06-03.不安な気持ち
冬の休暇が迫る頃には幾人かのフィリアスも生み出した。
四神獣たちのフィリアス化も既に完了している。
フィリアスたちは魔王城に住まわせた。
フィリアスを増やす度に魔獣回収の効率も上がった。
世界中から殆どの魔獣が姿を消した。
その代わりに現れたのはダンジョンだ。
私たちは世界中無作為に現れるダンジョンをコアごと回収しては、世界各地に都合良く再配置していった。
人間社会にとって魔獣素材は必要不可欠だ。だからって私たちが牛耳るわけにもいかないものだ。今後は効率的に集めてもらうとしよう。私たちにとっても手間は省けるし。
「世界征服は順調だね。クーちゃん」
「人聞きが悪いわ。お姉ちゃん」
まったく。失礼しちゃうわ。
「今や全てのダンジョンはクーちゃんの管理化だ。どんな魔物が生まれるかもクーちゃんの指先一つ。そんなダンジョンが世界各地の主要都市近郊に配置されている。一斉に魔獣たちを溢れさせて首都を壊滅させることだって出来ちゃうね」
「言いたいことがあるのならハッキリ言いなさい」
「やっぱり危険だよ。クーちゃん。このままじゃいつか本当に魔王として討たれてしまうよ」
「今更何を言ってるのよ。それでもついて来てくれるって約束したじゃない」
「もちろん側にいるよ。この心が朽ち果てるまで」
「朽ち果てるですって? 私が信じられないの?」
「ううん。クーちゃんの術は完璧だ。わたしはあれから髪も伸びてない。きっと成長だって止まってる。いつまでも今の姿のままで生き続けられるんだろうね」
「そうよ。誰一人失わせやしないわ」
「うん。信じてる。けどさ。英雄って予想を超えてくるものでしょ。それが主人公というものでしょ」
「物語の読みすぎよ。私の治世が崩れる可能性は万に一つもありはしないわ」
「どうかな」
「お姉ちゃんは幸せじゃないの?」
「ううん。クーちゃんと過ごせる今が幸せだよ。だから不安になるんだよ。わたしはクーちゃんみたいに強くないから。きっといつかクーちゃんについて行けなくなる。その時わたしの心は朽ち果てる。身体は綺麗に残っていてもね」
「まだ半年も経っていないのよ」
「そうだね。こんな不安を感じるには気が早すぎるよね」
「そうよ。安心なさい。お姉ちゃんは強い人よ。私を置いて逝くことなんてありはしないわ」
「うん。そう在れるように頑張るよ」
「頑張る必要もないことよ。自然体でいなさい。後のことは全て私に任せなさい」
「うん。信じてる。大好きだよ。クーちゃん。いつまでも」
私もよ。お姉ちゃん。
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「クーちゃん!!」
「ぷいっ!」
「今日という今日こそ許さないよ!!」
「うるさいわね! お姉ちゃんだってティグリスと共謀してイロイの悪巧みに協力したじゃない!!」
「いつまで言ってるの!? それ随分前のことでしょ!?」
「絶対許さないわ! いつまでだって!!」
「あ~! そう! そういうこと言うんだね!!」
「言うわよ! 一生言い続けてやるわ!!」
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【ヒマリ視点】
「また喧嘩してるね。あの二人」
クーちゃんとアヤちゃんは些細なことでもよく喧嘩する。
普段は仲良し恋人姉妹なのに、ちょっとした行き違いですぐに言い争ってしまうのだ。
「最近多いよね~」
間違いなくイーちゃんのせいだよ。女神受肉事件の後からだもん。クーちゃんが少し怒りっぽくなったのって。
「あんなに熱々でしたのに」
なんならつい数分前までイチャイチャしてたよ。
「相変わらず仲が良いわね。あの二人」
たまにはノーラお姉ちゃんも年長者として止めてくれないかな。興味なさそうにしてないで。
「今日は皆暇なの? 最近すっかり魔王城に入り浸ってるよね」
「学園はお休みですの」
「そっか。休み始まったんだね」
「ヒマリお姉様はサボり過ぎですわ」
「こっちが忙しくて♪ つい♪」
「……クーちゃんもですわ」
「社会から抜け出すには少し早すぎるかもね」
「そうですわ。せめて学園には顔を出しませんと」
クラちゃんの言う通りだ。
英雄王女クーフェリアの役目は終わった。世界から魔獣の脅威は消え去った。今あるのは安全に管理されたダンジョンだけだ。そこは冒険者たちの活躍の場ではあっても、英雄が出る幕は無い。
第四王子は短い時間に十分な基盤を作り上げた。英雄王女の名前が価値を失いつつあっても、問題なく第一王子と張り合えている。
クーちゃんの名前はアルミディアから薄れつつある。
今はただ、少々不真面目でミステリアスな王女として、たまに学園に顔を出す程度だ。
これは本当にクーちゃんの望んでいた昼行灯のカタチなのだろうか。
似ているようで少しだけ違う気もしている。
そう思っているのはたぶんボクだけじゃない。
アヤちゃんもきっとそうだ。だから不安になるのだろう。
「行くんですの?」
「少しだけね。二人とも話してみようかなって」
「不安なのですわね。ヒマリお姉様も」
「クラちゃんは落ち着いてるよね。なんで?」
「クーちゃんを信じているからですわ」
「ボクだって……」
「ごめんなさい。意地の悪い答えでしたわ」
「本当は違うの?」
「いいえ。少し気恥ずかしかっただけなんですの」
「気恥ずかしい? ……そっか。そういうことなんだ」
「はい♪ わたくしたちはドキドキしているんですの♪ 学園をサボって秘密基地を作って♪ 不良さんになってしまったみたいなんですもの♪」
……あはは♪
「ですが。今は一番楽しい時期が過ぎて、不安を抱き始めている時ですの。このまま正道には戻れなくなるのかもしれないと。社会に復帰するのなら今のうちではないかと。そんな漠然とした不安が巣食い始めたところですの」
「……詳しいね」
「ですから気恥ずかしいのですわ♪」
「あはは♪ ごめんごめん♪」
これ以上は聞かないよ。
「あら。やっぱり行かなくて良いんですの?」
「後で皆で話し合おう」
「それが一番ですわ♪」
だね♪




