05-05.討伐計画
「魔獣討伐に行きましょう」
放課後。私は家族を集めて会議を開いた。
議題は魔獣討伐。お兄ちゃんから依頼されたやつだ。
最近各地の魔獣たちが妙に力を増しているそうだ。対象地点も既に指定されている。
「東方の離島。西方の山村。南方の街道。この三箇所で討伐を行うわ。それぞれ、青龍、白虎、朱雀に行ってもらいたいの」
「いいの? 魔獣たち逃げちゃうんじゃない?」
そうね。四神獣が近づけば魔獣たちは慌てて逃げ出すでしょう。そうなれば余計に被害が広まってしまうでしょうね。
「ええ。だから実際に討伐するのは私たちよ。私はそれぞれの巫女と四神獣に乗って近くまで行くわ。そこから徒歩で現地へ向かうの。一晩近くの村や町に泊まって、顔役にしっかり事情を伝えてから討伐を始めるわ」
「そっか。人助けよりもパフォーマンスが大切なんだね」
「言い方はともかくその通りよ、アヤメ」
本当に酷い言い方だわ。事実だけど。
「これも必要なことよ。いくら私に手軽な移動手段があるからって、それを当然のように当てにされ始めたら困るのよ。私はまだ学生なの。だから当然討伐も週末だけよ。それも一箇所ずつ。悪いけど勿体つけさせてもらうわ」
「それもわかるけどさ。良い気はしないよね」
「過ぎたるは及ばざるが如しよ。各地の領主にだってメンツがあるの。いきなり頭飛ばしに武力を差し向けられたら良い気はしないでしょ。だから敢えて時間を掛けるのよ」
簡単に解決出来るからって、いきなりミサイルを打ち込んだりはしないでしょ。物事には相応の手段があるものよ。
「つまり領主の所にも寄るんだね」
「いいえ。そっちはお兄ちゃんに任せるわ」
私はあくまで小間使いだ。お兄ちゃんの私兵だ。忠実に職務をこなす扱いやすい英雄を演じましょう。
「軽んじられてしまうんじゃない?」
「そんなことはないわ。お兄ちゃんは権力者たちからの支持を集めて、私は現地の民から支持を集めるの。単なる役割分担よ。私が物言わぬ兵隊に成り下がるわけではないわ」
棲み分けないとそれこそ不満を言われてしまうもの。或いは私こそが王に相応しいと、別の勢力が勢いづくでしょう。
「婚約した途端に便利に使いすぎだって怒るんじゃない?」
「そうやってケチを付ける人もいるでしょうね。だから目一杯楽しみましょう。人を助けるのが生き甲斐な優しいお姫様を演じましょう。そんな姿を人々に見せつけましょう」
「巨大な魔獣に乗って各地に赴き、笑顔で魔獣を殺戮するお姫様。……怖くない?」
「もう。変なこと言わないで」
ちょっと面倒臭いわよ。お姉ちゃん。笑顔でって現地の人々と関わる時の話に決まってるじゃない。
……いえ。けどお姉ちゃんの言うことも一理はあるわね。一応気を付けておきましょう。もちろん笑いながら戦うなんて話じゃなくて、実力差がありすぎてサクッと倒してしまうのも、それはそれで妙な印象を与えてしまうかもだから。
「剣でも持ってみましょうか」
英雄と言えば剣よね。私もそれなりに剣の修行は積んできた。この世界では魔力壁のせいで魔術戦が基本だけど、魔術を当てるためには近接戦の心得も必要だ。それに魔力壁さえ破ってしまえば剣だって当たるのだ。そもそも魔力壁を纏っていない弱い魔獣だって存在しないわけでもないのだし。
「どうせなら魔剣でも作ってみてはどうかしら?」
ノーラが面白い提案を上げてくれた。
「いいわね。最初はフリでも構わないわ。派手なエフェクトを付けるだけなら既存の魔石技術でも十分でしょう」
「ゆくゆくは魔力壁を破れる力を持たせるんだね」
「ええ。実現すれば革新的よ。特別な魔術の才能が無い人たちでも強大な魔獣と戦う術を手にできるわ」
「加えてクーちゃんのインチキを隠す手段にもなるかも」
そうね。私の空属性はあらゆる属性の魔力壁を無視して攻撃を通せるものね。属性剣は隠蔽としても最適だ。
実際には断空を纏わせた剣で切り裂くにしても、そこに各属性の魔力を這わせられれば、説得力も生まれるだろう。
英雄王女として目立つと決めたけれど、だからといって全ての手の内を晒すわけにもいかない。特に空属性については秘密にしておかなければならない。
これも過ぎたるは及ばざるが如しだ。転移の存在が知られれば、私の存在価値が上がりすぎてしまうもの。
今週末に早速一度目の討伐がある。それまでに偽装属性剣を作り上げるとしましょうか。
イロイも力を貸して頂戴。
『おっけ~♪ 任せてよ~♪』
ありがとう。心強いわ。
『えへへ♪ 頑張っちゃう♪』
お願いね。私の女神様。




