05-11.魔獣の棲家
「いないわね」
マズいわね。この地域からは完全に逃げ出してしまったみたいだわ。
アヴィスに隠密結界を掛けて探させてみたけど、それでも標的のワイバーンを見つけ出すことは叶わなかった。
「待って、クーちゃん。やっぱりアヤちゃんたちを呼ぼう。遠くに行ったと考えるのは早計だよ。この場所はワイバーンにとっても捨て難いものである筈だ。何せ被害が出てからも人通りの途切れない主要路だ。ワイバーンにとっても格好の餌場なんだよ」
そう。ヒマリがそう言うのなら。
「きゃっ!?」
あら失礼。
アヤメの部屋に転移門を繋いだら着替え中だった。
目が合った途端、手に持っていた服で慌てて身体を隠すアヤメ。悪くない。
「続けて頂戴」
「このまま着替えろと!?」
「着ないで話を聞いてもらうのでも構わないわ」
「一回閉じてよ!!」
残念ね。
一度転移門を閉じてまたすぐに開く。今度は覗き穴風の小型転移門だ。
「まったく……クーちゃんたら……見たいなら……二……」
何やらぶつくさ言いながら着替えを続けている。今度は気付いていないようだ。お尻がぷりちー。
「クーちゃん。覗きは良くないよ」
とか言いつつヒマリも覗き込もうとしてるじゃない。
「クーちゃん!!」
もう。ヒマリが喋るから。
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「あったよ。洞窟……というか裂け目? ヒマリの言った通りだね。たぶんワイバーンもいる……と思う。中は上手く探れないや。なんだか魔力が乱れてるって、ティグリスが」
よしよし。よくやってくれたわ。
「ありがとう、アヤメ。案内して頂戴」
「本当に乗り込むの? 先に調べてからの方がよくない?」
また始まった。
「調べるにも乗り込むしかないじゃない」
「だからって何もクーちゃんが」
「捨て駒を用意しろと? フザケたことを言わないで頂戴」
「そうじゃなくて。こういう時こそ、わたしたち巫女の出番でしょ」
「ダメよ。貴女たちを危険には晒せないわ」
「それじゃあ本末転倒だよぉ。ヒマリからもなんとか言ってやって」
「ダンジョン探索♪ 楽しみだね♪ クーちゃん♪」
「ええ♪ ヒマリ♪ 行きましょう♪」
「なんでよぉ~~!!」
もう。うるさいお姉ちゃんね。
「どうしても嫌なら付いてこなくても構わないわ。場所だけ教えなさい」
「行くに決まってるでしょ! もう!」
よろしい。
「けどクーちゃん!」
「わかっているわ。空属性だって無敵とは限らない。重々気をつけるわ」
「絶対だよ! 約束だよ!」
わかってるってば。もう。心配性なんだから。
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私たちはアヴィスに乗って、街道から三十キロ程離れた山間部を訪れ、森に隠れた地表の裂け目を発見した。
中は見通せないほど深い暗闇が続いている。
「ごくり」
ヒマリのそれは恐怖なの? 期待なの? 後者っぽい。
「クーちゃん。しっかり手を繋いでいてね」
お姉ちゃん、ちょっと震えてるわよ? もしかして暗闇がトラウマなのかしら? 私が以前罰で閉じ込めたから。
「アヴィスに乗ったままでも入っていけそうね」
それだけ裂け目が大きいのだ。渓谷って程ではないけど。
「白虎の方がいいんじゃないかな。朱雀だと小回り利かなそうだよ?」
確かにスペース的には微妙かもしれない。
「いっそ私が階段を作りましょう」
ティグリスで飛び降りるのは流石に怖いわ。崖を蹴って駆け下りるってことでしょうし。壁ジャンプの逆みたいな。
「階段なんかで降りたら時間足りなくなっちゃうよ」
そうだった。今日中に仕留めて帰らなきゃいけないのだ。仕方ない。腹を括りましょう。
「クーちゃん、アヤちゃん。たぶん狭いのは入口だけだと思うよ。下はそれなりに広い筈。何せワイバーンが住処にしてるくらいだからね。アヴィスでも問題無いと思うよ」
「「じゃあそれで」」
「がってん♪」




