06-04.休暇
「皆の不安は理解したわ」
少々急ぎすぎていたのかもしれない。
おおよそ三ヶ月。私たちは必死に働き続けてきた。
魔獣を回収し、勢力を拡大し、また魔獣を回収し。
遂にはその魔獣たちをも利用して。
理想の世界を作り上げようと走り続けてきた。
「ここらで休息にしましょう。冬の休みの間、私たちは何もしないわ。少し変わった世界を見て歩きましょう。観光がてら。のんびりと。ゆっくりと。目的もなく。自由気ままに」
「「「「賛成!!」」」」
「世界を見るとは、何も遠い場所に限らないわ。しっかりと焼き付けなさい。今の故郷の姿を」
「「「「がってん!!」」」」
「私たちの旅路はこれからもっとずっと永いものとなるわ。戦い抜くための心を養いなさい。休みの間だけと言わずせめて学園を出るまでは。時間ならいくらでもあるのだから」
「「「「はい!!」」」」
「よろしい。解散!!」
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「お姉ちゃんは行かないの?」
「クーちゃんを待ってるんだよ」
「たまには一人で動いてみなさいな。子守もお休みよ」
「なら恋人と過ごすよ」
「あら。それはイロイかしら? それともヒマリ? 本命はティグリス? モテる女は選り取り見取りね♪」
「何を拗ねてるのさ。わたしはクーちゃんを待ってるのに」
「あら意外だわ」
「これ以上意地悪言うなら引きずってくよ」
「それもいいわね。少し乱暴にされたい気分かも」
「良いんだね? 休みの間ベッドから出さないよ?」
「流石に狭すぎるわ」
「ならどれくらい?」
「部屋一つくらいは欲しいわね」
「それが適切な心の距離なの?」
「いくら私がお姉ちゃんを愛しているからって、四六時中張り付いていられたら疲れてしまうわ」
「なんなら膝の上にいてくれてもいいのに。一月くらい」
「妹離れの出来ないお姉ちゃんね」
「だから待っているんだよ。早く行こうよ。クーちゃん」
「少し考えたかったの。察しなさいよ」
「何を考えていたの? 全部教えて」
「別に。語るようなことでもないわ」
「なにさ。勿体ぶって」
「早くお姉ちゃんも行ってくれないかなって。そうしたら大きな溜息をつけたのにって。そう思っていたのよ」
「もう少し勿体ぶっていてほしかった……」
「でしょうね」
「何が不満なのさ」
「違うわ。自分に呆れているだけよ」
「まあそうだね。ブラックはダメだよね。クーちゃん、休みって概念を持ってなかったし」
「もっと早く言いなさいよ。こちとら社会人経験なんて無いんだから」
「ごめん。そこは本当にわたしたちの落ち度だ。もっとクーちゃんに休むよう言うべきだった」
「……そこで謝られるとバツが悪いじゃない」
「やっぱり学園に行こう。クーちゃんはまだまだ知らないことばかりだ」
「王侯貴族の学園に通ったって休みの重要性は学べないわ」
「そうでもないよ。今どき週休二日祝祭日の休みが徹底されているなんてなかなか無いよ。あの学園は人道的に運営されているんだよ。驚くべきことにね」
「人道的……ねぇ……」
「あ、クーちゃんが魔王様らしく人外だって話じゃなくて」
「誰もそこまで言ってなかったじゃない!!」
「あはは♪ ごめんごめん♪」
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結局お姉ちゃんは付き纏ってきた。片時も休み無く纏わりついてきた。
「流石に鬱陶しいわ」
「またまたぁ~♪」
浮かれてるわね。ずっと。
「お姉ちゃんは何か見ておきたいものはないの?」
「クーちゃんの今。しっかり目に焼き付けてるよ♪」
永遠に変わらないでしょうが。私の姿は。
「……アルミディアって良い国よね」
「なにせクーちゃんのお母さんが守ってきた国だからね♪」
「……そうね」
「会いに行こうか。わたしも会ってみたいと思ってたんだ」
「……」
「会いたいでしょ? クーちゃんも。ママに」
「……うん」
「ならしっかり焼き付けに行こう♪ いっそクーちゃんママも仲間に加えちゃおうよ♪ 不老不死を与えて永遠に囲い込んでしまおうよ♪」
「……恐ろしいこと考えるのね」
「クーちゃんがやってることでしょ!? わたしたち家族全員結界で大切に包み込んで永遠の命を与えたんでしょ!?」
「そう……だったわね……」
「またそんな顔してぇ~……行くよ! クーちゃん!!」
お姉ちゃんは私の手を引いて立ち上がった。
私が動かないでいると、お姫様抱っこで運び始めた。
そのままティグリス(白虎形態)に乗り込んで旅立った。




