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虚空少女の風騙り ~ 英雄王女の異世界昼行灯 ~  作者: こみやし
04.新学期編

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04-10.選んだ道


「……良いだろう。お前の提案に乗ってやる」



 お兄ちゃんは苦々しげに吐き捨てた。


 突然訪ねてきた私に対し、僅かにでも嬉しそうな反応を示してくれたのは最初だけだった。話を聞く内にどんどん表情が険しくなっていった。



「提案って? もう少しハッキリと口にしてほしいわ」


「……くっ」


 ごめんね。酷いこと言ってるのはわかってるんだけどさ。



「お前の王妃としての立場は俺が守り抜く。お前が好きに生きることも止めはせん。俺は生涯兄としてお前を支えよう」


「ありがとう。お兄ちゃん。大好き♪」


「……満足したのならさっさと帰れ」


「また来るね♪」


「もう来るな」


「あ、実はもう一つ頼みたいことがあって♪」


「黙れ」


「ベルドール子爵の娘さんが欲しいの♪ お願い♪ お兄ちゃん♪」


「……お、俺の忍耐を試しているのか?」


「頼りにしてるわ♪ お兄ちゃん♪」


「帰れ!! 子爵の件はなんとかしてやる!!」


「ありがとう♪ 愛してるわ♪ お兄ちゃん♪」


 最後に投げキッスを送ってから転移門を潜って撤退した。




----------------------




「流石に都合良く使いすぎだと思う。殿下が可哀想だよ」


「兄と妹ってそんなものじゃない?」


「二人は婚約者なんだよ。殿下はクーちゃんのことを本当に愛しているんだよ。兄妹としてだけでなく、一人の女の子としてね」


「私には他に好きな人がいるから応えられないって伝えてきたわ。その上でお兄ちゃんは選んでくれたのよ」


「むごすぎる……」


「そうね。お兄ちゃんにも出来ることはしてあげたいわ。デートくらいなら許してくれるかしら?」


「ダメに決まって……兄妹デートなら……許す……」


「ありがとう♪ お姉ちゃん♪」


「くっ……やっぱりクーちゃんは悪魔だ……」


「最愛の妹に向かって悪魔は酷いじゃない。それに私は魔王よ。上位種よ」


「開き直りすぎだよぉ!」


 開き直れって言ったのはお姉ちゃんじゃない。



「私は妹としてお兄ちゃんとお姉ちゃんたちに甘えるの♪ いっぱい我儘を言ってあげる♪ 覚悟していてね♪」


「やっぱりそういうの良くないと思うよ! カヤ!」


「今の私はカヤではなくクーフェリアだもの♪ 引き篭もりの根暗オタクと英雄の血を引くお姫様では違うのよ♪」


「傾国の美女でも目指してるの!?」


「そもそもね、アヤメ。利用するのは私だけではないわ。お兄ちゃんだって私を利用するのよ。お兄ちゃんが王位を取るには私を使うしかないの。お兄ちゃんはそれも含めて選んだのよ。お兄ちゃんはそういう人よ。だからこそ私は信頼しているのよ」


「そりゃ……そうだろうけどさ……」


 第四王子であるお兄ちゃんが第一王子に一矢でも報いれたのは、私がいたからだ。私と婚約したことでお兄ちゃんの派閥は力を付けているのだ。私抜きではお兄ちゃんの覇道は成り立たない。お互いそれをわかってる。だからこれは取引でもある。私が一方的に甘えるのではなく、お兄ちゃんの役に立つことを成すから成立する関係だ。



「私は力を付けるわ。名声を高めるわ。全てはお兄ちゃんのために。私のために」


「昼行灯はやらないの?」


「私が英雄となった先にだってあるでしょ。英雄の要らない世界って」


「……遠回りだね」


「それもまた道でしょ♪ 急がば回れと言うじゃない♪」


「……わかった。もう言わないよ。殿下の件は」


「他の皆はどうかしら♪ もうお姉ちゃんの籠絡作戦は始まっているのかしら♪」


「当然でしょ! クーちゃんがけしかけたんじゃん!」


「ふふふ♪ 頑張ってね♪ お姉ちゃん♪ 私を守り抜くのはお姉ちゃんの役目よ♪」


「もう聞いたよ! それは!」


 皆がお姉ちゃんを口説き落とせば、私はハーレムを認めましょう。お姉ちゃんがあくまで私一人に拘るなら、精々頑張ってもらいましょう。私はどちらでも構わないわ。お姉ちゃんと一緒に幸せになれるならね。



「あと残った問題はなんだったかしら?」


「特大の問題を振りまいておいて勝手に済んだことにしないでほしい」


「子爵の件はお兄ちゃんがなんとかしてくれるそうよ♪」


「可哀想に……殿下は今後も搾取され続けるんだね……」


「失礼なことを言わないで。お兄ちゃんのためにも私たちに出来ることはするんだから」


「それが技術改革?」


「そうね。先ずは何から手を付けましょうか」


「魔道具作りとか定番じゃない? クーちゃん、魔石で何か作ってたよね」


「ええ。拙いものだけどね。けれど古文書に……いえ。なんでもないわ」


「結局読んでるんだね。陛下から絶対出すなって言われた禁書庫の中身。というか私にまで隠してたんだ」


「別に隠してないわ。私が読んでいる本の中身に興味を持たなかったのはお姉ちゃんの方じゃない」


「ならなんで今隠そうとしたのさ」


「それは……ついね」


「やましい気持ちはあるんだね」


「そりゃそうよ」


「なんでもかんでも開き直っていいわけじゃないからね」


「は~い♪」

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