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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
05.英雄王女

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05-25.強敵


 翌朝。早朝。



 私たちはドラコーに乗って空からオーガたちの島に奇襲を仕掛けた。


 とはいえ空から【断空】の雨を降らせたわけじゃない。それなら手っ取り早いけど、英雄王女が恐怖の象徴になっては意味がないからだ。


 私は堂々と正面から乗り込み、魔剣でオーガたちを斬り捨てていった。もちろん断空もこっそり纏わせている。私の剣の腕ではオーガなんて斬れやしないし。



「す、凄いのです!! これが英雄王女のお力でございますか!」


 そういうモミジにも驚いたわ。


 この子、本当に領主の娘なのかしら? 仕留めきれてこそいないけど、普通に前に出てオーガとやり合ってるわよ?



「クーちゃん! 次が来ますの!!」


 クラリスは出会った頃のように莫大な魔力を用いて水攻めするのではなく、師(ユキノ)を思わせる精緻な魔力コントロールで氷を自在に操っている。


 それを敵の足止めに利用し、私たちの補助に専念してくれている。今のクラリスならオーガたちを仕留めるのだってわけないのに、今回は英雄王女の活躍を優先してくれている。


 クラリスは誰かに合わせて戦うのが上手い。四神獣の巫女の中でも一番だ。私の親友はとっても凄いのだと見せびらかしてしまいたいくらいだ。



 私たちは順調にオーガたちを仕留めていった。



「あ~あ~。酷いことしやがってなぁ~」


 そんな時だった。一人の男が島の奥の家から出て来たのは。



「なにも殺すこたぁねえじゃんか」


 男は呑気に歩きながら周囲に視線をやりつつ、私たちに突っ込もうとしていたオーガたちを言葉も無しに下がらせた。



「ご所望になられたのは貴方の方でしょう? 国一番の美姫がこうして現れたのです。是非とも歓迎して頂きたいところですわ」


 私は剣を構えて男に向き直る。



「美姫だぁ? ……ガキしかいねえじゃんか」


 あ、そ。ふ~ん。そういうこと言うのね。



「私ではお気に召しませんか?」


「なんだその玩具は。それで剣士のつもりかぁ? 姫様ってんならもうちょいマシなもん持ってこいよ」


 私の魔剣を玩具ですって?



「まあいい。死合てえってんなら相手になってやらぁな」


 とは言いつつも、刀を抜きすらしていない。



「随分と余裕をお持ちのようですわね」


「ああ。これか。抜くまでもねえ」


 ……こいつ。



「ほれ。かかってこい。遠慮は要らねえぜ」


「はぁっ!!!」


 一気に距離を詰めて斬り掛かる。



「おっと」


 ひょいっと避けるボロ侍。



「はっ!」


「ふむ」


「やぁっ!!」


「ほうほう」


「このっ!!」


「中々悪かねえ」


 こいつ!!!



「なんでそんな玩具使ってんだ? パチパチ光ったって何にもなりゃしねえじゃんか。まさか死合の場に試作品でも持ち込んでんのか? 感心しねぇなぁ。そういうんはよぉ」


 なっ!? 全部見抜かれてる!?



「っ! 本当に玩具だと思うなら受けてみなさいよ!!」


 ちょこまかちょこまか避けてんじゃないわよ!!



「そりゃ無理だ。あんたの魔術を防ぐ術がねえ」


 どこまで!?



「おれぁ、眼は良いが、魔術の才はからっきしでねぇ」


「きゃっ!?」


 蹴られた!? いつ!?



「くそ硬えなぁ。これだから魔術師ってやつはよぉ」


「クーちゃん!」


「ダメよ! クラちゃん!!」


「んだ? 別に構わねえぞ。二人でも三人でも。そっから安心しろ。おれぁ、ガキは殺らねえ主義なんだ」


「ならば!!」


「っと。危ねえ危ねえ」


 いつの間にか背後に回っていたモミジがボロ侍の首を落とそうと刃を振るうも、ボロ侍は背後を見もせずに避けてしまった。



「へぇ。こっちのガキも悪かねえ。むしろ一番マシじゃねえか。玩具振り回して英雄ごっこに勤しむ姫さんや、いまいち殺意もねえお嬢様より断然見どころがあるってもんだぜ」


「拙者、口数の多い殿方は好きません」


「ガキには興味ねえつってんだろ」


 モミジは素早い身のこなしで次々に斬り掛かっていく。


 しかしその全てがギリギリの所で避けられている。ボロ侍には掠りもしていない。実力差は明白だ。



「このっ!」


「おっとやめとけよ」


 なっ!? 何よ今の!?


『魔力を斬られたわ!!』


 そんなバカな!?


 だから断空が発動しなかったの!?



「おれぁ魔術は使えねえが、魔力は視えてんだ。視えてるもんが斬れねえわけもねえだろ」


 何よそれ!? だいたいいつ刀抜いたのよ!? 今だって鞘に収まってるじゃない!?


『フィリアには視えたわ! 代わりなさい! クーには無理よ! こいつの相手は!!』



「……ん? 何だおめえ。変な気配だな」


「刀は使わないのではなかったのかしら?」


「わりぃな。あんたの魔術は使わせちゃなんねえって思っちまってな」


「正解よ。ついでに殺す気で掛かってきなさい。私もそうするから」


「はっ!」


 ボロ侍は本当に斬り掛かってきた。


 私に代わって身体を操るフィリアが、ボロ侍の刀の軌跡を私にも伝えてくれている。


 これがフィリアの見る世界。私の視えているものとは全然違う。力の流れが手に取るようにわかる。



「ちっ!」


 え!? 逃げた!?



「思い切りが良すぎるわね」


『フィリア!? なんで追わないの!?』


「モミジとクラリスをオーガの群れの中に残してはいけないでしょ」


 オーガたちが再び集まってきた。ボロ侍を逃がすため、率先して自ら足止めを買って出たのだ。


 いくらクラリスが強いたって、流石にこの数は手に余る。モミジを守りながらでは尚更だ。フィリアの言う通り。ここで私が抜けるわけにはいかない。



「身体返すわ。クーの白黒結界なら追いつけるでしょ」


 ええ! 絶対逃さないわ!!

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