05-20.仲良し一家
「それでは学校へ参りましょう♪ クー殿下♪」
学校じゃなくて学園よ。少し気持ちはわかるけど。
朝食の後も、ずっとクラリスが手を引いていてくれた。
何故かアヤメは側に居ない。けれど私は知っている。物陰からコソコソ覗いてニヤけていることを。……白黒結界で後ろに回り込んで蹴飛ばしてやろうかしら。
学園へ向かう馬車には、私とクラリスだけで乗り込んだ。アヤメはヒマリと先に出たそうだ。クラリスは素直にそう信じている。嘘を付くなんて酷いお姉ちゃんたちだ。
「二人きりでの登校は初めてですわね♪ クー殿下♪」
クラリスは心底嬉しそうだ。それだけに疑念は拭えない。
「そうね。なんだか新鮮ね」
「ですわね♪ クー殿下♪」
「新鮮ついでに一つお願いしてもいいかしら?」
「はい♪ なんなりと♪ ですわ♪」
「その呼び方、やめてもらえるかしら」
「……え?」
「いつまでも殿下なんて呼び方は嫌よ。もっと友達らしく呼んでほしいの」
「友達!?」
え? 違うの?
「ああ。ごめんなさい。友達ではなかったわね。私たち」
「えぇ!?」
「親友。だものね」
どやぁ。
……チョー恥ずい。
「……友達……じゃない」
あ……これ聞いてないわね……。
「「!?」」
突然私の身体が動き出した。クラリスの両肩をしっかりと掴んで、正面から目を合わせた。
私の口が意思に反して言葉を紡ぎ出す。
「親友! し・ん・ゆ・うよ! 私たち! 今はまだそうじゃないかもしれないけど! 目指しましょう! 二人で!」
「は、はい!!!」
……ちょっと。フィリア。
何勝手なことしてるのよ……。
『焦れったくて』
……一応感謝しておくわ。
『どいたま~♪』
「く、クーちゃん!!」
「え?」
「そう呼ばせて頂きますの!!」
「え、ええ。もちろん構わないわ」
……良いわよね。アヤメも今回ばかりは文句言ったりしないわよね。
「わたくしにも! あだ名を頂きたいんですの!!!」
声が大きい。顔も真っ赤だ。
クラリスってば、とっても恥ずかしがり屋さんなのね。
「ふふ♪」
「!?」
何故か驚かれてしまった。少し笑っただけなのに。
「クラリスの愛称となるとクレアとかかしら?」
「なんだか別の子みたいですの」
元々縮めた方が良いほど短いわけでもないものね。
「なら私もクーちゃんと呼ぶわ♪」
「えぇ!?」
「お揃いね♪ クーちゃん♪」
「せ、せめてクラちゃんにするですの!」
「あらなんで? お揃いは嫌かしら?」
「そんなことないですの! 大変光栄なんですの!! けどそれじゃあ皆の前で呼び合うには不自然ですの! わたくしはいつだってクーちゃんのし、親友でいたいんですの!!」
あらま♪
「わかったわ♪ クラちゃん♪」
「はいですの♪ クーちゃん♪」
ふふふ♪ ふふふふふ♪
「あ! やっぱりソラちゃんに……!」
前世の名前がミソラだから?
空と似てるから?
「いいわよ♪ ソラちゃん♪」
「やっぱクラちゃんも捨て難いですの!!」
「ふふふ♪ クラちゃん♪」
「あ~~~~~! 悩みますの~~~~!!!」
ふふふ♪ いいわ♪ いくらでも付き合ってあげる♪
楽しい登校時間はあっという間に過ぎていった。
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「あはは♪ やるじゃん♪ クーちゃん♪」
風が二人の進展を伝えてくれた。
「クーちゃんがどうしたの? 教えて♪ アヤちゃん♪」
ヒマリも好きねぇ~♪
「『がばっ!』て行って『ずっきゅーん!』って♪」
「意味がわからない!?」
あはは♪
「親友になろうって。そう言ったの」
「お~! クーちゃん偉い! 頑張った!」
「ね~♪」
ああ。父さん母さん。カヤはまた一歩成長したよ。
「アヤちゃん、ちょっと涙ぐんでる?」
「嬉しくて♪」
「今晩はお祝いだね♪ 放課後ケーキ買って帰ろうよ♪ 良いお店見つけたの♪」
「ナイス♪ ヒマリ♪」
ついでにお酒も買っていこう♪ ユキノ先輩に献上しないとね♪ 放課後の寄り道も見逃してもらわないとだし♪
『いいなぁ。我も飲みたいなぁ』
またユキノ先輩を誘ってあげて♪ そうすればイロイも夢の中で飲めるでしょ♪
『それだぁ♪ アヤメも呼ぶからね♪』
もっちろん♪ なんならヒマリも呼んじゃおう♪ ノーラ姉とルヴィ姉が一緒でも構わないよ♪
『ノーラはともかく、ルヴィは無理かなぁ。けど頑張ってみる♪ 皆で酒盛りだぁ♪』
お~~~!




