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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
05.英雄王女

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05-19.初めての友達


「そっかぁ。それでクーちゃん元気無かったんだ」



「そうそ~。そういうことなんよ~」


 今日も今日とて夢の中に現れた女神様。


 しかしいつもの飲み会とは様子が異なっていた。


 クーちゃんが落ち込んでいた理由についてこっそりと教えに来てくれたのだ。



「クーちゃんが珍しくわたしにも相談してくれないから何事かと思ったよ。伝えてくれてありがとう。イロイ」


「どいたま~」


 イロイもあまり元気が無いようだ。



「こんな時こそ飲んで笑ったらいいんだよ」


 ここは夢の中。私の記憶にあるものはだいたい出せる。


 わたしも社会に出て多少は経験したからね。この世界のビール以外にも色々出せるのだ。


 イロイが普段クーちゃんのとこでなく、わたしの夢の中にばかり入り浸っているのは、単に酒の種類が豊富だからだ。そしてわたしが酒飲み仲間として重宝されているからだ。


 わたしはこの夢の世界にいる間は、前世の成人姿に戻っている。イロイが代わり方を教えてくれたのだ。意外と細かいところは律儀な女神様だ。



「妹の青春と初めての友達に♪ 乾杯♪」


「……かんぱ~い」


 腑に落ちないながらも、ジョッキを掲げてくれた。



「イロイ。これはおめでたいことだよ」


「けどクーちゃん、すっごく落ち込んでたよ」


「下手に心が見えちゃうから勘違いしちゃったんだね」


 そりゃあ、クーちゃん本人はこの世の終わりかってくらい落ち込むだろうけどさ。



「クーちゃんも初めてだから。前世でも今世でも。対等な友達ってさ」


「ヒマリがいるじゃん」


「ヒマリはほら。クーちゃん的には姉の友達とか、自分を崇める忠臣とかって感じだからさ」


 対等な友達ってなると、少し違うんだよね。



「やっぱりさ。同い歳で。同じ国の出身で。同じように王侯貴族で。同じ転生者で。そこまできたら運命感じちゃうじゃん? しかもクラリスまで初めての友達だって言うからさ。余計シンパシー感じてたんだろうね」


「……そういうもんかぁ」


「そうそう♪ そういうもん♪ そういうもん♪」


 だから飲もうぜ♪ 飲んだくれようぜ♪ お祝いだぜ♪



「ねえ、ユキノ先輩も呼べるかな?」


「え~……う~ん……ギリ?」


「ならお願い。これって一緒に祝うべきことだから」


「ちょっと待ってね~……」


 イロイは「むむむ~」と念じて、ユキノ先輩を呼び出してくれた。



「……あなたは? アヤメなのですか?」


「うん。よくわかったね。ユキノ先輩」


 見た目は全く違うのに。



「なるほど。それが前世の姿ですか」


「そうそ♪ ほら、先輩もそこ座って。今日はお祝い♪」


 先輩を座らせて、先輩が好きそうなワインを選んで注ぐ。



「はい乾杯♪」


「はい」


 コツン。ごくごく。



「……美味しいです」


「でっしょ~♪」


 躊躇とか全然なかったね。やっぱ物怖じしないね。先輩。



「それでこれは何の会なのですか?」


「実はクーちゃんがね~♪」


 かくかくしかじか。



「なるほど。それは何よりです」


「ユキノまで。そっか。本当にそういうもんなんだ」


 ふふふ♪ イロイも勉強になったみたいだね♪



「クーちゃんとクラリス♪ 二人の未来に♪ 乾杯♪」


「「かんぱ~い♪」」




----------------------




「おはようございます! クー殿下!」


「お、おはよう」


 元気いっぱいね……。


 昨晩の出来事は忘れてしまったのかしら?



「その……クラリス?」


「はいですの♪ クー殿下♪」


 何かを期待する小型犬のようだ。尻尾が見える気がする。ブンブン振るわれてるやつ。



「……体調はいかが?」


「絶好調ですわ♪」


 ……やっぱり覚えてない?


『聞いてみたら?』


 ……フィリアはそうした方が良いと思う?


『どっちでも。クーは悩みすぎだと思うわ』


 だって……。



「クー殿下はあまりお加減よろしくありませんの?」


 クラリスが私の顔を下から覗き込んで手を伸ばしてきた。



「っ!?」


「熱はありませんのね」


 ……解せない。昨晩はあんなに照れてたのに。


『服着てるからじゃない?』


 ……それだけってこと?


『さあ? それも聞いてみたらいいじゃない』


 ……むぅ~。



「そうですわ♪ 本日はわたくしがクー殿下をお支えいたしますわ♪」


 クラリスはそう言って私の手を握った。


 このまま朝食に向かうつもりなのだろう。私を気遣いながら歩き出した。

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