05-15.寄生共存型吸血鬼
フィリスが目覚めるのを待って白黒結界を解いた。
フィリスは軽く丸一日くらい眠っていた。
それもその筈。今のフィリスはただの魔物ではない。神の力を受け入れた特別な神獣だ! ……とはイロイの談。
つまるところ、私に取り憑いたイロイが何か影響を与えてしまったっぽい。なんなら、フィリアスとは元々そういう存在なのだそうだ。神の力を取り込んで完成するんだとか。
「あはは♪ ふはは♪ でへへ♪」
笑い方の安定しない子だ。こんな場所でずっと一人きりだったから、何か情緒が乱れているのかもしれない。
『乱れてるのはキャラじゃないかな。たぶんまだ固まってないんだと思う。生まれたばかりだから』
それは何らかのメタ発言なのかしら?
『じゃなくて。本人も色々模索しているのかなって』
なるほどね。
いいわ。本人が相談してきたら協力してあげましょう。そうでなければ暖かく見守ってあげるとしましょう。
『クーちゃん、フィリアには優しいんだね』
何よ。私はいつだって優しいんじゃない。
『いや、うん。良いんだよ。それもフィリアスの特性だからね。契約相手……より正確には宿主との関係を良好なものとするためにあらゆる力が働いているんだよ』
なんだか妙な言い回しね。まるで寄生生物みたいに言うじゃない。
『だいたいそんな感じ。それがフィリアスの生態なんだよ』
つまりなに? 私はこれから先、どんどんフィリアのことを好きになっていくと言いたいの?
『うん。ヒマリンがやってるの見たでしょ。ああやってフィリアスは宿主の体内に住み着くんだ。だから宿主側もフィリアスには素直な心を曝け出すの。そうして互いに深い所で繋がりあうから、より強固な関係性が結ばれるんだよ』
……やけに詳しいじゃない。
『ずっと欲しかったの♪ フィリアは我とクーちゃんの共有だからね♪』
それで自分も力を流し込んだのね。
『ふっふ~ん♪ 皆には秘密よん♪』
まったく。狡い性格してるわね。女神のくせに。
『ひっどぉ~い』
「フィリア。コアを返すわ。ダンジョンを消してほしいの。出来るわね?」
「待ってクーちゃん! その前に! ワイバーンを誘い出さないと!」
「ならあのワイバーン以外の魔物を消しされるかしら? このダンジョンの中で決着をつけましょう」
「がってん♪」
……うん? ……その返事って、確かヒマリもよく口にしていたわね。
そう。元々はフィリアスの……ということはフィリアスを生み出した存在も私たちと同じ故郷の……。
「クー?」
「ああ。ごめんなさい。どうぞ」
私は手に持ったままのコアを改めて差し出した。
「ありがとう♪ クー♪」
コアを受け取ったフィリアはこれまで以上に満面の笑みを浮かべた。
なんだか悪いことをしてしまったわね。よほど大切な物だったみたい。
『そりゃそうでしょ。コアに命じられたらダンジョンボスなんて簡単に消えちゃうんだから。そうでなくたってクーちゃんから手渡された初めてのものだもの』
……そうね。そうよね。
「フィリア。こっちへいらっしゃい。私によく見せて頂戴。ダンジョンコアの使い方は私も知っておきたいの」
フィリアを招き寄せて前に座らせ、後ろから抱きしめて手元を覗き込む。
「~♪」
喜ぶフィリア。
「クーちゃん!?」
憤慨するアヤメ。
「あはは♪ さっそくやられてるね♪」
「なにそれ!? どういうこと!?」
ヒマリの発言に食らいつくアヤメ。いいわ。その調子よ。うるさいお姉ちゃんは任せたわ。
「ここをこうして~♪ ちょろろんぱ~♪」
謎の呪文を口走りながら、ウッキウキでダンジョンコアを弄くり回すフィリア。
正直張り切りすぎて、かえって何をやっているのかわからない。けど構うまい。なんか可愛いし。
「出来た♪」
もう済んだらしい。
「ありがとう♪ フィリア♪」
お礼を口にしながら、抱きしめる腕に力を込めた。
「きゃきゃ♪」
まるで赤子のように喜ぶフィリア。可愛い。
「クーちゃん!!」
もう。大きい声出さないでよ。お姉ちゃん。
「行くわよ。さっさとワイバーンを倒して帰りましょう」
色々知りたいこともあるし。今度こそダンジョンでボスを倒しとしましょうか。
「フィリアは私の中に入りなさい。出来るのよね?」
「うん!! やったぁ~~~~♪」
即座に真っ黒な霧と化したフィリアが、私の身体の中に溶けていった。




