


「う、嘘だろ……。俺たちの、店が……」


 サトルが瓦礫の山となった正面玄関にへたり込み、絶望の涙をこぼした。

 レゴブロックのようにガチッと繋がり、不沈艦だと思われていた巨大モールは今、無残に

半壊し、黒い煙を上げていた。

 それは、マリアンたちが魔界に降り立ってから、初めて味わう完全なる「敗北と喪失」の味

だった。

 最後まで読んでくれてありがとねぇ……。

 ごめんよ、今回はおばちゃん、気の利いた冗談を言う元気もないさね。

 ミノさんが造ってくれた壁も、ペンジの工場も、ミクちゃんたちがデコレーションしてくれた

看板も、みんなの笑顔も……システムの冷たい暴力で、一瞬で壊されちまった。

 これが、0点と決めつけられたうちらの現実なのかい……?

 でもね、あんたたち。うちらはまだ、生きてる。下町中華の火は、こんなことじゃ絶対に消え

やしないさね!


 システム(閻魔)からの出題【Q23:勇者たちの力の源】

 今回、ミノさんの強固な城壁を紙切れのように吹き飛ばした勇者アレンたちの

「チート級の力」。そのエネルギー源となっているのは何かな?


 ① 生前の善行(徳ポイント)をシステムから前借りした力

 ② 日々の過酷な修行で培った筋肉と魔力

 ③ 現世からのアンチコメントによる負のエネルギー


「ヒントはねぇ……奴らが偉そうにひけらかしていた『数字』さね。自分の力じゃなく、

 システムから与えられた薄っぺらい力なんだよ。

 ……さあ、あんた達なら、どれが本当の正解か、もう分かってるよねぇ?

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