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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
05.英雄王女

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05-12.初めてのダンジョン


 ヒマリの言った通りだった。



 裂け目の下には広大な空間が広がっていた。



「これではワイバーンを見つけるどころではないわね……」


「だねぇ~……」


 そこには見渡す限りの魔獣たちが溢れかえっていた。




----------------------




 私たちはアヴィスに乗って地下空洞を見て回った。


 魔獣の巣と化した地下空洞には、見たことも聞いたこともない強大な魔獣たちが何体も見受けられた。


 ここには幾つもの群れが存在するようだ。一際強大な魔獣をボスとして、同族がその周囲に集まっている。ワイバーンだけでなく様々な種族が生息しているようだ。



「ワイバーンだけ仕留めて帰るなんてわけにもいかないよ」


 そうね。下手に刺激すれば一斉に溢れ出してしまうかも。



『おっかしいなぁ。こんな筈はないんだけどなぁ』


 イロイ? 何か知ってるの?


『う~ん……ちょっちね~……』


 話しなさい。


『え~♪』


 イロイ。


『しゃあないな~』


 勿体ぶるわね。


『そもそも話しちゃいけないことなんだけどね~』


 だとしてもよ。私は質問を取り消したりしないわ。


『あはは~……えっとね。先ずここはダンジョンなの』


 それが?


『正しい意味でのダンジョンって、この世界には存在しない筈だったんだよ。実際クーちゃんも聞き覚えないでしょ? それが何故かって言うと、約束を結んでいたからなんだよ。我が守護神として一人前になるまではって条件でね』


 誰とよ。


『ダンジョンシステムの管理者と。そういう神様がいるの。この世界の外側に』


 約束を破ったのでないとしたら、あなたが一人前と認められたのではないのかしら?


『たぶん違うと思う。その辺キッチリしてる方だし。解禁するならちゃんと事前告知はしてきたと思う。今回のこれは彼女にとっても想定外だったんじゃないかな。今って魔獣たちの様子が変でしょ。あれが他の世界でも起きてるんだと思うの。だからダンジョン担当の彼女もてんやわんやなんだよ』


 なによそれ。こんな場所がこの世界のあっちこっちに存在するってんなら、人間はあっという間に滅びるわよ。どう考えてもこの場所にいる魔獣たちは、この世界の者たちの手に追えるものではないもの。


『流石にいくつもは無いと思うよ。それにダンジョンの魔獣たちって外には出ないんだよ。誰かが命じない限りはね』


 命じる? その管理者が?


『ううん。ダンジョンには必ずコアがあるの。それを使って命じるんだよ』


 つまりコアさえ押さえれば、ここの魔獣たちは制御出来るのね?


『うん。けどコアはおっかない魔獣が守ってるから。クーちゃんでも危ないかもしれないよ』


 それはどうかしら。


『本気なの?』


 ちょっと様子を見るだけよ。



「ヒマリ。アヴィスを入口近くに戻しなさい」


「イエス♪ マイロード♪」


 アヴィスはすぐに浮上した。裂け目の真下まで移動し、いつでも脱出出来るように準備を整えた。



「クーちゃん? 何するつもり?」


「ここの魔獣たちは特別な方法を用いなければ外には出ないそうよ」


「ワイバーンは出入りしてるじゃんか」


「逆なんでしょ。あのワイバーンは外から迷い込んだのよ。偶然同族が暮らしていたから上手く紛れて住み着いただけ」


「イロイがそう言ってるの?」


「いえ。私の推測よ。イロイが言ったのは魔獣が外に出ないという話だけよ」


「なら」


「いいから。備えて」


 私は白黒結界を起動した。


 私、アヤメ、ヒマリ、アヴィスを除いた全ての時間が凍りつく。



「……何も動かないわね」


「「クーちゃん……ヤバすぎだよ……」」


「何がよ」


「こんなに有効範囲が広かっただなんて……」


「何を勘違いしているの? 白黒結界は私たち自身を一時的に加速させているのよ。この地下空洞を丸ごと結界の内部に収めたわけじゃないわ」


「「はぇ~」」


 なんでアヤメまで理解してないのよ。一緒に作り上げた術じゃない。



「なら何が動き出すと思ってたの?」


「イロイが脅すから用心してみただけよ」


 やっぱり時間の止まった世界に入門してくる魔獣なんていないじゃない。


『これ解いた後のこと考えてる? 隠蔽してるからって発動した魔術の痕跡まで感知されないとは限らないんだよ?』


 コアを入手すればいいだけなんでしょ。ちょろっと行って盗み出してしまいましょう。


『クーちゃん、コアの制御方法知ってるの?』


 え? 知ってるわけないじゃない。


『……最悪持ち出せば大丈夫かなぁ』


 なによ。イロイも知らないのね。


『……もしかしたら……ワンチャン』


 なによそれ。


『通信教育で……ちょろっと……』


 頼りないわね。半人前の守護神様は。


『あ~ん! だから言いたくなかったのにぃ~!』


 くだらないこと気にしてんじゃないわよ。そんなこと言ってる内は一人前になんてなれないわよ。


『我子どもじゃないも~ん!』


 はいはい。一緒に一人前目指して頑張りましょうね。


『えへへ~♪ 嬉しいこと言ってくれるじゃんか~♪』


 ……チョロいわね。

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