05-03.約束
「酷い夢を見たわ……」
「女神様とお茶会したんじゃなかったの?」
朝。ベッドの中。隣で横になったままのお姉ちゃんが私の頭を撫でてくれた。
「……何故だか頭が痛かったことしか覚えていないの」
お姉ちゃんは私の頭から手を離して頬に添えてくれた。
「お酒でも飲んだの?」
ほっぺを摘まれた。
「そんな筈はないのだけど……」
イロイ。昨晩は何があったの?
『あ、あはは~♪ クーちゃん転んで頭打っちゃったの♪ そ、それだけだよ~♪ 本当だよ~♪ 神様嘘付かない♪』
あら。それは迷惑を掛けたわね。
『だ、大丈夫大丈夫♪ ちょっと看病して送り返しただけだから~♪ 何もしてないよ~♪ 本当だよ~♪』
……? 何か隠してる?
『ぎ、ぎくぅ!?』
……吐きなさい。
『な、何も隠してないってばぁ!!』
そこで必死になられると増々怪しいじゃない。
『違うてばぁ! 信じてクーちゃん!!』
もちろん信じているわ。イロイは私の友達だもの。
『あ、あはは~♪ だよね~♪』
だからイロイも私に隠し事なんてしないでしょ? 私を大切な友達だと想ってくれているなら当然よね。
『も、もちろんだよ! 当然だね!!』
イロイが何も無かったと言うならその通りなのでしょう。
『ぐ、ぐぬぬ……』
イロイ? やっぱり何か話しておきたいことがあるの?
『……ご』
ご?
『ごめんなさいでしたぁ~~~~~~!!!』
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イロイは全てゲロった。
昨晩酔ったフリで私を襲おうとしたところ、私の自滅で断念せざるを得なくなったのだと、悔しさ混じりに語った。
さては反省してないわね?
「とんだ疫病神だね。そいつ」
「邪神かもしれないわ」
『女神様だよぉ~! 守護神様だよぉ~!』
「なんだか少し思い出してきたわ。たしか貴女って左遷されたのよね?」
『そんなこと言ってないよぉ!?』
「中央とやらでは何をやらかしたの?」
『なんもしてないってばぁ! 本当だよぉ! ちょっと飲みすぎただけぇ!』
やらかしてんじゃない……。
「女神はなんて?」
イロイの言葉は私にしか聞こえていないのよね。不便ね。
「ただの呑兵衛よ」
「酒の失敗で左遷されたの? それは相当じゃない?」
「嫌よね。酒癖が悪い人って」
「わたし嫌い。前世の実の父がそういうのだったし」
言う程嫌いって顔はしていない。遠い記憶過ぎてハッキリとは覚えていないのだろう。何せ通算三十年以上は前の出来事でしょうし。"私たち"の父はそんな人じゃなかったし。
「しかもイロイって本当にだらしないの。禁酒するって約束したばかりなのに」
『あっ……ごめんなさい……』
本当に反省して頂戴。次は許さないわ。
『はい……』
「……ねえ、クーちゃん」
お姉ちゃんが改まった様子で口を開いた。
何故だか頬が赤らんでいる。
「……その……女神にさ……奪われるくらいなら……さ」
「何を言おうとしているのよ。朝っぱらから」
「だって!」
「させないわ。次は舌を噛み千切って夢を終わらせるわ」
『えぇ!?』
私の全てはお姉ちゃんのものよ。イロイに横取りされるくらいなら躊躇はしないわ。
「……大丈夫なの? それって現実に影響及ぼさないの?」
『そうだよ! 本当に噛んじゃうよ! 危ないよ! クーちゃん! やめとこうよ!』
イロイ。私を傷つけたくないのなら馬鹿なことは考えないでね。
『もうやらないってば! ほんの冗談だったの! 最後までやるつもりなんてなかったの! ちょっとからかってイチャイチャしたかっただけなのぉ!』
触れ合いを求めるには好感度が足りないわ。
『わかったから! 焦らずゆっくり口説くからぁ!』
そうして頂戴。
「大丈夫よ。お姉ちゃん。自分の身は自分で守れるわ」
「答えになってないよぉ~……」
ごめんね、お姉ちゃん。嘘はつけないの。
『噛む気満々だぁ……』
私のお姉ちゃん愛を甘く見ないことね。
『くっ……すっかり信頼が……』
無いでしょ。最初から。
『ひどい~……』
これからよ。これから友達になるのよ。私たちは。
『……その先も?』
そのためにはお姉ちゃんと話せるようにならないとね。
『そっか。そういう約束だったね』
ええ。お姉ちゃんが皆に口説き落とされたら私のハーレムを作るのも認めるわ。
『とすると……降臨には……むむむ……』
精々頑張りなさいな。応援はしてあげないけれど。




