05-26.目標達成
「見つからない!? どういうことよ!?」
白黒結界を起動してオーガたちを殲滅した後、改めて逃げたボロ侍を追おうとしたものの、彼の姿はどこにも見つけることが出来なかった。
フィリアの特別な視界も、急遽呼び出したアヤメの風魔術でも、何故だか奴の現在地を特定出来なかったのだ。
「時間は殆ど経っていないのよ! まだこの島からだって出ていない筈よ!」
「ごめん……クーちゃん……」
『無理なものは無理よ、クー。今回は諦めなさい』
「納得出来るわけないでしょ!!」
アヤメもフィリアもなんでもう諦めているのよ!?
イロイ!!
『無茶言わないで~』
あんたそれでも神なの!?
『仕方ないじゃ~ん。神の職務からしたら些事だも~ん。人一人の行方なんて追ってられないよ~。元々注目してるならともかくさ~。クーちゃんだってシ◯シティとかやったことあるでしょ~。あれとおんなじ~』
くっ! 妙に具体的な例えを!!
「クーちゃ~ん! 船は見当たりませんの~!」
青龍に乗って上空から探すクラリスからも報告が届いた。
「クラちゃ~ん!! そのまま探し続けて~!!」
「はいですの~~~!!」
「……念話使えばよくない?」
「アヤメもよ! 諦めないで探しなさい!!」
「は~い……」
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結局ボロ侍は見つからなかった。
私たちはオーガたちの亡骸だけを領主に差し出した。
熊やワイバーンの時と違って、今回は魔獣の持ち帰りは無しだ。単に素材としての価値が低いのもあるけど、ここの面倒な領主に余計な物言いを付けられないようにするためでもあったのだろう。
その代わりではないけれど、何故かモミジが手土産として付いて来た。
「拙者! 奴を捕えぬ限り島には戻らぬ所存!」
とのことだ。
「ボロ侍とやらは鬼ヶ島から逃げて離島に渡ったんじゃないの? モミジが離島を離れて大陸に来ても意味なくない?」
いつもならアヤメの悪癖に過ぎないマジレスに感心したのは初めてかもしれない。
「拙者の勘が告げておりまする! 彼奴めは必ずや姫様の下に現れると! それに何より姫様との約束もございます! 姫様の勇姿を最後まで見届けて語り継ぐ所存!!」
私そういう意味で言ったかしら……。
きっとこの子もヒマリの同族なのね……。英雄を間近で見たい願望の持ち主なのね……。
「モミジはクラリスの専属護衛よ。うちに住むなら働きなさい。学園にも通いなさい。いいわね」
「ははっ!! 姫様のご配慮に感謝いたします!!」
別に普通の客人として扱っても良いんだけどね。こう言っておいた方が本人も気兼ねしないだろうし。
「私は先に休むわ。クラちゃんも、モミジの事はお願いね」
「はいですの♪ おやすみなさいませ♪ クーちゃん♪」
「うん。おやすみ~」
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これで当初予定されていた三箇所。西方の山村、南方の街道、東方の離島における魔獣討伐が完了した。
その間にも、各地の魔獣たちが次々と強大化しているとの報告を受けている。このままでは学園に通いながらの遠征は難しいかもしれない。週末だけでは手遅れになりかねない。それ程までに魔獣たちの変化が性急過ぎる。
これは当初の予定に無かった状況だ。
まるで世界が英雄を必要としているかのようだ。
「イロイ。そろそろ全部話しなさい」
『え~? 話してるよ~?』
「惚けないで頂戴」
『それよりさ♪ 北には行かなくていいの?』
「知っているでしょ。あの地には英雄がいるもの」
『このままじゃ引っ張り出されちゃうんじゃない? 引退した筈の大英雄が領地で活躍している。国の危機に放っておく手はない。為政者たちはそう考えるんじゃないかな?』
「……そう。あくまで話を逸らすのね」
『クーちゃんたちは間違ってない。それだけは保証するよ』
「それは誰にとって? この世界? 私たち? それともあなた?」
『全部全部♪ 皆幸せ♪ ハッピーハッピー♪』
「敵はこの世界のどこにもいないと言うの?」
『う~ん。どうかな~。敵って定義が難しいものだしさ~』
こいつ……。
『あっ!? 我を敵だと思ってる!? それは酷いよぉ! あんまりだよぉ!』
「そう思われたくないのなら話しなさい。身の潔白を証明してみせなさい」
『必要なことはちゃんと話すからぁ~!』
「イロイにとっての必要なことではなく、私にとって必要なことを話すのよ」
『クーちゃん無茶言い過ぎ! 我だってお姉様だけど、何でもかんでも妹の我儘を聞いてあげられるわけじゃないの!』
「イロイが勝手に始めたことでしょ! 私たちを転生させた理由を吐けって言ってんのよ! どこが我儘だってのよ!」
『我神ぞ!? たかが人間の小娘が対等だと思わないで!』
「そう! あんたは私たちを見下しているのね! それが本性なのね!!」
『親子みたいなもんだよ! 子どもがどれだけ我儘言ったって我慢して話を聞いてあげるくらいの余裕はあるよ! だからって何でもかんでも話すわけがないでしょ! そんなの無責任だもん! 子どもの成長に良くないんだもん! 分からず屋な子どもなら尚の事ね!!』
「子ども子どもうるさいわね! あんただって左遷された落ちこぼれじゃない! どの面下げて神様気取りを続けているのよ! あんた自分で言ってたじゃない! 自分はまだ一人前の神ですらないって!」
『守・護・神! 神として半人前だなんて言ってない!! 役職の話! わかるでしょ!!』
「その守護神として成したことを問い詰められてんのよ! 分からず屋はどっちよ! いいから素直に話しなさい!!」
『ダメだってば! 無理! はい! この話もうお終い!』
「終わらせるわけないでしょ!」
……。
…………。
………………。
……あんにゃろう。
『逃げたわね。神のくせに』
……どっちが子どもなんだか。




