05-09.関係性
「ぁ!! ……? あれ? クーちゃん?」
……消えちゃった? ……あぁ!! ヒマリもいない! うそ!? まさか白黒結界で!? 本当に置いてったの!?
「えっと……今は……」
いた! まだ屋敷の敷地内だ!
「クックックックック! あっはっはっはっはっは♪ 知らなかったのかな!? お姉ちゃんからは逃げられない!!」
----------------------
「あれ? クーちゃんとヒマリだけ? ユキノ先輩は?」
「遅かったわね、アヤメ。行きましょう、ヒマリ」
「うん♪ 行こ~♪」
「……待ってたの?」
「当然でしょ。ガイドが居ないと困るじゃない」
「けどユキノ先輩と行くって」
「ユキノは忙しいのよ。ただでさえ人数増えてるんだから。こんなことで煩わせてられないわ」
私、アヤメ、ヒマリ、ノーラ、ルヴィ、クラリスの世話をほぼ一人で受け持っているんだもの。
侯爵邸は基本自分のことは自分でやるルールだけど、それでもユキノの負担は半端じゃない。
一応モーラとか他にも従業員はいるんだけどね。最近は秘密も増えて、私たちの過ごすエリアには近づかないようにしてくれているのよね。それも寂しいけど仕方がない。
ともかく私たちの身の回りのことは全部ユキノの担当だ。デートの引率はアヤメにしか務まらない。ユキノだって誰も連れずに出かけたら怒るだろうし。
「……わたしこの格好のままでいいの?」
「問題無いわ。認識阻害掛けたから」
私は家族全員に常時結界を纏わせている。結界を張り替えずとも設定を弄れるように改良済みだ。ちょろっと念じれば変更は完了する。これで出発の準備はバッチリだ。
「……段々人間離れしてきたね」
「イロイも色々教えてくれるのよ」
「……ダジャレ?」
「行きましょう、ヒマリ。手も繋いでくれないアヤメは放っておいて」
「行くってばぁ!」
アヤメが慌てて私の空いていた手を握った。
「ふふ♪ クーちゃん両手に花だね♪」
「ヒマリ、それ自分で言うの?」
「ボク可愛いでしょ♪」
「そりゃそうだけど」
あら。お姉ちゃんったら、恋人の前で他の子が可愛いと認めるのね。
「あっ!? ちがっ!!」
「私は何も言ってないわよ」
勝手に人の顔見て慌てないでよ。
「そっかぁ……違うのかぁ……」
「わないけど!!」
そう。違わないのね。
「でも! あの! クーちゃん!!!」
「耳元で叫ばないで。全部聞こえているわ」
「今のは!!」
「私も思っているわよ。ヒマリは可愛いわ」
「でっへっへ~♪」
「うわ! ……くっ」
また浮気だって叫ぼうとしたわね。今回は踏み留まったけど。
何をやっているのかしらね。アヤメは。
----------------------
「「次あれ!! あれ食べたい!!」」
「うんうん。りょうか~い」
クーちゃんまで子どもみたいになっちゃった。
いや子どもか。まだ学生さんだし。わたしもだけど。
けどクーちゃん、前世も十代で亡くなっちゃったし……。それも引き篭もりさんだったから、殆ど出歩かなかったし。
私たちが事故に合ったあの日は、普段物静かな父さんが珍しく気合を入れて計画した旅行だった。
その想いが伝わったのか、カヤもどうにか頷いてくれて。家族四人で車に乗って……。
……父さん。母さん。カヤは元気にやってるよ。世界は違うけど見守っていてくれてるかな。それとも二人は生きててくれているのかな。
あの日……何事もなく目的地に着けていたのなら……こんな姿を二人にも見せられたのかな……。
……ううん。折角クーちゃんが楽しんでくれているんだ。わたしはお姉ちゃんとしてもっともっと楽しませてあげないとだよね。
こっちのクーちゃんは積極的だよ。お姫様だからあんまり自由には出歩けないけどね。ともかく安心してね。父さん。母さん。カヤにはわたしが付いているから。
「お待たせ♪ クーちゃん♪ ヒマリ♪」
----------------------
「どうして止めてくれなかったのよ」
「止める? 何の話?」
「私としたことが無邪気に楽しんでしまったわ」
「それの何がいけないのさ」
「計画を忘れていたわ。ヒマリと仲良くなるのが目的だったのに」
「十分仲良くなったじゃんさ。何? それともやっぱり恋愛のつもりだったの?」
「友達以上恋人未満くらいが目標よ」
「それは浮気だってば」
「家族以上恋人未満」
「変わってないよ!?」
「何が問題なのよ。さっぱりわからないわ」
「……」
あら? どうしたのかしら?
「……そっか。カヤは知らなかったね」
さてはまた変なこと考え始めたわね。
「そうだよね。前世でまともな人付き合いだってしてなかったもんね」
喧嘩を売っているのかしら。
「うん。これもお姉ちゃんの役目だもんね」
何を納得しているのかしら。
「クーちゃん」
「なにかしら?」
改まって。
「わたしが正しい人付き合いを教えてあげるからね」
やっぱり喧嘩を売っているのね。
「アヤメだって少女漫画の知識くらいしか無いじゃない」
「失敬な!? わたしだって告白くらいされたことあるんだからね!!」
まあ、お姉ちゃんは前世でも美人だったものね。見た目だけは良かったものね。内面も別に悪くはなかったけど。ただなんというか……普通の人だっただけで。
というか告白をされたことがあるだけで、やっぱり付き合ったことは無いんじゃない。語るに落ちるとはこのことね。
「なら精々頑張りなさいな」
「上から目線!?」
「私は雇い主よ。アヤメ」
「今はお姉ちゃんだよ!!」
「それを決めるのは私よ」
「なにさそれ!?」
「妹様に従いなさい」
「先ずは姉妹の在り方について話そうか!」
あら♪ ふふふ♪ それなら面白そうね♪ たっぷりわからせてあげるわ♪ 精々妹様には傅くことね♪




