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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
05.英雄王女

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05-22.情報収集


 ドラコーに乗って、東方の離島へとやってきた。



 ドラコーは青龍の姿から再び少女の姿に変化し、クラリスの袖を掴んで付いてきた。


 どうやら変身は自由自在なようだ。便利なものね。



「貴殿が英雄王女殿下か。噂通りけったいな魔獣に乗ってお越しになられたようだな」


 ここの領主……城主? 御殿様? はなんだか偉そうだ。


 姫様がわざわざ王都から援軍に来てくれたというのに、高座から不機嫌な声を掛けてきた。



「かの獣は魔獣にあらず。女神様の遣わせし神獣です。どうかお間違えなきよう」


「ふむ」


 興味な~さそ。



「では我々はこれで」


「お待ちくだされ」


 まだ何かあるの?



「討伐は明日になされよ。今宵は宴の用意を済ませておる」


 済ませて……ね……。



「感謝いたしますわ。領主」


「……ふん」


 流石に王女相手に殿様と呼べなんて言えないか。


『クー』


 わかってる。これ以上挑発はしないわ。



「それでは後ほど」


「待たれよ」


 またかい。


 しかも今度は申し訳程度の敬語すら抜けてるし。



「なにか?」


「鬼どもを殲滅した暁には我が家に」


「領主。わたくしが第四王子の婚約者と知った上でその先を続けるつもりかしら」


「……そうであったか。これは失礼を」


 全然思ってないわね。


 いったい何がそこまで気に入らないのかしら。




----------------------




 あてがわれた部屋に私とクラリスの二人だけが通された。


 ドラコーはいつの間にかクラリスの中に潜り込んでいた。フィリアスは基本宿主の中で暮らすものだけど、元々神獣である青龍(ドラコー)までもがフィリアスの性質に倣うだなんて少し驚きだ。やっぱり乗っ取られているのではなかろうか。便利に使っているだけかもだけど。



「腑に落ちないわ」


 領主の様子があからさまにおかしい。


 挙句、臣下たちには咎める気配も無かった。



「致し方ありませんわ。ここ『エード島』は、古くから特殊な自治領としての立場を貫いてこられたのですわ。今回の件をキッカケに、アルミディア本国の口出しを許すのではと警戒なされているのですわ」


 うんうん。良い子ね、クラリス。よく勉強してきたわね。



「それでもよ、クラちゃん。この領地の者たちは確かに気難しい方々だけれど、元はと言えばアルミディアへの恩義から始まった関係なの。つい最近までは良好な関係だったのよ」


「クーちゃんは直接それを……おや? 何方様かいらしたようですわ」


 その言葉のすぐ後に、襖の向こうから声を掛けられた。



「ご歓談中失礼いたしまする」


 現れたのは礼儀正しい少女だ。


 部屋の外でひれ伏して、顔を上げずに言葉を続けた。



「姫様。巫女様。暫しお時間頂きたく存じまする」


「いいわ。入ってらっしゃい」


 少女は一礼して部屋に入り、綺麗な所作で襖を閉めた。



「拙者、モミジと申します。姫様方のお側付きを任じられましてござりまする。どうぞ如何様にもお使いくださいませ」


 あら。メイドさんってことかしら。女中さんというよりは、少し忍者っぽい装いだけど。そのまま私たちへのスパイも兼ねているのかも。眼の前で下手なことは話せないわね。



「ありがとう、モミジ。助かるわ」


「ははっ!」


 けどどうしたものかしら。


『念話。使えるでしょ』


 だからって黙っているのも不自然じゃない。それにクラリスは顔に出やすいし。


『そうね。なら白黒結界でもダメね』


 ええ。時間進まないし。


 内緒話はお終いね。そろそろ宴会とやらに呼ばれる時間だものね。大人しく普通の情報収集に努めましょう。



「モミジ。早速だけど聞いても良いかしら」


「はっ! なんなりと!」


 気合入ってるわね♪



「魔獣の件よ。オーガたちの特徴を詳しく教えてくれるかしら」


「鬼どもは……」


 ふむふむ。


 モミジの話してくれた内容を纏めるとこうだ。


 オーガたちはこの離島の更に少し離れた小島に巣を作り、定期的に船に乗って、このエード島に攻め込んでくるそうだ。



「オーガが? 船を? 自分たちで?」


「間違いなく」


 ……どういうこと?


 まさかこれもフィリアス?


『どうかしらね。フィリアスだったとして、わざわざオーガなんか使うかしら』


 フィリア的には無い筈なのね。


『だって紛れ込めるもの。フィリアたちが人間の中に居たって、大半の人間は気付かないでしょ』


 それもそうね。



「……桃太郎なのですわ」


 鬼ヶ島かぁ……。



「桃から生まれた桃太郎はいらっしゃらないんですの?」


 クラちゃんは何を真剣な顔で聞いているんだか。



「モモタロウ? そのような名の若者は幾人もおりますが、桃から生まれた、などという話にはとんと聞き覚えがござりませぬ……」


 モミジもモミジで真面目に答えちゃうし。しかもまだ考え込んでるし。



 パチパチ。


 私は手を鳴らして二人の思考を中断させる。



「先ずは知っていることを話して頂戴。船の大きさは? オーガたちの装備は? 敵は徒党を組む? 魔術を扱う特殊な個体が紛れてる? 火や武器はどうかしら? わかっている限りの情報を手短に伝えて頂戴」


「ははっ!!」

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