05-02.親密度不足
「ヒマリ。これが私の開発した魔石装置よ」
魔王国建国には莫大な費用が掛かる。少しでもその足しになればと、私は全ての技術を差し出した。
もちろんこれだけで足りる筈もないので、今後もノーラと組んで開発を続けるつもりだ。ノーラにはその手の才能がある。何より本人がやる気満々だ。心強い限りだ。
「ありがと♪ 魔王様♪」
こちらこそ♪ ヒマリと組織のお陰で助かってるわ♪
ヒマリの所有する影の組織にも開発を委託しよう。その辺は全部ヒマリに任せるとしよう。
「もう魔王は魔王でいいんじゃない? 新しい名前考えなくてもさ」
「アヤメが言ったんじゃない」
自分で名前付けようって提案したくせに。お姉ちゃんはそういうところがダメなのよ。もう少し自分の言葉に責任を持ってほしいわ。
「宰相閣下♪ 魔王様をお願いね♪」
ヒマリは早速部下たちの下へ飛び立っていった。
「転移門で送ってあげればいいのに」
「影の組織の本拠地を知らないのよ。やっぱりもう少し首を突っ込むべきかしら」
「自主性に任せたいの?」
「そこはほら。ヒマリが十数年かけて築き上げてきたものだもの。私が取り上げちゃうのは違うでしょ」
「献上したがってるのはヒマリの方だよ?」
「ヒマリって自分では主人公になりたくないのかしら」
「うん。あの子は主人公の仲間になりたいんだよ」
気持ちはわからないでもないけれども。
まあいいわ。追々考えていきましょう。私たちはまだ集まっただけなんだもの。ただ出会い編をこなしただけなの。親睦を深めていくのはこれからよ。ヒマリの個別回もいずれ発生するのでしょう。ヒマリ風に言えばそんなところよね。
「子爵の件はどうなったの?」
「お兄ちゃんが解決してくれるって言うから気にせず付き合いを続けるわ」
「任せた以上は進捗と結果も確認しないとダメだよ」
「社会人のような事を言うのね。お姉ちゃん」
「社会人だったんだってば。カヤも知ってるでしょ」
「滅多に寄り付かなくなったわよね。やっぱり私が居たからよね」
「どうしてその話を始めるのか」
お姉ちゃんが苦々しげな表情を浮かべた。
「なによ。姉妹の思い出話に花を咲かせようとしただけじゃない。どうしてそんな顔するのよ」
「人の傷を突き回しておいてなんたる言い草」
「お姉ちゃんこそ気にしすぎなのよ。もうとっくに過去の話よ。笑って流しなさい」
「笑ってって……もう。クーちゃんは極端なんだから」
「きっとお姉ちゃんに似たのね♪」
「どこがさ」
私はお姉ちゃんと同じで優柔不断なのよ。だからわざと極端に振り切っているんじゃない。気付きなさいよ。
「行くわよ。いつまでも呑気に話している程暇じゃないわ」
「イエス。マイロード」
「ヒマリのパクリじゃない」
「他のがいいの? 例えば?」
「自分で考えなさい。私への愛を込めた返事をね」
「なにさそれ。アイラブクーちゃんとか?」
「返事っぽくないわ」
「無茶振りだぁ」
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「うへへ~♪ くーちゃぁ~ん~♪」
「イロイ。話をする約束よ。なんでもう飲んでるのよ」
禁酒だって約束したじゃない。この嘘つき駄女神め。
「しゅきしゅきしゅき~♪」
聞いてないわね。
もう。なんなのよ。夢の中まで呼び出しておいて。
お酒臭い……。ちょっと離れてほしい。私にスリスリしていいのはお姉ちゃんとユキノだけなのよ。ユキノはそんなことしてくれないけど。昔ならともかく。
「くーちゃ~ん♪ いいにおい~♪ くんかくんか~♪」
うざ……。
「は・な・れ・な・さ・い!」
「い~や~だ~♪ えへへ~♪」
くっ……腐っても女神か……引き剥がせない……。
……しかたない。このまま話を始めよう。何も得られずに終わるのも癪だし。
「それで? 守護神ってなんなのよ?」
「それはね~♪ そのまんまだよ~♪」
「この世界を守る神様ってところかしら?」
「せ~か~い♪」
順当ね。何の捻りも無かったわね。
「赴任って? どこかに神様の会社でもあるのかしら? イロイはそこから来たの?」
「そ~だよ~♪ ちゅーおーにね~♪」
ちゅーおー? 中央? 何の?
「もしかして世界がいくつもあるの? 私たちが前世を過ごした世界以外にも?」
「そ~だよ~♪」
「どれくらい?」
「いっぱ~い♪」
「千?」
「ぜんぜ~ん♪ もっともっと~♪」
「億?」
「まだまだ~♪ ほぼむげん~♪」
壮大な話ね。
そしてその中央……つまり中央世界ってことかしら。
元々イロイは中央世界に勤務していたのね。そこからこの世界に単身赴任してきたと。
「イロイはいつか中央に帰ってしまうの?」
「なんで~? かえらないよ~?」
左遷されたのかしら?
「えへへ~♪ しんぱいなんだね~♪ うれし~な~♪」
「そりゃあね。折角お友達になれたんですもの」
「ぐふ♪ ぐふふ♪ ぐふふふふ♪」
やばっ!?
「ちょっ!? 放しなさい!!」
イロイが私に覆いかぶさってきた。酔っ払いのくせに凄い力だ。
「えへ♪ えへへ♪ ぐへへへへ♪」
「やめろって!! 言ってんのよ!!! ぐぁっ!?」
あかん……頭突きしたのに怯まない……。
しかも滅茶痛い……。
鋼鉄の壁に頭を打ち付けたみた……い……あ……。
「きゅ~……」
「……うん? クーちゃん? クーちゃん!? えぇ!? 寝ちゃったのぉ~!? 夢の中でぇ~!? このタイミングでぇ~!? そんなぁ~~~~~!!!」




